チーム長とそういう関係になってから、あっという間にあたし達の距離は縮まった。
週末はもちろん、平日もあたしの部屋で寛ぎ、そのまま泊まっていくことも多々。
でも、あたしとしては……どうも慣れない!
こんな狭い部屋に馴染んでくれるのは嬉しいけれど、チーム長がこんなにデレな性格だとは。
もちろん、1回シタらトーンダウンして冷たくなるような人よりは全然いいけれど、ここまで甘いとこっちのペースが乱れまくる。
『好きだ。』『可愛い。』なんて当たり前、まるであたしがお姫様かのように大事に扱われ、戸惑う毎日だ。
今日もいつものように仕事終わりにあたしのマンションに来てるチーム長。
夕食を終えて部屋で寛いでいると、あたしの携帯が鳴った。
画面には親友の『松岡優紀』の名前。
「もしもし。」
と出ると、
「つくし、今少し話せる?」
と、いつもよりテンション低めの声。
「何かあった?」
「再来週の同窓会のことなんだけど、」
「うん。」
「来ないって言ってたはずの荒木が来るみたいなのよ。」
「……そうなんだ。」
あたしはそう言いながら、横に座るチーム長に、
「ちょっと電話してきます。」
と言って立ち上がり奥の部屋へ移動する。
「つくし、ごめん!彼氏来てたの?」
「うん、でも大丈夫。」
「どうする?つくしは出席する?」
「あたしは行かないよ。元々行くつもりもなかったし、あの人が来ても来なくても関係ないから。」
「でも、荒木のやつ、つくしは来るのかってしつこく幹事に聞いてきたみたいよ。」
「……、そーなんだ。とにかく、あたしその日は仕事だから行けないの。そう伝えて。」
「ん。わかった。じゃ、またね。」
優紀からの電話を切ったあと、少し間を置いて部屋に戻ると、チーム長があたしを手招きして隣に座れと合図する。
そして座ったあたしをじーーーっと見つめたあと、
「なんで同窓会行かねーの?」
と、真剣な顔で聞いてくる。
「電話聞いてたの?」
「聞こえてきた。同窓会っていつ?」
「再来週の土曜日。」
そう答えると、またもじーーーっと見つめたあと、
「その日、仕事じゃねーじゃん。」
と、疑うような目で見る。
「……っ!い、いーのいーの!どうせ今更中学の同窓会に行っても知り合いもいないし、大勢集まる所も苦手だし。」
「ふーん、ならその日は俺と温泉でも行く?」
と、いつものチーム長に戻って、あたしはほっと一安心をした。
それから1週間たったノー残業デーの日、仕事帰りにデパートでコスメや洋服を見ていると、知らず知らずに時間が過ぎ、20時を過ぎていた。
急いでマンションに戻ると、チーム長が部屋の前で待っていた。
「チーム長っ!」
「おせぇ。」
「どうしたんですか?」
「携帯、なんで出ねーんだよ。」
「えっ、あっ!電源切れてる。」
デパートを出た時には僅かにあった充電も、今は無くなり真っ暗な用無しの携帯。
マンションの鍵を開け不機嫌なチーム長を中に入れると、あたしはそのままお茶を淹れるためにキッチンへと向かった。
やかんにお湯を入れ火にかける。
そして、紅茶の茶葉をポットに入れていると、急にあたしの背後からチーム長がギュッと抱きついてきた。
「っ!チーム長?」
「今までどこにいた?」
「えーと、デパートで買い物を。」
「誰と?」
「1人ですけど?」
「本当か?」
チーム長にしては珍しい。
こんな問い詰めるような質問をしてくるなんて。
そんなに怒らせてしまったかと思い、あたしはくるりとチーム長の方へ向き直り、
「怒ってます?」
と、素直に聞いてみる。
すると、チーム長はあたしの顔をグイッと下に向かせて、
「見んな。」
と言った。
「ど、して?」
「情けねぇ顔してるから、見んな。」
そう言われたら、どうしても見たくなる。
どうしてチーム長がそんな顔をしているのか。
「なにかあった?」
そう呟くと、
チーム長が呟いた。
「同窓会。」
「え?」
「同窓会、なんで行きたくねーのかって、ミョーに引っかかって。別に気にしなければいーんだろーけど、おまえが俺の前で電話できない何かがあるんじゃねーかと思ったら、胸騒ぎがして……。はぁーー。」
何を言ったかと思えば、そんな事か。
思わず笑みが漏れて、フッと笑うと、
「悪かったな、ちっせぇ男で。」
と、拗ねながらあたしから離れていこうとするチーム長。
その腕を取り、あたしは言った。
「全然大したことじゃないの。ただ、昔ちょっとだけ付き合ってた人が同窓会に来るって言うから何となく気まづくて行きたくなかっただけ。」
「付き合ってた男?」
「ん、大学の時に少しね。でも、ほんと数ヶ月だけ。彼とは何もなかったし……。」
「何も?」
食いつくように聞いてくるチーム長に、
「ご存知の通り、この歳まで何もなかった女なので。」
と黒歴史に自ら触れる。
すると、はぁーーーと深いため息と共に、あたしをギューッと抱きしめてくるこの人。
そして、耳元で言った。
「行ってこいよ、同窓会。」
「なんでよ。」
「他のダチに会うチャンスだろ?」
「大丈夫。会いたい人には会えてるから。」
「ほんとに?マジで行かねーの?」
そう聞いてくるから、あたしは意地悪く聞いてみる。
「行ってほしーの?」
「……んー、」
「彼、かっこよくなってるかも。」
「行くな、ぜってぇ行くな。」
もぅ、どっちなのよこの人は。
あたしは強い力で抱きしめられたまま、『あー、今日もこの人は甘いんだぁ。』と幸せを噛み締めていた。
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