チーム長の策略 8

チーム長の策略
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1課と2課の合同飲み会は、会社から徒歩10分の場所にある居酒屋の2階和室を貸し切って行われた。

参加者は約40名。

席は飲み会恒例の『くじ引き』で決められる。

あたしが引いたのは9番。

奥から3つ目のテーブルだ。

正面には1課の木村さんと2課の吉口くんが座っていて、隣の席の10番はまだ空いたまま。

これから来る人が10番くじを引くのだろう。

19時からの飲み会。時間ギリギリにやってきたのは会議に出ていた1課のチーム長清水さんと2課の道明寺チーム長の2人。

残っている2個のくじは10番と21番の2つだけだ。

あたしの隣に座るのはどちらかのチーム長という事になる。

ソワソワしながらそのくじの行方を追っていると、先に引いた清水チーム長が、

「俺、10番!どこかな?おっ、牧野さんの隣だね。」

と、あたしの方へ近づいてくる。

残る道明寺チーム長は、21番くじ。

あたしから2つ離れたテーブルで、全員が女性というハードな席。

参加者全員が揃ったところで、清水チーム長が乾杯の音頭を取り、飲み会がスタートした。

飲み放題コースなので料理もお酒も流れるように次から次へと運ばれてくる。

「これ、なんだろう?」

「コリコリするから鳥の軟骨ですかね……」

向かいに座る木村さんと吉口くんが今運ばれてきた唐揚げを口に入れたあとそう話しているのを聞いて、

「砂肝だと思いますよ。衣にあられを入れてるから、カリカリと食感がいいですね。」

とあたしが言う。

すると、清水チーム長が、

「おー、牧野さんって料理得意なんだ。」

と、驚いたように言った。

「いえ、全然得意なんかじゃありません。」

「でも、いつもお弁当持ってきてるよね。」

「それは……、」

節約してるからなんてこんな場所では言えない。

仕事が命で、信じられるのは貯金だけ。

そんな可愛げもない事を飲み会で言えば、あっという間に笑いものになるだろう。

「得意料理は?」

「え?……和食ですかね。母に教わった料理しか知らないので。」

「へぇー、良い奥さんになるだろうね。」

清水チーム長のその言葉に、吉口くんが、

「それ、セクハラですよ〜」と素早く反応して、あたし達のテーブルはどっと笑いが溢れた。

清水チーム長は30代前半で見た目もとてもハンサムだ。社内ではこんな噂がある。

『1課の清水は仏のチーム長、2課の道明寺は鬼のチーム長。』

いつもピリリとした雰囲気をまとっている道明寺チーム長に比べ、清水チーム長はにこやかで人当たりがよく社内でも人気だ。

独身だから社内でも狙っている女子社員は少なくないはず。現に、さっき清水チーム長がくじを引いてあたしの隣の席だとわかった瞬間、同期の加代子が『いいなぁ〜』とあたしに口パクで伝えてきた。

「牧野さん、次何飲む?」

「あっ、チーム長はどうしますか?」

「俺は……、何がおすすめ?牧野さんと同じものにしようかな。」

ニコッと笑いながらそう言う清水チーム長は、男の人としてとても素敵だ。でも、……胸はドキリと鳴らない。

何故だろう。道明寺チーム長に対しては何度も鳴るこの胸なのに、他の人にはなんの反応もしないなんて。

そんなことをふと考えていると、正面の木村さんが言った。

「牧野さん、最近雰囲気変わったよね〜。」

「へ?」

「スカート履いたり、髪も結んできたり。すっごくいいと思う!もしかして、彼氏でも出来た?」

「えーっ、そんな!」

思わず大きな声で否定すると、周りのテーブルの人たちも興味津々で言ってくる。

「私も同じこと思ってた!急に最近女らしくなったからいい恋愛でもしてるのかなーって。」

「違います違います!恋愛なんてここずっとしてないのでっ。」

「えー、そうなの?牧野さん顔可愛いからモテると思うなー。彼氏はいつからいないの?」

もう、みんなかなり酔ってきている。

普段聞けないことをここぞとばかりに聞いてくるつもりだろうから、長引かないうちに早めに終わりにしておきたい。

「あたしの恋愛話を聞いても何も面白くないので、あははー、他の誰かの聞きましょーよ。」

そう言って、わざとらしくキョロキョロと周りを見回す振りをしてみる。

すると、木村さんが『他の誰か』として次に選んだのは、なんと道明寺チーム長だった!

「道明寺チーム長は?彼女いるんですかー?」

その言葉に、あまりお酒が入っていないメンバーは青ざめる。まさか、道明寺チーム長にそんな事を聞くなんてシラフの時ならありえないから。

でも、今の木村さんはビール4杯目で立派な酔っ払い。怖いもの無しでグイグイ道明寺チーム長に食いついていく。

「道明寺チーム長、好きな人はいますー?」

「木村さんっ」

清水チーム長もさすがに見兼ねて止めようとする。

その時だった。

「いますよ。」

と、道明寺チーム長が言ったのだ。

一瞬にしてその場が静かになる。

「いますよ、好きな人。」

もう一度道明寺チーム長が言うと、一気に、

「えーっ!いるんですかぁー!」

と、騒ぎ出す同僚たち。

「お付き合いされてどれくらいですか?」

「……付き合いはまだ」

「へ?でも、好きなんですよね?

相手には伝えたんですか?」

「返事待ちってとこなんで。」

その言葉に、今日一場が盛り上がるが、あたしはドキドキとそれどころでは無い。

道明寺チーム長の視線が痛いほどあたしに突き刺さってきているから。

「返事待ちって、いつ告白したんですか?」

「2週間くらい前かな。」

「えっ、それで返事はまだ?」

無言でコクンと頷くチーム長。

その反応に、同僚たちがため息をつく。

あたしと言えば、この雰囲気に居た堪れなくなって思わず下を向くしか出来ない。

その時、隣にいる清水チーム長が道明寺チーム長に聞いた。

「もしその女性に断られたらどうします?」

みんなが固唾を飲んで道明寺チーム長を見つめる。すると、道明寺チーム長はその質問に即答した。

「1年も片思いしてるんで、待つのはどうってことねーし。

簡単になびかないっつーか、納得しねーと動かないつっーか、そういう所に惚れたんで。まぁ、OK貰えるまでいつまでも待ちますよ。」

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