軽い気持ちで先輩に付いてきてしまったけれど、いざお店に着くと相手が5人こちらも5人のれっきとした合コンだ。
早くも逃げ出したい気持ちでいっぱいだけど、うちの先輩と経理部の前田さんが楽しそうに話しているのを見ると、なかなか帰ると言い出しにくい。
1時間近くたった頃、あたしの携帯が短く鳴った。
外勤で出ていたチーム長からだ。
「今、社に戻った。
もう家か?」
そのメールに、
「急遽、飲み会に誘われて飲んでいます。」
と返事する。
すると、速攻
「メンバーは?」
と、聞いてくる。
ヤバい。この状況を正直に言うべきか。
いや、別に経理部の人と飲んでいるだけなんだから、やましいことはひとつもない。
ただ、偶然女子と男子の比率が同じになっただけ。
そう自分に言い聞かせて、
「うちの課の女子社員と、その他少し。」
なんて、曖昧な返事を送ってみる。
するとその5分後、チーム長から今度は着信だ。
「……もしもし。」
席をたちながら慌てて出ると、
「どこにいる?」
と聞かれる。
「駅前のお店ですけど、」
そう答えるあたしに、チーム長がサラッと言った。
「その合コン、終わったらすぐに連絡しろ。」
「えっ?!」
「付き合って2日目で合コンに行くとはいい度胸してんな。」
「……え、どうしてっ、イヤちがっ、」
慌てて弁解してももう遅い。
プツリと切れた電話を見つめながら、項垂れる。
なにやってんのよあたし。
恋愛もまともに出来ないのに、付き合って早々浮気疑惑だなんて。
その後席に戻ったけれど、みんなの話なんてちっとも耳に入るはずもない。
二次会に……という誘いも断って、先輩たちと別れたあとすぐにチーム長へ電話をした。
「もしもし、牧野です。」
「おせぇ。」
「すみません。
今、解散したんで、どこへでも言われた所に伺います!」
知らない人が聞けば、まるで取引先との会話だと思われても仕方がない。
すると、
「正面の交差点。」
と、チーム長が言う。
「え?」
言われるまま交差点に視線を移すと、そこにはチーム長の車が止まっている。
「今行きます!」
あたしはそう言うと、その車目指してもうダッシュで走った。
息を切らしながら助手席のドアを開けると、チーム長が渋い顔であたしを見ながら、
「バカっ、そんなに急いで走ってくんな。」
と、言いながらあたしを車の中へ引き入れる。
すると、それと同時に後部からプップーとクラクションの音。
この辺は車通りが激しい所だから、交差点付近の駐車は迷惑になる。
「シートベルトしろ。」
そうあたしに言ったあと、チーム長は車を走らせた。
無言のまま車を走らせること10分、ようやく静かな通りに出て、その一角にあるお店が立ち並ぶ駐車場に車を停める。
そしてあたしの方に向き直り、
「経理部のやつとは何もねーよな?」
と、怒ったように聞いてくる。
「も、もちろん、ただ食事しただけだし、って言うか、どうして経理部の人と飲んでるって分かったんですか?」
「うちの課の奴らに聞いたら、みんな知ってたぞ。今日おまえらが経理部と合コンしてるって。」
「えっ、うそっ?!」
「退勤前からソワソワして、化粧直してたって。」
「そんな事してませんっ!」
思いっきり全否定したけれど、
合コンだということを隠そうとしたのは紛れもない事実だ。
「……ごめんなさい。」
観念して謝ると、さっきまでの怒った表情から優しい顔に変わり、
「誘われて断れなかったんだろ。
それもうちの課のやつらから聞いた。」
と、チーム長が言う。
良かった。
怒ってないんだ。
そう思って喜んだのもつかの間、
「牧野、部屋行っていい?」
と、突然の急展開。
「えっ、え、今からですか?」
「2人きりになりたい、今すぐ。」
「今っ!今2人きりですけど?」
「部屋じゃなきゃできねー事あるだろ。」
当たり前のように言ってくるこの人は、やっぱり怒ってるのだろうか。
「チーム長、怒ってます?」
「当たり前だろ。付き合って2日で浮気されてんだぞこっちは。」
「浮気って……そんなつもりは」
「罪滅ぼししてくんねーと、暴走するぞ。」
言ってることは滅茶苦茶だけど、拗ねているチーム長は結構可愛い。
こんなあたしにヤキモチを焼いてくれるんだ。
そう思うと、少しくらいサービスをしてもいいかななんて思う。
「チーム長……、」
「ん?」
「部屋は今度にして欲しいです。
けど……、」
「けど?」
「ここも一応、2人きりですよ。」
駐車場には人影はほとんどない。
会社からも遠く離れているし、誰かに見られる心配もない。
すると、チーム長があたしの腕を掴み自分の方へ引き寄せる。
そして、準備をする間もなく、重なる唇。
熱い。
重なる唇も、触れられている肩も、胸も背中も、
全部が熱く火照る。
昨日よりも激しいキス。
当たり前のように侵入してくる舌。
そして、キスの合間にチーム長が呟いた。
「焦んないって決めたのに、全然っ我慢出来る気がしねぇ。」
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