My teacher 14

My teacher

牧野を送って邸に戻ると、案の定俺の部屋で姉ちゃんが待っていた。

「あら、早かったわね。」

「……。」
無言で返すと、

「そのまま朝まで帰ってこないかと思ったわ。」
と、攻撃される。

30歳過ぎてもまだ弟をからかうことに生き甲斐を感じてる姉ちゃん。

「そんな仲じゃねーよ。」

「そう。いい子そうね、つくしちゃん。」

「ああ。」

ソファに座る姉ちゃんの横に、俺も腕時計を外しながら座る。

「好きなんでしょ?彼女のこと。
どこ?どんな所がつくしちゃんの事気に入ったの?」

「なんだよ、それ。」

「いいじゃない、教えなさいよ。
司が女の子を連れて来るなんて一生に一度の事かもしれないんだから。」

「姉ちゃん、すげぇ楽しそうだな。」

「すっごく楽しいわよ。
司がつくしちゃんをお姫様抱っこしている所、写真に撮ってお母さんに見せたかったわ。」

「やめろっ。」

「じゃあ、口止め料として、言いなさい。
つくしちゃんのどこが気に入ったの?」

「はぁーー、」

ワクワクした顔で俺を見つめる姉ちゃんに深くため息をつく。

「一目惚れだ。」

「っ!!一目惚れ?」

この話を簡単に済ませたくて言った言葉は、どうやら裏目に出たらしく、姉ちゃんはさらに興味津々になりやがる。

「いつ、どこで、出会って、一目惚れしたのよ!
どんなシチュエーションだったの?」

「いいから、もう姉ちゃん、自分の部屋に戻れよ。」

「このまま戻ったら朝まで寝れないわ。」

睨みながらそう話す姉ちゃんは、本当に話を聞くまでこの部屋から出ていかないだろう。
俺は観念して、深くため息をつきながら言う。

「最初に会った時に、
あいつ、ブレてないって言うか、媚びてないっつーか。
生徒に対しても俺に対しても、嘘がない態度で…まぁ、簡単に言えばかっこいいって思った。
何回か会う内に、男子校で生徒に舐められねーように気張ってるくせに、ふとした時に女っぽくて、それが、」

そこまで言った時に、隣から強烈な視線を感じ姉ちゃんを見ると、超絶ニヤついた顔で俺を見ていて、やっと自分の惚気た失言に気付く。

「司、あんた、つくしちゃんにベタ惚れじゃない。」

「うっせー。」

「そんなに好きなのに、告白はまだなの?」

呆れ顔の姉ちゃんに、俺は頭を抱える。

「タイミングがわからねぇ。」

「タイミング?そんな事考えてるからダメなのよ。
好きならガツガツ行くっ!つくしちゃんみたいな鈍感そうな女の子には、常に猛プッシュしないとダメよ。」

「押し過ぎたら、あいつ逃げそうだろ。」

「…プッ…、意外にあんたって恋愛には慎重なのね。
でも、そのうち、押さずにはいられなくなる時がくると思うわよ〜〜。まぁ、せいぜい頑張りなさーい。」

クスクス笑いながら、ようやく俺の部屋を出て行く姉ちゃん。
その背中を見ながら、押さずにはいられなくなる時?と俺は小さく呟いた。

…………
それから数日したある日の夜、久しぶりにあきらから電話があった。

「司、元気か?」

「おう。おまえは?」

「先週までロスに出張してて、ようやく帰ってきた所だ。
妹たちにロスでお土産をわんさか頼まれてたから、仕事よりそっちの方が忙しかったけどよ。」

高校生になった妹たちに相変わらず振り回されっぱなしのあきら。
そんなあきらが深刻そうな声で俺に言う。

「ちょっと小耳に挟んだ話だけどよ、最近司の学校付近でチンピラが動き回ってるらしいな。」

「あー、その話かよ。」

あきらが言っているのは、ここ最近やたらと生徒や若い女を狙った強盗事件が増えている事だ。
犯行は3人組の茶髪の男で、見るからにヤンキー。

すぐに捕まりそうなもんなのに、最初の犯行から2ヶ月経っても未だに捕まっていない。
被害者もどんどん増えていて、つい先日は白百合学園の生徒も下校途中に鞄を奪われ財布を盗まれた。

「その件がどうした?」
俺が聞くと、あきらは声を潜めて話した。

「親父の古くからの知り合いから聞いたんだけど、どうやらその事件の犯人は◯◯組の組長の息子が関係してるらしい。警察も情報は握ってるけど、当の息子本人が雲隠れしていて捕まらない。きっと組長がどこかに隠してるはずだけど、令状を取るほど証拠がないらしい。」

「んー、なるほど。」

「で、ここからが重要だからよく聞けよ。
来週末、河川敷で花火大会があるだろ?」

「ああ。」

「どうせ捕まるなら、その花火大会の日にひと暴れしてから捕まってやるって、その息子が知り合いに漏らしてるらしいぞ。
花火大会の日はおまえのとこの生徒たちも毎年浴衣で祭りに行ってるよな?
そういう奴らを餌食にして遊んでやろうと息巻いてるらしいから、要注意だぞ。
俺の方でも、できるだけの事は手を回すけど、当日まで雲隠れされたら俺らも手出しできねーから、とにかく、生徒だけは守ってやれ。」

「分かった。サンキュー。」

裏社会にも精通したあきらからの情報だから、信憑性はかなり高い。

最後にひと暴れして…そんな考えの奴らだから、どんな凶悪な行為をしてくるか。
生徒たちが襲われるようなことがあれば、一生心に傷を負うことになる。

………

その数日後、白百合学園に出勤すると、急遽職員会議が開かれた。

予想した通り、学区内で頻繁に発生している強盗事件に関するもので、週末の花火大会とお祭りには職員全員が巡回して警備に回って欲しいとお達しがあった。

いつもなら、マンションの部屋から、打ち上がる花火を眺めているのに、今年は花火が終わるまでの2時間近くうろうろと歩き回らなきゃなんねぇ。

内心ため息をつきながら職員会議の資料に目を通して行くと、
最後のプリントに四角で囲まれた文章が目に入った。

そこには、花火大会当日、俺らと同じく教職員たちが巡回にあたる高校の名前が書かれてあった。

その1番最後に見つけた。
『星稜高校』

今年は、どうやらあいつと一緒に花火が見れるようだ。

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コメント

  1. 匿名 より:

    花火見に行きたーい

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