僕らの時間 24

僕らの時間
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「道明寺くん……少しいいかな?」

カンファレンスルームがある13階の非常階段。

そこで風に当たっていると、同期の笹井が顔を出した。

「さっきはほんとごめん。」

申し訳なさそうに頭を下げるこいつに、俺もようやく冷静さを取り戻して言える。

「おまえは悪くねーよ。」

「でもっ、俺が勝手に白石さんにお願いした訳で、」

「だとしても、そこまでキレられるような事じゃねーだろ。

俺の個人的な感情に巻き込んで悪かったな。」

笹井は医学部に入った時からつるんでいる仲間。

気の弱いところが医者には向いてねーけど、それをカバー出来るだけの優しさを持つ奴だ。

「道明寺くん、もしかして……、彼女さんと何かあった?」

「…………。」

「俺のせいで、誤解させたんじゃないかな。」

 この場所で夜風に当たりながらずっと考えてた。

つくしは白石を見て誤解しただろうか。

だとしたら、なぜそれを俺にぶつけてこなかったのか。

いや、きっと言いたかったはずだ。

でも、俺はつくしとのそういう時間を蔑ろにしていて、あいつの声を聞こうとしていなかった。

「ダセェな……、おまえらに八つ当たりして。」

そう呟くように言うと、

「え?」

と、笹井が聞き返す。

何度も何度も、振り返って別れの理由を考えた。

どこかに誤解があって修復出来ればいいとも思った。

でも、結局いつも同じ結論に達する。

それは、

「どう考えたって……ぜんぶ俺が悪ぃーんだよ。」

3週間ぶりに俺はここに来てる。

まだ部屋の明かりは付いていない。

もちろん合鍵も持っていないから、マンションの前でいつ帰ってくるか分からないあいつを待つだけ。

待つこと45分。

ようやくつくしが現れた。

俺見て、ピタリと足を止め、

「道明寺…」

と呟くこいつの顔を見れば、

招かれざる客であることは一目瞭然だ。

「……元気か?」

「うん。」

「少し話せるか?」

俺のその問いに、間を置いて

「……少しなら。」

とつくしが答えた。

マンションの周囲をゆっくりと並んで歩く。

こいつと一緒に歩くのはいつぶりだろうか。

部屋で会い、ベッドに行き、朝まで寝て、起きた時にはつくしは出勤後、そんな事の繰り返しだった。

改めて考えても、最低な男だな俺は。

「何か話?」

つくしに聞かれ、

「……ああ。」

と答えたあと、

「白石に会ったんだってな。」

と聞きながらつくしに視線を送る。

つくしの表情は変わらない。

ただ、真っ直ぐ前を見つめているだけ。

「その事でおまえにちゃんと話しがしたくて来た。」

すると、つくしが言った。

「付き合うっていう報告?」

「あ?」

「わざわざ言いに来なくてもいいのに。

あたしたち別れたんだし、自由にして。」

つくしの突き放すような言葉が突き刺さる。

「付き合う訳ねーだろ。白石とはそんな仲じゃねーよ。」

「どうだか。」

「誤解すんな、」

「誤解?」

「ああ、あいつの事は女として見たことねぇ。」

「へぇ〜、部屋に入れて、着替えまで持ってこさせてたのに?」

「着替え?あいつがそう言ったのか?」

「…………。違うの?」

お互い顔を見合せて固まる俺たち。

そして、次の瞬間、2人で同時に言った。

「ぶっ殺すっ!」

「信じらんないっ!」

まぁ、こういう間合いはさすが幼なじみ。昔から変わらねぇ。

「着替えなんて頼むはずねーだろっ。

つっーか、そもそもあいつを部屋に入れるわけねーだろっ。」

「入ってたじゃない!この目で見たもん!」

「だからっ、それは…………、」

今日、ここに来たのはそれをつくしに説明したくて来た。

今更だって言われても、どうしても言っておきたいことがあるから。

「つくし、」

あの日、何があったか。

どうして白石が俺の部屋から出てきたのか。

笹井から聞いたことの成り行きをつくしに説明する。

すると、最後にポツリとこいつが言った。

「分かった。

そんなに気にしてないから大丈夫。」

おまえが気にしてなくても、俺はむちゃくちゃ後悔してる。なぜなら……

「おまえとの約束、破ってごめん。」

「え?」

「おまえ以外の女を部屋に入れないって約束したろ?俺の本意じゃなくても、結果的におまえを裏切った事には変わりはねーから。」

すると、つくしが今日初めて俺の目を真っ直ぐに見つめて言った。

「覚えてたの?」

「忘れるわけねーだろ。

おまえが口に出して伝えてくれたお願いだからな。」

一瞬、つくしが切なそうに顔を歪める。

その頬に、その髪に、その肩に触れたいと思うけれど、

今の俺は許されない立場。

だけど、これだけは言わせてくれ。

「つくし、好きだ。」

「道明寺っ、」

「分かってる。言う資格がねえってことは。

でも、一つだけおまえに頼みがある。」

「……頼み?」

「ああ。

半年後、試験が終わったら、もう一度ちゃんと会いたい。幼なじみじゃなく、男として。」

「…………」

「つくし、頼む。」

「……分かった。」

その返事を糧に、半年間死ぬ気でやってやる。

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