こういう恋の始まり方 18

こういう恋の始まり方
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会食が終わり、ホテル前のリムジンに乗り込むと、いつもは別の車で移動する西田が俺の隣に乗り込んできやがった。

早速、お説教かよ。

わざと西田に聞こえるようにため息をつくと、西田もメガネをかけ直し、俺を真正面からガン見してくる。

「なんだよっ。」

「専務、聞いてません。」

「あ?」

「好きな女性がいるなんて、私は1度も聞いておりません。」

真顔でそう言うこいつに、俺は至極真っ当な返事をしてやる。

「あたりめーだろ。俺とおまえは恋バナをするような間柄か?」

「専務っ!」

「そんなにでかい声出さなくても聞こえる。」

「はぁーーー。」

西田とこうしてやり合うのは何年ぶりだろうか。

確か、西田が俺の秘書になりたての頃は、俺も学生で血の気が多かった時期。

あの頃は、よく西田から説教を受けてきた。

「秘書として確認させてください。」

「なんだよ。」

「専務の先程の発言は、本当ですか?それとも、アリーナさんが好みではない為、遠回しにお断りしたと言うことですか?」

「両方だ。」

「専務っ!」

いつもは冷静沈着な西田が顔を真っ赤にして興奮してやがる。

これ以上怒らせると仕事に支障が出かねない。

「西田、落ち着けって。

おまえに相談無しにあの場で言ったのはマズかった、それは認める。

ただ、俺が言った事は本心だ。好きな女がいる。」

「……、いつからですか?」

「あー、好きになったのはだいぶ前だからいつからか覚えてねーけど、親密になったのは半年くらい前からだな。」

「では、お付き合いして半年が経つのですね。」

「ん?」

「え?」

お互い顔を見合せて固まったあと、俺は言った。

「付き合ってねえ。」

「はい?」

「だから、まだ付き合ってねーんだよ。」

「……。」

その言葉にアホみたいな面で俺を見つめる西田。

俺は足を組んで余裕で言ってやる。

「まぁ、今、全力でオトしにいってるから心配すんな。」

すると、西田は深いため息をつきながら軽く首を横に振りやがる。

「専務、まさか、振られたんですか?」

「ちげーよっ、ただ、困るって逃げられはしたけどよ…」

「それは完全に振られたってやつですよ。」

「ふざけんなっ、殺すぞ。」

第三者にハッキリ『振られた』と言われると、さすがにキツい。

「では、一方的に専務が好意を寄せているということですね。」

「一方的とは…、一応、それなりに、」

ヤルことはやってるし…とは、西田には言えねぇ。

言葉を濁す俺に、西田は姿勢を正して言った。

「専務、正直、時期尚早だったのではないでしょうか。」

「あ?」

「お付き合いをされているならまだしも、まだ今は専務の片思い中です。今日のあのような場で、公表するには早すぎたかと。アリーナさんとも今後、もしかしたらまた急接近する事があるかもしれません。その時に、今回の事が仇となって本人に気持ちが伝わらない場合も…、」

そうグダグダと話す西田の言葉を遮り、言ってやる。

「いーんだよ。

俺の気持ちを今日1番に伝えたかった奴には、伝わったと思う。」

「はい?」

「牧野だよ。」

「……。」

「牧野には伝わっただろ、俺が本気だってこと。」

「専務、…まさかっ?」

西田は口をあんぐり開けて数秒間固まったあと、

「本気ですか?」

と、真剣な顔で聞きやがる。

「ああ。」

「なんでまた…、秘書なんかを。」

「秘書の牧野を好きになった訳じゃねーよ。

好きになった女がたまたま秘書だっただけだ。」

「……。」

「西田も言ってたよな?牧野は仕事も丁寧で人となりも信頼できるって。だからアリーナのお守役にも推薦したんだろ?」

「そうですが…、私が推薦したのには他にも理由があって、牧野さんなら専務に色仕掛けをする心配もないと。」

「色仕掛け…、まぁ、どストレートに投げ込まれはしたけどよ。」

「え?」

初回から直球でホテルに誘われたとは言えねぇ。

「とにかくっ、俺は本気だ。

あいつしか考えらんねーから。」

俺のその言葉に、西田は珍しく頭を抱えた。

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コメントもいつも嬉しく拝見しております!

コメント

  1. Rudy より:

    いつも楽しく拝見しています!
    かなりお話しが進んできて、更新が早くてめちゃくちゃ嬉しいです!!
    またよろしくお願いします!

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