眠れない夜

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眠れない夜 41(最終話)

…………半年後………… 数日前に町長宛てに一通の書類が届いた。それはあの視察団からの報告書だ。 視察団が帰って以降、なんの音沙汰もなく季節は冬を迎えようとしている。役場の職員や町民の間では、ホテル建設の話は白紙になったのだろう...
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眠れない夜 40

テントの中。 並んで座り、ポツポツと鳴り響く雨音を聞く。 「帰れそうにないね。」 牧野がそう呟くから、 「俺はそのつもりで来たけど、おまえは大丈夫なのかよ。」 と、聞く。 「明日は仕事休みだからへーき。...
眠れない夜

眠れない夜 39

視察団の訪町も残すところあと2日になった。 今日は特に予定も入っていなく、それぞれが観光を楽しむことになっている……と昨夜、道明寺から電話で聞いた。 正式に付き合うことになったあたしたち。 なんだか夢のようだけど、毎日か...
眠れない夜

眠れない夜 38

家に着くなり、後悔する。 道明寺が来るなんて思ってもいなかったから、脱ぎ捨てた服などがリビングに散乱している。 「ちょっ、ちょっと3分だけここで待ってて!」 そう言って、道明寺を玄関で待たせて、慌てて片付けた後、 ...
眠れない夜

眠れない夜 37

視察団が来たという噂は、次の日にはあっという間に町中に広がっていた。 昼過ぎに役場に顔を出したげんさんが言うには、町に古くからあるホテルと民宿のオーナーたちが猛反発をしていて、抗議活動をすると意気込んでいるらしい。 彼らの孫の...
眠れない夜

眠れない夜 36

一行が視察に出かけてから、役場の中は騒然となった。 「牧野さんっ、さっきのイケメンと知り合いなの?」 「……えーと、」 「彼は、どこの誰?」 「どこのって……、」 あたしのデスク周りは人だかり。 「高校...
眠れない夜

眠れない夜 35

「牧野さーん、今月の広報に載せる写真、これでいい?」 「はい、それでお願いします!それと、お祭りの日程も目立つところに大きく入れたいんですけど。」 「了解〜!!」 ここは北海道にある人口5万人弱の小さな町。 大自然...
眠れない夜

眠れない夜 34

牧野と想いが通じたというのに、年が明けてもなかなか距離が縮まらない。 それに追い打ちをかけるように、卒業式を前にして俺はNY支社での研修が始まり、牧野は就職準備のため実家に帰ることが決まった。 牧野がこの邸で暮らし始めて10ヶ...
眠れない夜

眠れない夜 33

「で?司とは最近どーなの?」 大学内にあるベンチでいつものように講義の合間の休憩を取っていると、横のベンチで昼寝をしていると思っていた類が急にそんなことを言い出した。 「コホッ!な、なに、急にっ。」 「んー、司の機嫌があ...
眠れない夜

眠れない夜 32

翌日、いつもより30分早くエントランスへ下りて行くと、運転手の焦った声が聞こえてくる。 「お待ちくださいっ、もう少しで司様もいらっしゃいますので!」 それに、 「大丈夫です。ちょっと寄るところがあるので今日はバスで行きま...
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