チーム長の策略 5

チーム長の策略
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月曜日。

いつもより1時間も早く目が覚めた。

出勤の支度を済ませ、玄関横の鏡に映る自分を見て、はぁーーーと大きく息を吐く。

そこに映っているのは、入社式以来5年ぶりにスカートを履き髪を耳の高さにアップしている自分。

チーム長に一昨日の土曜日、

『月曜日はスカートを履いてこい。髪はアップにな。』

と言われ断ることを許されず、結局悶々と考えた末に、次の日の日曜日にデパートへ行って何着かスカートを購入した。

不思議なもので、スカートを買うとそれに合う靴やトップスも気になり出す。久しぶりにデパートへ行くと、化粧品コーナーのリップも欲しくなる。

仕事一筋で生活してきたから、こんなキラキラした女子気分を味わうのは久しぶりだ。ウキウキした気持ちで買ってきたスカートや靴。

でも、いざそれを履いて出勤するとなると、さすがに緊張してきた。

もう一度全身が映る鏡を見ながら、あたしは大きく深呼吸をした。

営業課のフロアに入ると、すれ違う社員があたしを振り返って見ていく。

あー、きっとスカートなんて似合わないと思って驚いているんだろうなぁ。

恥ずかしさで下を向きながら営業2課に入り、いつものように、

「おはようございます。」

と声をかけると、

「えっ!えっー、牧野さん?」

と、1番若い白井くんが大きな声を出す。

その声に課のみんなが顔を上げてあたしを見た。

みんなの視線が痛い。

恥ずかしさで死ねる。

そう思っていたのに、周囲の反応はあたしの予想していたものとは違った。

「いやぁー、牧野さん可愛い!」

「髪、結んだ方が似合う〜!」

「脚細くて白いっ、羨ましい!」

あっという間に女子社員に囲まれてしまった。

「何なにー?今日はデート?」

「違いますっ!」

「じゃあ、どうしたの?いつもと雰囲気違うじゃない。」

「いや、ちょっと……、」

どう答えていいか迷っていると、

「牧野。」

と、奥からあたしを呼ぶ声がした。

見ると、チーム長だ。

「こっちに来い。」

「…はい。」

恐る恐るチーム長の方へ行こうとするあたしに、

「牧野さん気をつけて。今日のチーム長、すごい機嫌悪いから。」

と、女子社員が教えてくれる。

「え?何かあったんですか?」

「うん。1課の石田くんが担当してた案件あったでしょ。あれ、古い資料を元に見積もりを作ったらしくて、概算が大幅に合わなくなったの。先方から苦情がきて…」

そういう確認不足で起きるミスはチーム長が1番嫌うやつだ。機嫌が悪くなるのも仕方がない。

チーム長のデスクまで歩いていくと、

「おはようございます。何かお手伝いする事ありますか?」

と声をかける。

すると、あたしにチョイチョイと指で合図して自分の横に来いと指図する。

それに従いチーム長の横に回り込むと、資料が入ったファイルを見せられた。

「最終見積もりを作ったから、もう一度精査して貰いたい。」

「はい。」

「10時までには先方にメールで送るから、それまでに出来るか?」

「やります。」

そう告げてファイルを受け取ろうとすると、なぜかチーム長はあたしにファイルを手渡してくれない。

「……チーム長?」

不思議に思いチーム長の顔を見ると、他の社員からは見えないようにファイルで顔を隠した状態であたしに言った。

「朝から石田のせいでイラついてたけどよ、おまえのおかげで超やる気出た。」

「え?」

「似合ってる。」

自分の耳たぶを触りながらそう言うチーム長に、あたしは一気に顔が火照る。

なぜなら、今日のあたしの耳には昨日チーム長がプレゼントしてくれたピアスが光っているから。

「あり……がとう、ございます。」

小さくそう呟くと、

「でも、スカートは失敗か……。」

と、少し眉間に皺を寄せながらチーム長が言う。

自分で履いてこいって言っておきながら、失敗って何よ!と睨み返そうとした時、

「他の男が寄ってきそうだな。」

と、言った。

「……はい?」

「合コンに誘われても行くな。

デートかって聞かれたら、そうだって答えておけ。」

「なんですか、それ。」

今度こそチーム長が言っている意味がわからず聞き返すと、

「おまえはフラフラしてまた他の男に引っかかる危険もあるから、俺が早めにマーキングつけとく事にした。覚悟しろよ。」

と、さらに理解できないことを言った。

「牧野さん、大丈夫だった?」

「え?」

「チーム長に何か言われてたみたいだけど。」

2課の最年長である杉山さんが心配げに聞いてくる。

杉山さんは入社以来いつも気にかけてくれて頼りになる父親みたいな存在だ。

「あっ、はい、大丈夫です。」

マーキング?チーム長が言った意味はよく分からなかったけれど、あまり気にしない。

とにかく与えられた仕事をやるのみ。

パソコンを開き急ぎの案件に取り組むあたしを見て、杉山さんが笑いながら言った。

「クスクス……、とうとうチーム長が動き出したってことは、君もこれから大変になるね。」

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