僕らの時間 23

僕らの時間
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牧野に別れを告げられてから3週間。

諦められるわけがねぇ。

でも、現実は残酷で、着信を残してもあいつからかかってくることは未だにない。

休みの日も時間を持て余し、気づけば実家でゴロゴロ。

それには淡い期待もある。

つくしも実家に顔を出すのでは……と。

「坊ちゃん、珍しいですね。

2週連続で帰ってくるなんて。」

「……まぁな。時間が空いたから、寄っただけだ。」

「今までは時間があっても寄り付かなかったくせに。

つくしは忙しいんですか?それともどこかに行ってるんですか?」

俺とつくしの仲が当然続いていると疑わないタマは容赦なく聞いてくる。

「…………。」

「坊ちゃん?」

「別れた。」

「……はい?」

「だからっ、別れたんだよ俺たちっ。」

口に出すと、ようやく現実味を帯びてくる。

「坊ちゃん……」

絶句するタマの横で、書斎から出てきたババァも驚いた顔をしてやがる。

「司、本当なの?」

「ああ。」

「どうしてまた、」

「振られた。」

タマやババァの手前、『振った』と言った方が当然格好がつくだろーけど、あいつに対してはそんな事で見栄を張りたくねぇ。

「いつ?」

「3週間前。」

「あらあら、それはお気の毒ね。」

ババァがそう言いながら俺の目の前のソファに座り足を組み、じっと俺の顔を見る。

「納得してない顔ね。」

「うるせぇ。」

「でも、つくしさんの望み通り別れた。」

「…………。」

別れた原因が、全面的に俺なのは明白だから、牧野がNOなら受け入れるしかねぇ。

「あなたにとっては頭を冷やすいい機会だわ。

社会人になって自立した彼女から見たら、今のあなたは自分中心の我儘放題な男にしか見えないはず。」

ババァの言葉が耳に痛い。

大事だと言っておきながら、つくしを自分勝手に振り回していたのは事実だから。

そんな俺の心の内を見透かすようにババァが続けた。

「納得していないなら、もう一度トライするしかないわね。

ただし、きちんと国家試験に受かって自立してから。

じゃないと、そんな我儘だらけの坊ちゃんを彼女は認めてくれないはずよ。」

相変わらず、俺は一日の大半を病院内で過ごしている。

卒業して国家試験にパスすれば、この大学病院に就職することはほぼ決定事項。

それを知っているドクター達は、学生の俺たちをすでに研修医並にこき使う毎日。

今日も拘束時間の17時を過ぎても一向に帰らせる気は無いらしく、

「今のうちにご飯でも調達してきた方がいいよ。」

と、有難くないアドバイスを貰い、ため息が盛れる。

同期の学生たちで使うカンファレンスルーム。

そこに行くと、白石美緒や笹井といったいつものメンバーが5人ほど集まっていた。

「買い出し誰が行く?」

「何を食うかによるだろ。」

「じゃ、多数決取るぞ。

角の弁当屋かその横のカレー屋、無性に甘いもんが食いてぇからコンビニのスイーツも捨てがたいな。」

それぞれが好き勝手なことを言っている間に、俺の携帯が鳴った。

画面を見るとタマから、

「坊ちゃん、冷蔵庫におかずを入れておきましたので早めに召し上がってくださいね。」

とメール。

それを横に座っていた笹井が盗み見して騒ぎ出す。

「おっ、ナイスタイミング!

道明寺の坊ちゃん家にメイドさんからおかずの配達がありました〜。」

「マジかよ〜、そう来たらもう決まりだろ。

今日の夕飯はシェフ特性の料理だな。」

「誰が取りに行く?」

「またジャンケンか?」

俺の意見も聞かずに勝手に盛り上がる奴ら。

1ヶ月くらい前にも同じことがあった。

昼休憩でここにこいつらが集まっている時、偶然タマから午前中に届いていたメールを開けた。

すると、今日とほぼ同じ文面が。

それを見て、『シェフの料理が食いたいっ!』と言い出すこいつら。

仕方ねぇな、俺が1人で部屋で食ってもいつも余らせているから、こいつらに恵んでやるか。

その時も確かジャンケンをして、笹井が負けて俺の部屋に料理を取りに行かせた。

今日も、同じようにジャンケンで負けたヤツが取りに行くという事になり、全員で立ち上がる。

すると、その中に白石美緒もいて、

「白石はジャンケンしなくていい。」

と、座らせる。

「なんだよー道明寺くん。この間もそうだったけど、白石さんには甘いな。」

と、冷やかす男たち。

「うるせぇ、つべこべ言わずにやるぞ。

どうせ、今日もおまえが負けるんだろ?」

前回も負けた笹井にそう言うと、

案の定、

1人だけグーを出して負けるこいつ。

「笹井頼んだぞ。」

「はぁー、しょうがないな今回は行ってくるか。

病院から歩いて5分って言ってたよな、どっち側?

駅方面?それとも北側の方?」

俺からマンションのキーを受け取りながらそう言う笹井。

「前回も地図持たせてやっただろ、もう忘れたのかよ。」

呆れながらそう言うと、

こいつの口から信じらんねぇ言葉が飛び出した。

「前回は結局、白石さんが行ってくれたんだよ。

俺、行く直前で先輩に呼ばれて……。」

「……あ?おまえ今なんて言った?」

「だから、白石さんに、」

俺はそう言う笹井の胸ぐらを掴んで、

「ちゃんと説明しろっ」と思いっきり引き寄せる。

「道明寺くんっ、」

慌てて止めに入る同期たち。

「私が行くって言ったの。だから、怒らないでっ。

私だって、5分位の距離どうってことないし、特別扱いしてくれなくても、」

隣でウダウダと的外れのことを言い出す白石。

その勘違いした自信たっぷりな言動に反吐が出る。

「白石、俺はおまえを特別扱いしたことなんて1度もねーよっ。」

「……えっ?だって」

「俺の部屋に女を入れたくねーから、最初から白石は外した、ただそれだけだ、勘違いすんなっ。」

みるみると白石の表情が強ばっていく。

「それって、牧野さんが言ったの?部屋に女の人を入れるなって?

案外、彼女って束縛好きなのね。

私と会った時は表情も変えずに淡々としてたくせに。」

「あ?牧野に会ったのかよ。」

「ええ、会ったわ。私が道明寺くんの部屋から出てきた時にバッタリ。」

その白石の言葉を聞いて、俺は右手の握りこぶしを思いっきり壁に打ち付けた。

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