あたしの彼氏は時々かなり厄介だ。
「牧野、俺のことどう思ってる?」
「はぁ?なによ急に。」
休みの日。
道明寺邸のダイニング。
お手伝いさんがあたしの前にパスタを置いてくれたその瞬間、道明寺がそんなことを聞いてくる。
何も今そんな質問しなくてもいいじゃない。
あとで自分の部屋に戻ってからでも、いくらでも時間はある。
それなのに、隣のこの人はそんなことを気にするような人ではない。
「おまえさー、いつから俺にそういうこと言ってねぇか分かってるか?」
「はぁ?」
「俺が10回言っても、おまえからは見返りが全くねえ。」
「見返りって…………。」
「どう思ってる?」
「なにがっ。」
「だから、おまえは俺のこと好きかって聞いてんだよっ!」
付き合って数年。
お互い社会人。
付き合いはじめの学生カップルじゃないんだから、お手伝いさんがたくさん見てる目の前で
「どう思ってるか?」
の質問に、答えれるはずもない。
そんなあたしの性格を知ってるはずなのに
出された料理に手も付けず、ジッとあたしを見つめてくる道明寺。
あたしはパスタを食べようとしていたフォークをガシャンとテーブルに置いて、
「ちょっとこっちに来て!」
と道明寺の腕をとりそのまま東の角部屋へと向かった。
部屋に入り道明寺のことをキッと睨むと、いつもの自信満々な俺様ではなく、まっすぐに真剣な顔であたしを見つめてくる。
もしかして、
ほんとに、
聞いてるの?
あたしがあんたをどう思ってるか、
ほんとに知りたいの?
「道明寺、急にどうしたの?」
「牧野、美容室行ってきたのか?」
「え?あ、うん。昨日ね。」
「そのワンピース、はじめて見た。」
「あー、これ?この間、安くなってたから買ったの。」
「…………はぁーーー、こっちにこい。」
そう言って大きなため息のあと、いきなりあたしを抱きしめる道明寺。
「道明寺?」
「牧野、……好きだ。」
「…………うん。」
「愛してる。」
「うん。」
あたしも好き、愛してる。
そう言ってあげたいのに、言い慣れてないあたしはこんなときでも口ごもる。
「道明寺、何かあったの?」
「…………滋が、」
「滋さん?」
抱き合ったまま話すあたしたち。
「あいつがおまえのこと、最近すげー綺麗になったって。
女は、恋するとどんどん綺麗になっていくって。
俺も思ってた。
おまえが綺麗になったって。
だから、…………、」
なんとなく言いたいことはわかった。
だからって許せない。
「だから?」
「だから、おまえに好きなやつでも出来たのかって……不安になるだろ。」
全くこの男は全然分かってない。
あたしがあんたに会うために美容室に行って、新しいワンピースを着て、二人の休みが重なるこの日を何日も前から楽しみにしてたことを。
「道明寺…………」
牧野に名前を呼ばれてギュット抱きつかれて、
これで完全に俺のスイッチが入った。
そのままこいつを抱き上げてベッドルームへ向かう。
昼間から、しかも俺の部屋で。
いつもなら絶対に許してくれないこのシチュエーションも今日は有無を言わさず押さえつける。
それほど、俺はこいつに飢えている。
そして、それほど俺は自信がない。
「いや、」だの「待って」だのを繰り返す牧野の唇を甘噛みし、服を脱がせていく。
2週間ぶりの逢瀬。
付き合って何年たっても牧野とのこの甘美に溺れていく俺。
ゆっくりと丁寧に牧野の体をほぐし、俺の体を重ねていく。
牧野の体を揺らしながら
「愛してる。」
無意識に出る俺の言葉。
そして、
「ん。道明寺…………好き。
やっ…………んっ、…………愛してる。」
うわ言のように囁かれる牧野の言葉。
普段は滅多に聞けねぇこいつの愛の囁きも、この時ばかりは甘い声で聞かせてくれる。
そして俺はそれがもっと聞きたくて腰を奥深くまで沈みこませる。
信じてないわけじゃない。
信じてるからこそ不安になる。
おまえに愛されてるだろうかと。
なぁ、牧野。
頼むからあんまり綺麗になるんじゃねぇ。
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2015年8月に書いた作品です。以前のサイトに置いてありましたが、この度移動してきました。久しぶりに読んでくだされば幸いです。
