有りか無しか

有りか無しか

有りか無しか 20

「道明寺が左遷?」 滋さんから聞く話にあたしは驚きを隠せなかった。 生まれた時から道明寺財閥の跡取り息子として育てられ、あまりにも甘やかされすぎた結果、横暴で俺様になってしまったあいつが、今更平社員へと降格し、しかも東京を離れ...
有りか無しか

有りか無しか 19

工房を出ると、すぐ前にはババァが乗ってきた専用車が停められていた。 運転手が俺の顔をみて少し驚いたあと、何事もなかったように後部座席に俺とババァを案内する。 「空港まで行ってくれ。」 「かしこまりました。」 飛行機...
有りか無しか

有りか無しか 18

昼近くに東京に到着した俺は、一度本社へと足を運ぶ。バタバタと北海道へ旅立ったので、私物の整理などはそのままにしてきた。 幸い、俺が今まで使っていた部屋は誰も使っていない。ファイルの整理や、北海道へ持っていく書類、仕事に使う私物を振り...
有りか無しか

有りか無しか 17

道明寺財閥が新たに手掛けているリゾートホテルの建設場所は北海道の温泉地。 初めて海外系のホテルと業務提供することが決まり、富裕層をメインターゲットにした高級リゾートホテルが1年後にオープンする予定なのだ。 牧野には東京に戻るの...
有りか無しか

有りか無しか 16

デジャヴか……。 まるでそう思わせるかのように、数日前に見た光景が目の前にあった。 ガードレールに腰掛けてこちらを見ている人。でも、この前と違うのは、いつもより少しだけ表情が硬い。 あたしを見つけてゆっくり近づいてきた道...
有りか無しか

有りか無しか 15

「バカにしてる……。あいつ、完全にあたしの事バカにしてるっ。」 昨夜の事を思い出し、工房で一人悪態をつくあたし。 「結婚しようぜ、俺たち。」 バカみたいに緊張した顔でそう言った道明寺に、「ありえないっつーの。」と、あたし...
有りか無しか

有りか無しか 14

駅の改札を出て、マンションまでの道のりを早歩きで帰っていると、急に周りの人の流れがゆっくりになったような気がした。 ふと、前を見ると、ガードレールに腰掛けながらこちらを見ている人がいる。 「道明寺。」小さく呟くあたし。 ...
有りか無しか

有りか無しか 13

親父とこうして二人で歩くのは何年ぶりだろう。 「男同士で話そう。」と誘われ、邸の庭を並んで歩く。 「司。」 「はい。」 「道明寺を捨てられるか?」 こうして聞かれる事は覚悟していたけれど、まさか一言目に言われ...
有りか無しか

有りか無しか 12

邸は朝から重苦しい雰囲気に包まれている。その原因は、まさしくこのババァ。 「とにかくっ、見つけ次第私の前に連れてきて頂戴っ!」 電話に向かって怒鳴ったあと、深くため息をつくババァに、メイドたちは怯えている。 婚約をすっぽ...
有りか無しか

有りか無しか 11

とうとうこの日がやって来た。両家が揃い正式に婚約を交わす。その後はマスコミに連名で文書を流す事になっている。 もう、後戻りはできない。最後の悪あがきで牧野に会いに行ったこと、堪らなくなってキスをした事、後悔はしていないがしなければ良...
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