道明寺に捕らえられたままキャンパスを出て、数百メートル行ったところでようやく腕から解放された。
「もうっ、恥ずかしいから止めてよっ!
みんな見てたじゃないっ。」
と道明寺を睨みつけながら抗議すると、
この人はしれっと
「彼女を見せつけるいい機会になったな。」
と言って笑ってる。
そうか、道明寺はわざとやったんだ。
あの場に看護科の女子生徒がいるのを知っていて、わざとスキンシップ多めで見せつけたのか。
彼女としては喜ぶべきなのかもしれないけれど、そういうことに慣れていないあたしは、ただジタバタするだけで甘い雰囲気の欠片もない。
スタスタと先に歩く道明寺の背中に向かって、
「どこ行くの?」
と聞くと、
「キャンパスまで逢いに来たのにノープランか?」
と振り返ってあたしに返してくる。
昨夜のことを謝るために会いに来た。
だからプランも何も無い。
まずはやる事をやってスッキリしたい。
「ねぇ、まだ昨日のこと怒ってる?」
「ああ、すげぇ怒ってる。」
「ご…めんね。」
「感情がこもってねえ。」
「ごめんって!ほんとに反省してる。」
「どれだけ反省してるかゆっくり聞いてやるよ。」
そう言ってあたしを見たあと、
「腹減った。飯食って帰ろうぜ。」
と言って再びスタスタと歩き出した。
………………
早めの夕食を2人で食べて、本屋で医学の参考書を探して、欲しかった文房具を買って、気付けばどっぷりと日が暮れて辺りは真っ暗になっていた。
家までの帰り道、並んで歩く道明寺にあたしは言った。
「ねぇ、昨日のこと、何も聞かないの?」
『反省してるかどうかゆっくり聞いてやる』と言っていたくせに、食事中もその話題に何も触れてこなかった。
このまま家に帰るのはモヤモヤが残る。
だから、思い切ってあたしから言った。
「昨日、送ってもらったのはあたしだけじゃなくて他の人たちも一緒だったの。でも、初めて会った人の車に乗ったのはあたしが軽率だった。ごめんね。」
すると、道明寺があたしの頭に手を置きながら、
「キャンパスでおまえの姿見た瞬間に、怒りも全部吹っ飛んだ。」
と言う。
「なにそれ。」
「だって、おまえから俺に会いに来るなんて珍しいじゃん。」
「…そう?」
「いつも追いかけてるのは俺だろ?」
からかうようにあたしにそう言う道明寺。
あの天下の道明寺司にこんなセリフを言わせてしまうあたしは……。
『大事にしてる彼女がいる』
食事会で堂々とみんなの前で言ってくれた道明寺に対して、あたしは相変わらず本人にでさえ素直に想いを伝えていない。
道明寺の優しさに甘えてばかりだと、いつかきっと後悔することになるだろう。
「道明寺…」
「ん?」
「ごめんね、……あたし、全然ダメみたい。」
「…………」
「道明寺の隣にいると、昔みたいに平気で居られなくて、」
その先をどう伝えたらいいか、口ごもってしまう。
すると、焦ったように道明寺が、
「おまえっ、まだ俺たち付き合ったばっかだろ?俺は全然待つから、そんな風に簡単に結論出すなよ。」
と、言う。
「結論?」
「別れるとかまだ言うな。」
「……別れる?」
「……ちげーのか?」
数秒間見つめ合うあたし達。
そして、その後あたしは思いっきり大声で叫んでた。
「違うっ、違う!
そういう事じゃなくてっ」
「あ?」
「だからっ、あたしが言いたいのは、
あたし、あんたといるとドキドキして全然ダメなのっ。前みたいに普通に接すれないし、意識しすぎて挙動不審になるし、好きって素直に伝えられなくて、」
「はぁー、おまえさぁ、」
「ん?なになに?」
急にうずくまって動かなくなった道明寺に困惑する。
「紛らわしい言い方すんじゃねーよバカ。」
「なにそれっ、」
「全然ダメとか、平気で居られないとか。
別れたいのかと思うだろ普通。」
「へ?そう?」
再びガバッと立ち上がった道明寺は、今度はあたしを真っ直ぐ見つめて言った。
「俺と一緒にいてドキドキするって言ったよな?」
「……うん。」
「男として意識してるって事だよな?」
「……ん。」
「じゃあ、近くに居ることに、慣れろ。」
「はぁ?」
道明寺の言っている意味がわからなくて戸惑うあたしに、クスッと笑ったあと、
急にあたしの手を取って歩き出した。
それも『恋人繋ぎ』で。
「道明寺っ、」
「俺たち付き合って3ヶ月以上経つよな?
そろそろ、恋人らしいことしてもいいんじゃねぇ?」
「…………。」
いつも一緒にいたあたし達だけど、こんな風に手を繋いで歩くなんて初めてのこと。
付き合ってからも、何となく恥ずかしくて出来なかったのに、いざ繋いでみると恥ずかしさよりもドキドキした嬉しさが勝る。
道明寺が言った、『慣れろ』という言葉はこういう事なのか……。
ギュッと手を繋がれて歩いていくと、あたしたちの家が見えてきた。
すると道明寺が言った。
「俺の部屋に寄ってくか?」
にほんブログ村
ランキングに参加しています。応援お願いしまーす✩.*˚
