あたしの家の前。
「約束忘れてねーよな?」
そう言った道明寺は、コンクリート塀の方へあたしを連れていき、
「さっきのあいつ、誰だよ。」
と、不機嫌そうに聞いた。
「…………。」
黙るあたしに、さらに
「デートって本当か?」
と、問い詰める。
「ほ、ほんとだよ。」
「おまえさぁ、俺との事がはっきりしてねーのに、他の奴とデートとかないだろ普通。」
「はっきりって、あたし達は別れたわけだし別にあたしが誰と付き合おうと関係ないでしょ。」
「マジで付き合ってるのかよ。」
「付き合ってる!」
思わずそう断言してしまってから、罪悪感がわき起こる。
あたしは嘘をついてまで何をやっているのだろう。
「……つくし。」
「……ん?」
「ほんとに、もう無理なのか?俺たち。」
別れてから半年たっても、まだ同じことを繰り返しているあたしたち。
正直、意地を張って、はねつけて、向き合おうとしていないのは分かっている。
でも、また付き合えば同じことを繰り返すかもしれない。
そうなったら、もう「幼なじみ」にさえ戻れないという恐怖があたしを襲ってくる。
何度も何度も考えて、答えが出ない迷路のよう。
結局、あたしの口からは、
「ごめん。」
としか言えなくて、その言葉が出かかった時、
家の玄関から、
「姉ちゃん。」
と、弟が顔を出した。
「進?」
「帰ってたの?遅かったから心配で見に来たら、姉ちゃんの声がしたから。
寒いから早く入りなよ。」
どうやら、進からは道明寺の存在が見えていないようだ。
「ん、分かった。」
道明寺との会話はまだ途中。
でも、『無理なのか?俺たち。』への答えは、今は直ぐに出せそうにない。
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家の中に入ると、外の冷気が嘘のように暖かさに包まれる。
久々の実家の匂いに癒されながら靴を脱いでいると、進があたしを見ながら言った。
「姉ちゃん、あんなこと言って良かったの?」
「え?なに?」
「道明寺さんに、付き合ってる人がいるなんて嘘ついて。」
「進っ、あんたいつから聞いてたの?!」
ついさっき、玄関から顔を出したと思っていた進は、その前からあたしたちの会話を聞いていたのか。
「道明寺さんが姉ちゃんを外で待ってる時から気になって見てた。」
「……ふーん。」
「姉ちゃんさぁ、あんな嘘ついてまで、道明寺さんが本当に嫌いになったの?」
「進には分からないの。」
「分からないよ、俺には2人に何があったかは。」
「なら、口ださない。」
「でも、今俺が二人の会話を止めなければ、また素直じゃないことを言って道明寺さんを傷つけるだろ?」
「…………。」
何も言い返せない。
進の言葉が痛いところをグサッとついてくるから。
「姉ちゃん、道明寺さんから逃げすぎ。」
「逃げてなんか……、」
「プッ……あれだけ真っ直ぐに来られると逃げたくなる気持ちも分かるけどさ、」
「…………。」
「いつだったか、道明寺さんに聞いたことがあるんだ。
姉ちゃんのどこが好きかって。」
「何よそれ、」
「そしたら、道明寺さん、なんの迷いもなく言ったんだ。
他の奴にはいいカッコしいなのに、俺には本音をぶつけてくるところって。」
「…………。」
「姉ちゃん、俺は今のところ道明寺さんの味方だよ。」
「裏切り者。」
「プッ……早く、本音でぶつかって来なよ。」
進があたしにそう言った時、リビングから、
「つくしー、帰ってきたの?」
とママの声がした。
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