牧野に何を食べたいか聞かれて、頭に思い浮かんだのは、小さな頃に食べていたタマの和食料理。
「和食がいい。」
そう答えると、
「良かった。あたし和食しか作れないから。」
とはにかむ姿がマジでツボる。
この1年間、こいつの上司として間近で見てきた。
仕事に対しては超がつくほどマジメ。『牧野さんに精査してもらえばどんな書類も間違いない。』とチームのみんなが言うほど、完璧主義。
残業も、たまの休日出勤も、嫌な顔ひとつせず男並みに働くこいつは、男の影どころか色恋沙汰の噂も一切無し。
密かに想いを寄せている俺にとっては嬉しい事だけど、時々はこうして照れたようにはにかんだり、女らしいスカートや髪型を見てみたいともずっと思ってきた。
だから、いま目の前で俺のためだけに食材を選び、買い物をし、笑いかけてくる牧野に全力で想いが溢れそうになる。
俺の部屋に女が来るのは、人生初めてのこと。
牧野と2人きりになるのも車の中以外ではこれが初めてだ。
色々我慢してきたから、一度触れたら止まれないだろう。
きっと、牧野も子供じゃねーんだからそれは分かってるはず。
帰宅途中で食材を買い、マンションの上層階にある部屋に入ると、
「凄っ!これで一人暮らしですか?」
と、興奮した声で聞いてくる。
「ほとんど寝るだけの空間。
キッチンも使ってねーから何があるかわかねーけど、適当に使って。」
そう言って奥のキッチンへ牧野を連れていく。
「急いで作るので、チーム長は仕事していてください。」
「おう、サンキュー。
そこにいるから何かあったら呼んで。」
キッチンから見えるリビングスペース。
そこのソファに持たれながらパソコンを開くと、貯まったメールに目を通していく。
2週間の出張の準備はほぼ整った。
あとは、日本に残していく仕事をチーム内のメンバーに引き継いでいくだけ。
集中しながら仕事をしていると、
「チーム長?」
と、牧野に呼ばれハッとして顔を上げる。
「ご飯できたから、少し休憩しませんか?」
「おう。」
壁の時計を見ると、1時間近くたっていたようだ。
パソコンを閉じサイドテーブルにのせると、そのまま手を伸ばし牧野の腕を掴む。
そして、ソファーの俺の横に座らせて、身体を引き寄せる。
仕事のあとのご褒美タイム。
軽くチュッと唇を重ねると、照れたように下を向く。
足りない。まだまだ足りなくて、牧野の顎を持ち上げて上を向かせさらに口付ける。
クチュ……クチュ……。
いやらしい音が室内に響き、俺の理性を崩していく。
「チーム長、ごはん。」
「後で。」
「冷めちゃいますっ」
「さっきにこっちを…喰いたい。」
ソファに押し倒し、これでもかと言うほど深くキスで犯していく。
ようやく手に入れた大事な存在。
大切にしたいのに、めちゃくちゃに壊したい。
そんな男の欲望がメラメラと全身に行き渡り、加速する。
ブラウスの上から胸に手を乗せると、予想以上の膨らみの大きさに下半身が熱くなる。
直に触りたい。そう思い服の中に手を入れようとした時、
「待って…、」
と、焦ったように牧野が言う。
「ダメ?」
「ダ、ダメじゃないけどっ……ご飯は?先に食べましょ!せっかく作ったのに冷めたら美味しくないし。それにっ、……明日仕事でしょ?だからあんまり遅くなると支障をきたすっていうか、」
そこまで早口で捲し立てるように言ったあと、牧野は下を向き、俺から顔を隠すようにして言った。
「はぁー、めんどくさい女でごめんなさい。」
「あ?」
「もったいぶってるとかじゃないの。全然そんなつもりじゃなくて。ただ、……こういうの初めてで。」
「…………」
牧野の言葉を頭の中で噛み砕き整理してみる。
そして、ストレートにぶつける。
「初めてって?」
「…………。」
「セッ×ス?」
「…………。」
牧野の反応で、当たりだということは分かった。
けど、さらに疑問が沸きあがる。
「えっ?おまえさ、あの詐欺師とは?
あのヤローとはしてねーのかよ。」
「水川さん?うん、してない。」
「はぁー?!ヤラしてもいねー男に、500万も渡そうとしてたのかよおまえはっ!」
「えっ?だって、そんなの関係ないし。逆に身体目当てじゃない所に安心したっていうか、」
「いやいやいやいや、マジでねーから。」
「なんで?男の人にはわかんないのっ、」
「いやいやいやいや、全然っわかんねぇ。」
「…………。」
きつい言い方かもしんねーけど、俺がどんだけモヤモヤしてきたか、こいつに教えてやんねーと収まんねぇ。
「うわーもー、どうでもいーけどよ、マジで……良かった。」
「……え?」
「男に対して全く入る隙を与えねぇおまえが、あっさりあの詐欺師には心を許したから、どんだけ身体でドロドロにイカされたのかと思ってた。」
「はぁ?」
「金を貢ぐほど身体の相性が良かったのかと思って、マジで闘争心燃えまくった。」
「何言ってんの。」
顔を真っ赤にして抗議してくる牧野。
そんなこいつに言ってやる。
「牧野。もっと、もったいぶってもいーぞ。
俺はそういうおまえが好きだから。」
「……え?」
「牧野らしくていーじゃん。
簡単になびかないっつーか、納得しねーと動かないっつーか、俺はそこに惚れてるから。
だから、おまえが待てって言うなら、警察犬なみにいつまでも待っててやるよ。」
ありったけの気持ちでそう伝えると、牧野が小さな声で言った。
「心の準備は出来てる。
だから、いつでも、……どーぞ。」
照れたようにそう言うこいつの頭を撫でて、
「とりあえず、飯食おうぜ。」
と俺は言った。
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