こういう恋の始まり方 19

こういう恋の始まり方
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次の日、

牧野の顔が見たくて秘書課のオフィスがあるフロアーを無駄に何度も往復する俺。

こんなこと知られたら西田に激怒されるだろう。

午前中は空振りに終わった。

午後からは1つ会議が入っていて夕方まで缶詰め状態。

ようやく終わって、再び西田の目を盗み秘書課のフロアーへ行く。

しーんと静まり返った廊下。

この時間は外回りに同行しているか事務仕事に追われてる時間だろう。

しょーがねーな。

専務権限で後でメールでオフィスまで呼び出すか…と諦めかけた時、長い廊下の前方からあいつが歩いてくるのが目に入った。

今日はベージュのVネックのセーターに濃紺のスカート。手に持った用紙に視線を落としながら歩く牧野は俺の存在に気付いていない。

ゆっくり近付く俺たち。

あと数メートルというところで、ハッと前を向き俺と視線が絡む。

やべぇ。

なんで目が合っただけで、こんなに情けねぇ顔になるんだよ。と、自分に怒鳴りたいほど、俺の顔は多分赤い。

「よお。」

「お、お疲れ様です。」

ようやく会いたかった女に会えて、俺は聞きたかった言葉を投げかける。

「昨日の俺の告白、ちゃんと聞いてたか?」

「っ!」

慌て周囲をキョロキョロと確認するこいつが可愛くて、さらに追い打ちをかける。

「好きだって言ったの聞こ…」

「専務っ!」

言い終わらないうちに牧野に手を引かれ、すぐ側にある給湯室に身体をねじ込まれた。

2畳ほどしかないそこは、コーヒーやお茶、お菓子のストックがダンボールで置かれている。

そこに押し込まれて、

「専務っ、仕事中に困りますっ!」

と、相変わらずいつもの困りますモードのこいつ。

「プライベートの連絡先知らねーもん。」

「はぁ?」

「教えろよ、そしたら毎晩そこに愛を囁いてやるよ。」

と、言ってやると

「バ、バカじゃないの。」

と、耳まで赤くするこいつに、男心が疼く。

場所としては絶好のチャンス。

狭いスペースをさらに狭くするダンボールたちに囲まれて、俺とこいつの距離はほとんどなし。

「牧野、キスしていい?」

直球で聞くと、

「はぁぁぁ?」

と、予想通りの答え。

「なんでそーなるのよっ。」

「だって、聞かねーでしたらおまえ暴れるだろ。」

「そういう問題じゃなくて、なんでするのよって事!」

「好きだから。」

ほらな。

俺の予想は的中。

こいつにはどストレートが効くらしい。

黙ったこいつの腰に手を回し、俺の方に引き寄せる。

そして、キスをした。

気持ちぃ。

なんでこんなにこいつとのキスは気持ちぃんだ。

舌を入れて舐め回したい…と唇を開いた瞬間、横っ腹に一撃を食らう。

「うぐっ…」

「はぁはぁ、変態っ!」

「おまえなぁ、その馬鹿力やめろよ。」

「痴漢に襲われたらこれくらいするのが当たり前でしょ。」

そう言って睨んでくるこいつの唇が俺の唾液でヌルヌルと光っている。

そういう姿にバカみてぇに興奮するのは俺だけか?

「はぁーー、なぁ、牧野。

どうしたらおまえと甘い雰囲気になれる?」

「……」

「少なくとも、あの日おまえから誘ってきたって事は、俺は男として論外な訳じゃねーだろ?

なら、どーして逃げんだよ。」

「…それは…、」

「おまえの『困る』をちゃんと説明しろ。」

そう言うと、

「リスクが大き過ぎます。」

と、俯いてこいつがポツリと言った。

「あ?リスク?」

牧野の言うリスクの意味がわからず聞き返す。

すると、今度は俺を見あげてハッキリと言った。

「専務にとっては今まで大勢の女性としてきた遊びの一つかもしれませんが、あたしにとっては一生後悔して過ごすことになるかもしれないリスクが大きすぎる恋愛です。」

「…あ?」

「あたし、結構重たい人間なので、遊びで恋愛はムリで、」

必死にそう訴えてくるこいつの言葉は、俺の耳に入ってこねぇ。

それよりも、このバカ女に現実を教えるにはどうしたらいいか。

その答えかのように、すぐにあいつらの顔が浮かんだ。

「牧野、今日定時であがるぞ。」

「定時?」

「前に待ち合わせしたカフェ覚えてるよな?

あそこで定時に集合。」

「え、えっ?」

「来ねぇと社内メールで流すぞ。ホテルに誘われたって。」

ニヤリと笑いながらそう言う俺に、

「っ!酷っ、」

と、顔を赤くして叩いてこようとする。

その腕を掴んで、

「急いで仕事終わらせろよ。」

と、自分でも苦笑するほど甘い声で囁き、再び唇にキスをしたあと俺は給湯室を出た。

……………

西田には、

「あきら達と会うことになった。」

と言って定時でオフィスを出てきた。

嘘は言ってねぇ。

本当にこれからあいつらと会う段取りをしてきた。

俺たちがいつも集まるバーの個室にあいつら3人を呼び出した。

急な誘いに乗る気じゃねえ類にも、

『頼む。おまえらしか頼れねぇ。』

と言ったら、

『お願いしますって言ってよ。』

と、この状況をめちゃくちゃ楽しんでやがる。

まずは牧野とカフェで待ち合わせ。

先に着いていた牧野は、テーブルに手帳を広げ何やら書き込んでいる。

「わりぃ、待たせたな。」

そう言って正面に座ると、

「お疲れ様です。」

と、律儀に深く頭を下げてくる。

「仕事モードはやめろ。」

「仕事モードにしてください。」

と、噛み合わない会話。

「あ?」

「専務とあたしがこんなところに2人でいる所を見られたら大変ですっ。だから、仕事中だっていう雰囲気を全面に出してください。」

事務的な口調でそう言うこいつ。

「まぁ、すっぽかさねーでここに来たんだから、それくらいは許してやるよ。」

と、思わず笑みが漏れると、

「笑顔禁止です。」

と、秘書の顔で言いやがった。

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