nephew 9

nephew

昼休憩。
自作の簡単なお弁当を食べたあと、隣の席の事務のえみちゃんが差し入れしてくれたクッキーを囲み事務所で談笑していると、携帯がなった。

画面を見ると『俺様』

慌てて席をたち事務所を出て、廊下の隅で携帯を耳に当てる。

「もしもし。」

「俺だ。」

「どうしたの?」

こんな時間に道明寺から着信があるなんて珍しい。
だからか、何かあったのかと不安になる。

そんなあたしに道明寺は予想もしない『提案』をしてきた。
邸で暮らさないか。
しかも、それが道明寺のお母さんからのお願いだという。

泊まったことさえこの間が初めてだというのに、暮らさないかなんて予想もしなかったあたしは、黙ったまま答えに詰まる。
そんなあたしを誤解したのか道明寺は、
「おまえが嫌なら無理しなくてもいい。」
なんて呆気なく言う。

嫌ではない。
むしろ、子供は大好きだしこっちまでパワーを貰えるようで一緒にいると楽しい。
でも、期待されるほど一緒に過ごす時間があるかどうかも分からないし、宗太くんもそれを望んでいるかどうか…………。

そんなあたしの不安をこの人は一蹴する。

「迷ってるなら邸に来い。
宗太のためになれるかなんてどうだっていい。
俺のために邸に来い。」

その言葉を聞いて、あたしは自分に嘘をついていたことに気付いた。
あたしが迷ってるのは宗太くんのことじゃない。
道明寺があたしが邸で暮らすことをどう思ってるのか……その事が不安だったんだって。

あたしたちはもう8年の付き合い。
その間何度も同棲や結婚の話をしてきた。
大学を卒業したらすぐに結婚しようという道明寺を説得して就職したあたしは、無事に司法試験にも合格し弁護士として歩み始めた。
そうして時間にもゆとりが出来はじめた頃、今度は道明寺の仕事が忙しくて結婚どころではなくなった。

出張、出張が続く毎日で、日本にいる時だけあたしの部屋に泊まる生活。
一週間近くもあたしの部屋に来ることもあり、まるで同棲しているかのような時期もあった。

それがここ最近お互い仕事も落ち着いてプライベートな時間も作れるようになり、週末のデートや仕事帰りの待ち合わせなど普通の恋人のような付き合いが出来るようになった。

昔よりも時間にも気持ちにも余裕が出来たはずなのに、
なぜか少しだけ不安だった。
なぜなら…………、
道明寺が『結婚』も『同棲』も言わなくなったから。

昔と変わらずほぼ毎日電話やメールはするし、出張でもない限り週末は少ない時間でも会いに来る。
一緒にいれば相変わらず何もしないなんてことはなく、休みの日の前日は寝かせてもらえないことも多々。

だから、浮気や愛想をつかされたとは思ってないけれど、昔のようにあたしと『一緒にいたい』という気持ちは薄いのかなぁ、なんて思ったりもしてた。

だから、電話の、
「俺はおまえと一秒でも長くいてぇ。」
その道明寺の言葉が素直に嬉しくて、

「牧野さん、なんかいいことありました?」
なんて、席に戻ったとたんえみちゃんに聞かれるほど顔が紅潮してたあたし。

道明寺の電話から3日目。
金曜の夜に道明寺邸へと行くことが決まった。
道明寺も仕事を早めに切り上げてあたしの部屋まで迎えに来てくれるらしい。

すぐに戻って来れるとはいえ、ある程度の荷造りをして部屋で待っていると、ベルと共に道明寺が部屋に入ってきた。

「早かったね。」

「おう、早めに切り上げた。
用意出来てるか?」

「うん。」

「運転手に荷物運ばせる。」
そう言って道明寺は携帯で運転手を呼ぶ。

「あんた、自分の車で来なかったの?」

「ああ、出先からそのまま直帰したからな。」

そう言うのと同時に部屋の外から声がかかり馴染みの運転手さんが顔を出す。
ペコリと頭を下げると向こうもニコリと笑いながら丁寧に頭を下げてくれる。

「これ、車に運んでくれ。」

「はい、かしこまりました。」

「運んだらそのまま少し待機しててくれ。」

「はい。」

道明寺の指示に従い荷物を持って部屋を出ていく運転手さんを見送り、あたしも最後の手荷物をかき集めて部屋の戸締まりを確認していると、
すっとあたしの側に来た道明寺が後ろからあたしを抱きしめてきた。

「ど、道明寺っ?」

焦るあたしなんてお構い無く、そのまま壁へと追い詰めると、クルリと反転させられて抵抗するまもなく唇を奪われる。

「……んっ……道明寺ぃ……」

抗議の声も虚しく、キスだけじゃ止まらない道明寺は、あたしの服の中にまで手を差し入れてきて、ブラの隙間から入り込んでくる。

「ちょっ……道明寺っ!」

「プッ…少しはおとなしくしろよ。」

「バカっ、おとなしくなんてしないっ!
あんた何してるのよっ。
運転手さん待ってるでしょ!」

「待機させてるから問題ねぇ。」

「待機って……あんた計画的犯行ってこと?」

「さすが弁護士。」

「うるさいっバカ!」

文句を言うあたしの口を塞ぎながらクックッと笑う道明寺は、それでも止めなくて、左手はもうあたしのスカートを下着が見えるほどまくりあげている。

「……道明寺……ほんとに、……これ以上は、」

頭では絶対今は無理だって分かってるのに、器用にあたしの弱いところをついてくる道明寺の手に、頭がクラクラしてきて、お願いだからこれ以上は……と懇願するしか出来ないあたし。

そんなあたしに、
「どうせ、邸に戻ったら宗太に邪魔されて出来ねぇだろ。
だから、俺的には今してぇーんだけど。」
と、相変わらず色気駄々漏れの顔で迫ってくる。

「ムリムリ。」

「無理じゃねえー。」

「ダメだって!」

ここまで言えば無理強いはしないのは分かってる。
でも、先週も……してないし、その前はあたしの生理でずっと出来なかったし、ここ数週間道明寺に我慢させてる自覚があるだけに、申し訳ない。

邸で暮らすようになったら、
こういう問題はどうしたらいいんだろう。
道明寺のキスを受け止めながらそんなことを考えているあたし。

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