僕らの時間 28

僕らの時間
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風邪で寝込んで3日目。

ようやく熱も37度台に落ち着いてきた。

実習、試験、飲み会と疲れがピークになっていた時に、白石からの誘い。

結局あの日はタクシーを捕まえることもせず、モヤモヤと嫌悪感を抱きながら徒歩で帰宅した。

その結果、高熱で倒れるという情けないことに。

白石からは次の日、

『昨夜はごめんね。

酔っていて話した事覚えてないの。』

と、メールが来たが、未だに無視している。

いや、多分この先、あいつからのメールに返信することは二度とないだろう。

今日は朝一で

『坊ちゃん、後で様子を見に行きますね。』

と、タマから連絡が来た。

3日外に出ていないからさすがに飲み物も底をついている。

老婆をこき使うのはわりぃけど、買ってきて欲しいものをリストにして送っておいた。

まだだるい身体を起こしてシャワーを浴び、ソファーでウトウトしていると、玄関チャイムが鳴った。

タマなら自分で入ってくるだろう…と思ったが、なかなか鍵が開く音がしない。

さらに2度目のチャイムが鳴り、俺は渋々起き上がりインターフォンの画面を覗いた。

そして、そこで固まった。

なぜなら、予想もしていない人物がそこに立っていたから。

「…つくし?」

「道明寺、重いから早く開けてっ。」

「お、おう。」

慌てて玄関に向かいドアを開けると、両手に大きな荷物を抱えたつくしが勢いよく玄関に入ってきた。

「ど、どした?」

「タマさんから荷物預かってきたの。」

「あ?おまえが?」

「なに?あたしじゃダメだった?」

「んなわけねーだろ。」

訳が分からねーけどそう即答する俺に、つくしはクスッと笑い

「入っていい?」

と、聞く。

「ああ。」

つくしの手から荷物を受け取りリビングへ行くと、『やべぇ。』と心の中でつぶやき立ち止まる。

後からきたつくしもリビングの光景を見て、唖然としながら「汚っ。」と言った。

「いや、ごめんっ、今片付けるっ。」

「どうしたのこれ。」

「あー、まぁ、掃除をサボってたっつーか、具合悪くて出来なかったっつーか………。

おまえが来るって分かってたら、綺麗にしておいたのによ。」

リビングのテーブルの上は、医学書が積み重なり、床にはペットボトルが数本転がり、ソファには脱いだ服が何重にも重なっている。

「今片付けるから、そこに座ってろ。」

俺はつくしに向かってキッチンのカウンター席を指さすと、

「もぉー、しょうがないんだから。」

と、睨みながら言ったつくしは、

俺の手を引きソファに無理矢理座らせる。

そして、言った。

「病人はここで静かにしてて。」

それから30分。

つくしはテキパキと部屋を片付け、洗濯を回し、持ってきたものを冷蔵庫へ入れ、軽い食事を作ってくれた。

それをただただソファの上から見てた俺は、

これは夢なのか?と何度も自分のほっぺをつねってみたりする。

夢なら覚めないでくれ。

俺の周りでチョコチョコと動くこいつをずっと見ていたい。

「道明寺、ご飯食べる?」

「…………。」

「道明寺っ?」

「あ?あっ、食う食う。」

我に返った俺は、慌ててキッキンへと行く。

「タマさんが作ってくれたおかず。

消化にいいものばかりみたいよ。」

「おう。」

「これ食べてゆっくり寝たら、薬なんか飲まなくても明日には元気になってるはず。」

ご飯をよそいながらそう断言するつくしに、俺は言ってやる。

「医者を目の前にしてよく言うぜ。」

「あっ、あはは。

そうだった。あんたお医者さんだったんだ。」

可笑しそうに笑うつくし。

テーブルに頬杖しながらその笑顔をじっと見つめると、

「なに?」

と、不思議そうに見つめ返してくる。

「おまえの笑った顔、久しぶりに見た。」

「…………。」

「そんなにおまえが優しいのは、俺が病人だからか?」

「プッ……」

「だったら、一生寝込んでやってもいーぞ。」

せっかくこいつが久しぶりにそばに居てくれるというのに、俺はまたこうして溢れ出る想いをぶつけてしまう。

案の定、つくしは俺から目を逸らし、

「そろそろ帰ろうかな。」

と、ゆっくり立ち上がる。

「洗濯、乾燥が終わったら取り出してね。」

「…ああ。」

「氷は冷凍庫の左側に入ってるから。」

「おう。」

「週末にタマさんが容器を取りに来るって言ってた。」

「ん。」

「……じゃあ、帰るね。」

「…………。」

返事をしない俺。

クスッと笑い玄関へ向かうつくし。

仕方なく、俺はそんなこいつを追いかけて玄関へ行く。

もっと一緒にいたい。

そう思うけれど、また拒否られるのが山だろう。

靴を履くつくしの背中に、

「サンキューな。」

とだけ伝える。

すると、振り向いたつくしが言った。

「道明寺、今度ご飯奢って。」

「…あ?」

「今日の掃除のお礼に、ご飯に連れてって。」

つくしからの誘い。

「マジか?」

「こんな事、嘘つく訳ないでしょ。」

それなら、もちろん断る理由はねえ。

「明後日。」

「え?」

「明後日に行くぞ。」

食い気味で答える俺に、

プッ……と吹き出したあと、つくしは

「風邪、早く治しなさいよ。」

と言って俺の部屋を出ていった。

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