My teacher 2

My teacher

週末、2週間ぶりに邸に顔を出すと、
「おかえりなさいまし、坊っちゃん。」
と、嬉しそうにタマが出迎える。

邸を出て、マンションで一人暮らしを始めて4年。
俺が出て行った後は、姉ちゃん家族がここの主として暮らしている。

「司、帰ってたの?
夕ご飯は一緒に食べていくでしょ?」

「いや。運動不足だからジムを使いに来ただけだ。
汗を流したら適当に帰る。」

「なんでよ。ゆっくりして行きなさいよ。」

「うるせぇ。どうせまた、子守させられるんだろ。」

姉ちゃんは俺が大学生の時に結婚した。
相手はホテル業界で知り合った経営者の息子。
男の俺から見ても、ハンサムで物腰が柔らかく頭のいい男で、姉ちゃんのハートを射止めた彼は、あっという間に道明寺家の婿養子になった。

それから5年。
子供も2人出来、道明寺邸で幸せに暮らしている。

そんな訳で、道明寺家の跡継ぎ問題という大役は姉ちゃんに任せて、俺は教師になる道を選んだ。
中学、高校と荒れた生活だった俺は、1人の教師と出会い、人としての生き方を学んだ。

初めて、こういう大人になりたいと思える人に出会い、それまでの生活が一変した。
大学では真面目に学校にも通い、会社の仕事も手伝うようになった。

そして、大学生活を過ごす中で、俺は一つの夢ができた。
教師になりたい。
誰かの人生を変えてやりたいなんて大それた夢なんかじゃなく、ただ恩師の先生が格好良かったから、それだけだ。

元々、世襲経営なんて続かないと思っていた親父は、俺の意見に反対はしなかった。
タイミングよく姉ちゃんの結婚も決まり、婿を経営者として育てる楽しみも出来たからだろう。

そうして、俺はめでたく教師になり今年で4年目。
白百合学園という超お嬢様学校の女子校で英語の教師として教壇に立っている。

毎年、新入生が入ってくるたびに、ラブレターのような手紙がわんさか机の上に置かれている。
けれど、数ヶ月するとそれもぴたりと止まる。

なぜなら、俺は女嫌いで有名だからだ。
もちろん、生徒である女子には全く興味ねーし、同僚の女教師とも必要最低限の会話しかしない。

あきらや総二郎たちに何度か合コンまがいの場にも連れて行かれたけれど、ニコニコ愛想を振りまいてる女たちを見ているだけで気分が悪くなり即退散。

恋愛や結婚に興味がない訳じゃない。
姉ちゃん家族を見ていると、こういうのも悪くないと思う。
が、実際自分が…となると、そういう相手に死ぬまでに出会えるのだろうかと疑問しかない。

ジムで2時間びっちり汗を流した後、シャワーを浴びていると、携帯の着信音が聞こえた。

画面を見ると、「教頭」の文字。
なんかめんどくせぇ事になりそうだ。

そう思いながら電話を耳に当てると、
「道明寺先生、お疲れ様です。
明日の河川敷ボランティアの件ですが…」
と、予感的中。

「ボランティア部の田中先生が産気付いて病院に運ばれたんです。そんな訳で、道明寺先生、明日の河川敷の清掃、お願い出来ませんか?」

「嫌だと言ったら?」

「あははは〜。先生のクラスの子も5人参加しますので、そこはなんとか…。」

教師になってみて分かったことがある。
学校と言うところは意外と縦社会だ。
腰の低い教頭でも、上司は上司。
軽く反発はしてみるが、結局は従う羽目になる。

「…わかりました。」

「じゃあ、朝の8時に河川敷集合ということで!
よろしくお願いしますね道明寺先生。」

電話を切った後、俺は呟く。
「休みの日に8時って…地獄だな。」

…………

「おはようございます。」

翌朝、8時少し前に河川敷に行くと、もうすでに白百合学園の生徒が指定のジャージ姿で揃っている。

ボランティア部というのは大学試験で推薦入試を狙っている生徒たちが活動する部であり、メンバーは成績優秀者が多い。

毎月1回他校と合同で河川敷の清掃や駅前のゴミ払い、幼児施設などでの絵本の読み聞かせをしている。

今日の河川敷清掃は確か、他にも近隣高校が来ているはずだ。
そう思い、キョロキョロと辺りを見回してみると、そこについ最近見た顔があった。

「牧野先生っ、俺たちあっちの方の掃除行ってきます!」

「りょーかい。各自、ゴミ袋持っていくように!」

大柄な男子生徒に囲まれてテキパキとゴミ袋を配っているのは、この間交番で会った星稜高校の牧野とかいう教師だった。

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コメント

  1. はな より:

    一般人の司君もとっても新鮮です!
    やっぱり女嫌いなんだ、そらそうか。

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