宗太くんの
「つくし、一緒にお風呂に入ろうよ。」
の誘いには思わず絶句した。
いくら子供だからって、一緒にお風呂に入るほど自分の体に自信はない。
そんなことを思っていると、さっきまで『ダメだ』『ケチ』と、言い争っていた道明寺が、
「風呂に行くぞ。」
と、宗太くんを連れて部屋を出ていく。
「なんだかんだ言って、優しいじゃん道明寺。」
思わず小さく呟いたあたしに、
「そこが坊っちゃんのいいところだよ。」
と、優しい顔で笑うタマ。
「さぁ、荷物を片付けてお茶にしましょ。」
一通り片付けが終わりタマさんが用意してくれたお茶を飲んでいると、お風呂から上がったばかりの宗太くんが部屋に飛び込んできた。
「ジュースある?」
その後ろからTシャツにスウェットパンツをはいたラフな服装の道明寺が追いかけてきて、
「おまえ、まだきちんと髪ふいてねーだろ。」
と、バスタオルを宗太くんの頭に乗せガシガシと髪を拭いてあげている。
そんな道明寺は自分もまだきちんと拭いていないのかいつもはカールした髪がきれいにストレートになっていて思わずドキッと胸がなるほど綺麗。
「ったく、こいつ。
髪も自分で洗わせたらすげー適当だし、着替えだって手伝ってやらねーとすげー時間かかってやがる。
牧野?どうした?」
じっと道明寺を見つめたままだったあたしに、不審そうにそう聞く道明寺。
「っ!いや、別になんでもないよっ。」
「……おまえ、俺に見とれてただろ。」
「っ!はぁー?そんなわけないでしょ。」
「いや、図星だな。顔真っ赤だぞ。」
図星。
目の前の道明寺は、8年も付き合っているのに今でも目を奪われるほど本当に……かっこいい。
艶のある綺麗な肌。
無駄に長い手足はほどよい筋肉がつき、すらりと伸びている。
Tシャツの上からでも分かる引き締まったお腹。
最近ではスーツ姿を見ることが多かっただけに、こういうラフな服装をしていると、余計に整った肉体美が強調される。
「喉乾いただろ、タマにジュースでも貰え。」
そう言って頭を拭いてあげた宗太くんを解放した道明寺は、あたしが座るソファにどかりと座りグラスからミネラルウォーターをゴクゴクと飲みながら
「あぁー、すげぇ疲れた。」
と、ソファに沈みこんだ。
「お疲れさま。」
「おう。」
「道明寺も髪拭いたら?」
「ああ。…………宗太の奴、今日は俺の部屋で寝るんだとよ。
……牧野、おまえも来るか?」
「はぁ?」
タマさんもいるっていうのに、突然そんなことを言い出す道明寺を思いっきり睨んでやると、あたしの方に体を近付けてきて、
「風呂で散々遊んでやったから、あいつすぐ寝ると思うぞ。
だから、」
「道明寺っ!」
まったく、相変わらず頭のなかは不謹慎なこのバカ男。
でも、
ここ数週間であたしの知らなかった道明寺がたくさん知れて、あたしの中でこのバカの株は上がりっぱなし。
子供になんて興味がないかと思っていたのに、文句を言いながらも遊んであげるし、お風呂にも入れてあげている。
そして、その一つ一つがどれも不器用ながら優しくて、見ているこっちまであったかくなるほど。
きっと、この人は結婚して子供が出来たらいいパパになるんだろうな…………そんなことが何度も頭をよぎる。
結婚……、
子供……、
パパに…………。
道明寺を見ていると、そんな未来を期待しちゃう。
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