チーム長の策略 15

チーム長の策略
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社内恋愛というのは結構大変だ。

仕事中は周囲の目を気にしていつも以上によそよそしくなるし、仕事後のデートは誰かに見られていないかと常にソワソワする。

「俺はいつ誰に見られても構わねーけど?隠すつもりはねーし。」

と、チーム長はあっさり言うけれど、

もちろんダメに決まってるでしょ!

チーム長とあたしが付き合ってるなんて知られたら、大問題だ。

今はまだ営業部のチーム長という肩書きだけど、いずれは道明寺ホールディングスの社長にまでなる人。

そんな人に手を出したと思われたらあたしはこの先会社で生きていけないかも。

そんなことを考えながら、自分のデスクに座り仕事中のチーム長をじーっと見つめていると、2課の最年長の杉山さんが、

「牧野さん?」

と、声をかけてきた。

慌ててチーム長から目を離し、

「はいっ」

と返事をすると、

クスッと小さく笑いながら、

「チーム長がどうかした?」

と聞かれる。

どうやら、あたしがチーム長を凝視していたのがバレていたようだ。

「いえっ、別に。」

自分のパソコンに視線を移しながら否定すると、杉山さんが小声で言う。

「チーム長、このところだいぶ疲れてるみたいだね。

来週からのNY出張、かなりスケジュールが詰め込まれてて、その準備で連日残業してるから。」

確かに、このところ忙しいと言って遅くまで仕事をしているようで、退社後の2人でのデートもご無沙汰だ。

「今日は昼も食べてないはずだよ。」

「えっ、お昼ご飯食べてないんですかっ?」

「うん。昼前に社長に呼び出されて、戻ってきたのが1時半すぎ。それからずっとあの席にいるから休憩もナシなんじゃないかな。

出張前に倒れなきゃいいけどさ。」

杉山さんが心配そうに見つめる先には、首を左右に倒しストレッチをしたあと、疲れたようにパソコンに向き直るチーム長の姿。

それから1時間後。

チーム長が席を立つのと同時に、あたしも周囲に気づかれないようにその後を追った。

「チーム長っ。」

2課のフロアを出たところで、小声で呼ぶと、

振り向いて、

「ん?」

と、驚いた顔をする。

「どこに行くんですか?」

「資料室。」

「あたしも行きます。」

同僚たちに怪しまれないように、できるだけいつも通りの歩く速度でエレベーターに乗り込むと、扉が閉まり動き出すのと同時に、

「どうした?」

と、チーム長が聞いてくる。

「少し2人になりたくて。」

「フッ…大胆だな、おまえから誘ってくるなんて。」

「ち、ちがいますっ!

話したいことがあって。」

「話し?」

そこまで言った時、階下で扉が開き数人の職員が乗り込んできた。

自然とエレベーターの1番奥まで押し流されるあたしたち。

そしてまたエレベーターが動き出す。

すると、あたしの手に温かいものが触れた。

見て確認しなくても分かる。あたしの手がチーム長の大きな手に包まれた。

隣に立つチーム長を見ると、チーム長もあたしの方に視線を移していたずらっ子のように笑う。

その顔にドキンと胸が鳴る。

上司としてのクールな姿もいいけれど、2人の時にしか見せないこういう表情も堪らなく色気があり心臓が痛い。

資料室がある階にエレベーターが止まると、あたしは火照る顔を隠しながら降り、チーム長よりも先に廊下を歩いていく。

数メートル歩いたところで、ふいに手が引っ張られ資料室の手前の会議室に連れ込まれた。

「チーム長っ」

「シッ!」

人差し指を口の前に当てて、廊下の気配を確認するチーム長。

この時間にこの階の会議室を使う人はほとんど居ない。

誰も来ないのを確認したあとチーム長が言った。

「話したいことって?」

「あーそうだった。

チーム長、お昼ご飯食べました?」

「あ?そんなことかよ。」

明らかにガッカリした様子。

「なんか、疲れてません?

出張の準備で残業続きだって杉山さんから聞きました。」

「ああ。やることがめちゃくちゃ貯まってる。

疲れてるから、癒してくれるのかよ。」

そう言って、あたしの腰に手を回し引き寄せる。

「ちょっ、離してくださいっ」

「少しならいーじゃん。」

「ダメですーって」

なんとかチーム長の腕から抜け出したあたしは、チーム長を見上げて言った。

「今日も遅いですか?」

「んー、たぶん。」

「遅くなってもいーです。

あたし、なにか作るのでうちに来ませんか?」

疲れてるチーム長に栄養のあるものをなにか食べさせたい。

そう思って言ったあたしに、チーム長は驚いた顔をしたあと、

「マジで?」

と呟く。

「うん。せめて夜だけでもちゃんとしたもの食べて欲しいから。」

「なら、……俺の部屋で作って。」

「チーム長の部屋…ですか?」

「ああ。今日は仕事は家に持ち帰ってする。

だから、俺のマンションに来て飯作って。」

あたしの部屋なら自分のテリトリーだからそんなに緊張もしないけれど、チーム長の部屋に行くとなると、それなりに考えることもある。

そういう雰囲気になったらどうしよう。

着替えもないし、化粧品も持ってきていない。

もうこれ以上断れないけれど、明日の仕事のことを考えると……。

あたしの悪い癖だ。

いつもこうやってグルグル余計なことを考えて先に進めない。

と、その時、廊下から人の話し声が聞こえてきた。

もうこれ以上会議室にいるのは危ない。

「牧野、どーする?」

小声でチーム長が聞いてくる。

それにあたしは、勇気をだして

「行きます。」

と、答えた。

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