眠れない夜

眠れない夜

眠れない夜 11

邸のジムで汗を流し、シャワーを出ると22時を過ぎていた。 自室に戻るため廊下を歩いていると、どこからか楽しげな声が聞こえてくる。 その声の方へ歩いていくと、そこは小さなキッチンが備え付けてある第2ダイニング。 俺たちがい...
眠れない夜

眠れない夜 10

最近、道明寺の様子が変だ。 どう変なのか、そう聞かれれば上手く言えないけれど、何となく態度が柔らかくなったような気がする。 つい先日は朝の車の中で、 「おまえの両親はどこに住んでる?」 と急に聞いてくるから、 ...
眠れない夜

眠れない夜 9

あの女が道明寺邸で暮らすようになって1ヶ月が過ぎた。 ババァや姉ちゃんとはかなり打ち解けているし、タマをはじめ使用人や運転手たちとも距離が近い。 俺だけがあの女を受け入れていないようでなぜだか居心地が悪い。 でも、受け入...
眠れない夜

眠れない夜 8

それから数日後。 バイトが終わりバスに乗り道明寺邸へと帰る。 15分ほどバスに揺られていると、瞼が重くなってきたが、帰ってからもまだ宿題がある。 頑張らなきゃ!と自分に言い聞かせながらバスを降り邸まで歩く。 そして...
眠れない夜

眠れない夜 7

道明寺邸に帰宅したのは19時を回っていた。 エントランスに入ると、メイド頭のタマさんが出迎えてくれる。 「お帰りなさいませ。遅かったですね。」 「すみません、ちょっと用事があって。」 「すぐにお食事をご用意しますの...
眠れない夜

眠れない夜 6

大学内にある図書館の中庭にあたしだけの憩いの場所がある。 そこは木々に囲まれた小さなスペースで古いベンチが一つだけポツンと置かれている。 他のベンチは鉄製で何度も色を塗りかけられて綺麗になっているのに、まるでそこにあるベンチだ...
眠れない夜

眠れない夜 5

次の日の朝、いつも通りの時間にエントランスに行くと女が車の前で待っていた。 「おはようございます。」 と小さく挨拶されたのを無視して車に乗り込むと、女も遅れて反対側から乗り込んでくる。 これが毎日続くのかと思うとうんざり...
眠れない夜

眠れない夜 4

「何もそこまでする必要ねーだろっ。」 邸にある書斎で、俺はババァに向かってそう怒鳴っていた。 「会長がそう決めたんだから仕方ないでしょ。」 「人助けにも程があるだろ。 たかが道で倒れたのを助けてもらった位で、ここに...
眠れない夜

眠れない夜 3

それから1週間後、牧野家の全員があるホテルの一室に集まっていた。 そのホテルの名は「楓ホテル」。 一般庶民が立ち入ることなど出来ないほどの高級ホテルだ。 そこのスイートルームに招かれたあたし達は、心臓が飛び出るほど緊張し...
眠れない夜

眠れない夜 2

バイトの面接の日から3週間がたった。 数日前に電話で 「この度はご縁がなく……」と不採用の連絡を受け取った。 それと同時にあたしの中で全てが吹っ切れた。 大学を中退しよう。 パパの会社が危ないと聞いたのは半年...
タイトルとURLをコピーしました