My teacher 3

My teacher

8時スタートで河川敷のゴミ拾いボランティアが始まった。

白百合学園を含めて4校が参加していて、2校ずつに分かれ両側を歩いていく。
白百合学園とペアを組むのは星稜高校。

「よろしくお願いしまーす!」
と、体育会系の挨拶をした後、大きなゴミ袋を持って身体のでかい奴らが先に歩いていく。

その中に、あの牧野という教師もいる。
白いTシャツに黒のハーフパンツ。
少し厚底のスニーカーを履いているけれど、生徒の中に混じると、大人と子供かってくらい小せぇ。

日に当たると少し茶色く光るショートカットは、化粧っけのない白い顔によく似合っている。
男子校の教師となれば、あれくらいボーイッシュじゃなきゃ務まらないのだろうか。

「牧野先生っ、これもゴミですよね?」

「なによ、それっ。」

「トースターです!」

誰がすてたんだか、河川敷にオーブントースターまで捨てられている。
その後も、傘や自転車のタイヤ、花火後のバケツ、ござなど、大型ゴミが次々と見つかり、それを星稜高校の男子生徒がすべて拾い上げていく。

「みんなーっ、あと15分しかないから、少しピッチをあげて、あの看板のところまで行くよー!」

「りょーかいでーす。
牧野先生、そのゴミ袋、俺が持ちますよっ。」

「いいの、いいの。
それより、あそこになんか落ちてるの見えない?
大物かもしれない、高瀬、行ってみよう。」

満杯のゴミ袋を抱えながら、河川敷の下の方まで生徒たちと下りていく女教師。
河川敷の清掃をあんなに楽しそうにやる大人なんて見た事ねえ、ってくらい笑ってやがる。

そんな女教師を見ていると、つい俺の口元も緩んでいたらしい。
「道明寺先生?」
と、女子生徒に言われてハッと我にかえると、

「道明寺先生が笑ってるの初めて見ました。」
と、ボランティア部の部長に言われる始末。

約1時間の清掃で大量のゴミが集まった。
参加した生徒たちが最後に集まり、解散式を行なっている間、ゴミ拾いで指を少し怪我した生徒に牧野先生が絆創膏を貼ってやっているのが見えた。

ふざけて指を動かす生徒と、それを押さえつけて絆創膏を貼ろうとする教師。
なかなか貼れず、結局は男子生徒の肩に1発パンチを入れて黙らせる。
そんな光景を見て、俺の隣に立っていた男子生徒がクスッと笑った。

俺が、その生徒の方を見ると、怒られると思ったのか、俺に
「すみません。」と小さく謝る生徒。
俺はその生徒に聞いた。

「いつも、あーなのか?」

「え?」

「おまえらの女教師。」

何を聞かれたのか分かった男子生徒は、大きく頷いた後、
「牧野先生は、いつもあんな感じです。
暴力的でいつも殴ったり蹴ったりしています。」
と、真面目な顔で言う。

「教師として大丈夫かよ。」

「大丈夫です。
みんな、牧野先生の愛の鞭を貰いたがってますので。」

「愛の鞭?」

「はい。
なんて言うか、牧野先生ってからかい甲斐があるって言うか…。
いつも悪ふざけする俺たちに付き合ってくれるんで、からかって怒られるのを待つみたいな。」

「…ふーん、なんかわかんねぇけど。」

「まぁ、星稜のマスコットキャラクターみたいなもんです。
彼氏いない歴25年の牧野ちゃんって、みんなから呼ばれてます。」

その言葉に思わず、ぷっと吹き出しそうになったけど、なんとか我慢した。

「はい、それでは皆さんご苦労様でした〜!」
解散式が終わり、各学校の生徒たちが散り散りに帰っていく。

そんな中、『彼氏いない歴25年の牧野ちゃん』が俺の方を振り返り、
「お疲れ様でした。」
と、丁寧に頭を下げるのが見えた。

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コメント

  1. はな より:

    「彼女いない歴26年の道明寺くん」だよね!
    じゃなきゃ怒るよ!

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