不埒な彼氏

不埒な彼氏

不埒な彼氏 13

半年前、あたしはこの人から「俺たちきちんと付き合おうぜ。」そう言われ、「うん。」と、はにかんで返事をしたのを覚えてる。それなのに、今日あたしは、同じ場所で同じ人に別れを告げている。 この半年間、あたしはこのバカ男にほとほと疲れた。『...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 12

図書館から借りていた本を返し忘れていたあたしは、久しぶりに英徳に来ていた。 1ヶ月近く来ていないだけなのに、もう知らない世界のようなキャンパス。いつも座ってた図書館の椅子をそっと触り、「お世話になりました。」と、呟き何気なく外を見る...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 11

牧野の編入の話を聞いたときは、久しぶりに頭に血が上った。 「やめろ。」迷わずこいつにそう言った。 でも、キラキラした目で新しい大学のことを話すこいつを見て、怒りは消えた。この女はいつもそうだ。 勉強に一生懸命で、夢にまっ...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 10

いつものようにカフェテリアに向かおうと校内を歩いていると、図書館から出てきた奴らがヒソヒソと話している。 「あれは絶対、喧嘩してたよね。道明寺さん、なんかすごい怒ってたけど……編入がどうだの言ってたけど、なんかあったのかな……」 ...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 9

「今どこにいる。」 「大学の図書館にいるけど……」 その先を聞き終わる前に俺は図書館に向かっていた。 図書館のいつもの場所で勉強に励む勤勉女の姿。俺は側まで近付くと、無言で向かい側の席に座る。俺の気配に気付いたのか、顔を...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 8

年末年始は毎年のようにNYで過ごし、ババァに連れ回されて、この時期だけは大人しく挨拶回りに明け暮れる。そうすることで、後からの嫌味が格段に減るから、ひたすら我慢することにしている。 今日でNYに来て2週間。いつものように、日本時間の...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 7

結局、クリスマスも予定通りバイトに明け暮れた。そして、あっという間に今年も残すところわずか。 今日はあたしの誕生日。例外なく、夜の10時を回った今も厨房でクロワッサンの仕込みをしている。 「牧野さん、時間だよ。」 「はー...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 6

一ヶ月ぶりに優紀と待ち合わせて買い物に来た。どこもクリスマス一色。 久しぶりに会う優紀は幸せモード全開で、見てるあたしまで嬉しくなるほど。 買い物が一段落してカフェでお茶をしていると、優紀の携帯に短い着信音。 「なになに...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 5

お姉さんと別れて、バイト先まで10分の距離を道明寺と並んで歩く。 今までも何度もこうして並んで歩いたけれど、今日がたぶん一番嬉しくて、そして、一番切ないかもしれない。 「おまえさ、最近バイトの量増やしてねぇ?」 「え?…...
不埒な彼氏

不埒な彼氏 4

「つくしちゃ~ん。」 「お姉さんっ。」 電話の向こうの声はいつものようにハイテンションな道明寺のお姉さん。 「明日、時間あるかしら?」 「あたし、夜はバイトなんですけど、その前なら。」 「じゃあ、夕方待ち合わ...
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