限りなくゼロ

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限りなくゼロ

限りなくゼロ 12

「司、何してるの?」 静寂を破って聞こえたものは冷ややかな類の声だった。 「牧野になんか用?」 「…………類、話がある。」 もう逃げられない。 「わかった。むこうで聞くよ。」 そう言って類は自習室の外の...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 11

俺らしくなく、悶々とした日々が過ぎていく。考えれば考えるほど臆病になっていく。 記憶が戻ったと牧野に伝えたら、あいつはどんな顔をするだろう。喜ぶか、いや困った顔をされるのが一番きつい。そんなことを考えると、一歩が踏み出せない。 ...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 10のおまけ

「西門さん、なんか変じゃありません?」 「……司だろ。」 急遽決行された温泉旅行。私と西門さんがいなかった間に突然決まった話だったけれど、滋さんが言うには、最終的に行こうと言い出したのは道明寺さんだったそう。 それなのに...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 10

結局、俺は弱虫だ。温泉でのあの一件依頼、大学にもほとんど顔を出さずに邸にこもっていた。 あの日も、どうしてもあのまま奴らと夕食を取る気分にはなれなくて、あきらにメールだけを残して温泉宿をあとにした俺。 どんなに平静を装っても、...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 9

俺には大切な人がいる。恋だの愛だの、そんな単純な言葉では言い表すことが出来ないほど、そう、彼女が言うように、『体の一部』という表現が一番適切かもしれないと思うほど、俺の中での存在感が大きい彼女。「花沢類」そう呼ぶ牧野の声は自然と俺を癒す魔...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 8

滋の突拍子もない思いつきと、類の天然発言で実現した温泉旅行。 あの場にいなかった桜子と総二郎も合流しF4とF3の御一行は都内から車で一時間の隠れ屋的温泉地に到着した。 行きは車を出すと言った総二郎と類と俺の三人の車に別れてそれ...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 7

記憶というものは残酷だ。 この1年半、どんなに思い出そうとしても思い出せなかったことが一気によみがえり喜んだのも束の間、この1年半で自分がしてきたことも鮮明に記憶にあり、消そうと思っても消すことが出来ない。 牧野のことを綺麗に...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 6

パーティーのあと、久しぶりに類と飲みにきた。「司、このあと時間ある?」珍しく類から誘ってきたから、F4で集まるのかと思ったが、メイプルのバーには類の姿だけだった。 「他の奴らは?」 「帰ったよ。今日は司と二人で話したかったから...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 5

『バイバイ道明寺』 あいつが俺の前から去って数ヶ月。俺らはもうすぐ二十歳を迎える。 今日はあずさの二十歳のバースデーパティーが都内のホテルを貸しきって行われていた。国内最王手の建設会社の一人娘だけあって、力の入れようがそこらの...
限りなくゼロ

限りなくゼロ 4

類の言った通りかもしれねぇ。たぶん、牧野はもう俺に会わねぇって決めたんだろう。この1ヶ月、大学でも邸でもあいつの姿を見かけることはなかった。 この1年、牧野の存在自体が鬱陶しくてたまらなかった。どんなに俺の前から消えろと思っ...
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