My teacher 21

My teacher

お姉さんが帰ったあと、道明寺先生は隣に立つあたしをジロっと見つめたまま動かない。

「な、なに?」

「おまえさー、……はぁーー。」

ため息をついたあと、あたしのおでこをピチッと小突くこの人。

「付き合ったばっかの彼氏の事を疑ってんじゃねーよ。」

「…だって、」

「今までの俺の行動で何か不安にさせたか?」

「ううん、そーじゃなくてっ。」

もしも、不安に感じるような事があれば、そもそも付き合うなんて選択はしていない。
ただ……、

「ファンクラブが存在するような人が、どーしてあたしなんかと付き合うのかなーと思い始めたら、色々と考えちゃって…。
遊び?暇つぶし?それともなんかの罰ゲーム?とか」

そこまで言ったあたしの頭を、今度は結構な強さでガシガシとかき混ぜたあと
「バカ。」
と、言い捨て道明寺先生がキッチンへと戻っていく。

そして、お姉さんが持ってきた食材を冷蔵庫へ入れながら、
「不安に思ってんのは、俺の方だっつーの。」と小さく言った。

「え?」

「俺は好きだって気持ちを言葉でも態度でもストレートに伝えてるつもりだけど、おまえがどう思ってるのかはまだ聞かせてもらえてねぇよな?」

「……。」

「俺は遊ばれてんのか?それとも暇つぶしか?」

冷蔵庫に食材を入れながら、あたしに背を向けている道明寺先生がどんな表情をしているのかは分からない。
けれど、彼から不安だという言葉が出てくるなんて思ってもいなかった。

「道明寺先生。」

あたしは道明寺先生の隣に並ぶと、冷蔵庫から小さな箱を取り出した。
それは、旅先で買ったマカロン。

「これ、道明寺先生に食べて貰いたくて買ったの。
あたし、…こんな風にしか伝えられなくて、ごめんなさい。」

普通の女の子がするような、愛の表現なんて出来そうにない。
素直じゃないし、可愛げもないあたしだけど、
今はこれがあたしの精一杯。

あたしの手からマカロンの箱を受け取った道明寺先生は、リボンを解き箱を開ける。
ハート型のマカロンが5つ。

そのマカロンを見て、クスッと笑ったあと、
「今日はこれで勘弁してやる。」
と、綺麗に笑いあたしの口に軽くチュッとキスをした。

突然のことで固まるあたし。

そんなあたしの横を何事もなかったように通り過ぎた道明寺先生は、コーヒーが入ったカップ2つとマカロンの箱をお盆に乗せ、
「早速食べよーぜ。」
と言ってリビングのソファへと移動する。

道明寺先生が選んだのはチョコレートのマカロン。
あたしは、ラズベリーの香りがするピンクのマカロン。

道明寺先生が淹れてくれた濃いめのコーヒーによく合って、美味しくてほっこりしていると、そんなあたしをじっと見つめてくる。

「ん?」

「いつもピンク色に艶々してるよな。」

「へ?」

「おまえの唇。食べたり飲んだりしても取れねーの。」

ようやく道明寺先生の言ってる意味がわかったあたしは、
「あー、リップがそういうのなの。
いつもほとんどお化粧しないから、せめてリップだけでもしなさいって友達がプレゼントしてくれて。
海外製の高い物らしくて、食事をしても落ちないから…」

そう説明しながらも、急に恥ずかしさが込み上げる。
至近距離でじっと口元を見られると、どうしていいか分からず、慌ててコーヒーカップをテーブルに置いたあたしは、自分の口元を両手で隠す。

「なんだよ。」

「見過ぎです。」

「プッ…いーじゃん、減るもんじゃねーし。」

「緊張するからダメです。」

「じゃあ、…見ねぇーから、これならいーだろ。」

口元を隠していたあたしの手をずらし、道明寺先生の唇が重なる。
角度を変えて何度も重なったあと、一度離された唇は、
道明寺先生の指でなぞられ、

「やっぱ、キスしても落ちてねぇ。」
と、甘く囁かれたあと、再び口で塞がれる。

道明寺先生のキスは凄く……心地よい。
あたしの頬や髪、背中、肩に大きな手で触れながら、何度も繰り返されるキス。

そして、それに身を委ねていると、身体をソファに押し倒され、真上から見つめられた。その彼の表情が熱っぽくて、思わず視線を逸らすと、その隙をついて今度は首にキスが落とされた。

身体の深部が熱くなってくるのが分かる。
心臓は聞こえるんじゃないかと思うほどドキドキと煩く鳴って、彼を見つめるあたしの目まで熱で潤む。

耳の下あたりに道明寺先生の顔が埋まり、もう一度深く唇が重なった、その時、
あたしの耳に聞き慣れた音が響いた。

チャラリララーン、チャラチャラララーン、チャラリララーン

その音に、道明寺先生の動きが止まる。

「電話か?」

「ううん。…アラーム。」

「アラーム?こんな時間に?」

不思議そうにあたしを見つめる道明寺先生。

「日曜の22時のアラーム。
次の日仕事だから、日曜の夜は早めにアラームをかけて寝る準備をしてて、」

「ってことは?」

「…もう帰らなきゃ。」

見つめ合ったままそう答えるあたしに、

マジかよ、と呟いた後
はぁーーー、と盛大にため息をつきながら、
「今度から、デートは土曜の夜だからなっ。」
と、不貞腐れる道明寺先生。

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