僕らの時間

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僕らの時間 32 (最終話)

『僕らが30歳の夏』 「つくし、あと5分で家出るぞ。」 「ん。パパ、カメラは持った?」 「おう。」 朝から我が家はバタバタと騒々しい。 それもそのはず、今日は長女が通う幼稚舎で初めての運動会なのだ。 「...
僕らの時間

僕らの時間 31

『僕らが26歳の秋』 「つくし、土曜日、家に帰って来れる?」 ママからの突然の誘いに、 「何かあった?」 と聞いてみる。 すると、興奮気味にママが言った。 「進が彼女を連れてくるのよ!」 「えっ?...
僕らの時間

僕らの時間 30

「キスして!」 つくしが言ったその言葉に、もろ手を挙げて反射的に食らいつく俺。 つくしから漏れる甘い吐息と、久々に味わう柔らかい感触に、背中がゾクゾクとしてくる。 後頭部に手を回し、逃げる隙を与えずに、ぴったりと重ねる唇...
僕らの時間

僕らの時間 29

あれだけダラダラと3日以上も熱が下がらなかったのに、 つくしに、『ご飯に行こう』と言われた瞬間からダルさなんて全部吹き飛んだ。 今日は朝からアドレナリンが出まくっている。 つくしの仕事が終わるのを待って、あいつのお気に入...
僕らの時間

僕らの時間 28

風邪で寝込んで3日目。 ようやく熱も37度台に落ち着いてきた。 実習、試験、飲み会と疲れがピークになっていた時に、白石からの誘い。 結局あの日はタクシーを捕まえることもせず、モヤモヤと嫌悪感を抱きながら徒歩で帰宅した。 ...
僕らの時間

僕らの時間 27

3月下旬。 都内のワインレストランで英徳大医学部の『打ち上げ』が開かれていた。 今年の国家試験の合格率は90%以上で、出席している教授たちも満足げ。 6年という学生生活を終えた俺たちも、かなりハイペースで酒が進んでいた。...
僕らの時間

僕らの時間 26

あたしの家の前。 「約束忘れてねーよな?」 そう言った道明寺は、コンクリート塀の方へあたしを連れていき、 「さっきのあいつ、誰だよ。」 と、不機嫌そうに聞いた。 「…………。」 黙るあたしに、さらに ...
僕らの時間

僕らの時間 25

『僕らが24歳の春』 その日、あたしは都内のフレンチレストランに来ていた。 こんな高級なお店に入るのは初めて。 普段なら選ばないヒール靴とレースの付いたワンピース。 そして、目の前にはさっき会ったばかりの6つ歳上の...
僕らの時間

僕らの時間 24

「道明寺くん……少しいいかな?」 カンファレンスルームがある13階の非常階段。 そこで風に当たっていると、同期の笹井が顔を出した。 「さっきはほんとごめん。」 申し訳なさそうに頭を下げるこいつに、俺もようやく冷静さ...
僕らの時間

僕らの時間 23

牧野に別れを告げられてから3週間。 諦められるわけがねぇ。 でも、現実は残酷で、着信を残してもあいつからかかってくることは未だにない。 休みの日も時間を持て余し、気づけば実家でゴロゴロ。 それには淡い期待もある。 ...
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