僕らの時間 9

僕らの時間
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それから2ヶ月後の2月下旬。

リビングでぼぉーとテレビを見ていた日曜の午後。

「姉ちゃん、今日もそうやって一日中ゴロゴロして過ごすつもり?」

「…………。」

何も言い返さないあたしに、

「まだ道明寺さんと喧嘩中なの?」

と進が呆れたように笑う。

「喧嘩なんてしてないしっ。」

「いつも一緒に居るのに、最近全然いないじゃん。」

「それは、あいつが受験で忙しいから……」

「ふーん。

……そういえば、道明寺さんNYに行くらしいね。」

「……ん。」

「来週って言ってたかな」

「えっ?来週?!

誰が言ってたの?」

「道明寺さん。この間、学校帰りに会った時そう言ってた。荷造りしてるって。」

あたしは何も聞いていない。

それどころか、最近会ってもいなかった。

受験シーズン真っ只中に入り学園に行く日も限られてきて、あたしみたいにエスカレーター式に英徳大に進学する人は、もう登校もしていない。

道明寺はと言うと、1月の下旬に試験を受けたことは聞いていた。けれどまだ合格通知はきていないとばかり思っていたのに。

進がまだ何か言いたそうにしていたけれど、あたしは

「ちょっと行ってくるっ」

そう言って玄関まで駆け出した。

その背中に、

「いい加減、早く仲直りしておいでよ。」

と、進の声が響いた。

…………

道明寺家の階段を駆け上り道明寺の部屋の前まで来ると、あたしはひとつ深呼吸をしてから扉を開けた。

机に向かってパソコンを操作していた道明寺は、あたしの顔を見て、「おう。」と一言だけ言い、またパソコンに目を戻す。

こうして2人きりになるのは久しぶりだ。

毎年恒例の年末カウントダウンも初詣もバレンタインも今年は『受験生だから』という理由でやらなかった。

でも、本当の理由はそれだけじゃない。

去年まではなんの疑問も持たずに2人でしてきた事が、今のあたしにとってはそうではなくなった。

道明寺を異性として意識せずには居られなくなったから。

「どした?」

パソコンに向かいながらあたしに声をかける道明寺。

部屋の中央には大きなスーツケースが2つ広げられ、そこには服や本が並べられている。

「……NY、いつ行くの?」

「来週の水曜。」

NYの大学を受けることも言ってくれなかったし、NYへ旅立つ事も結局あたしには何も言ってくれない。

その事に胸がズキズキと痛み涙腺が緩みそうになるのを必死に抑えながら、あたしは道明寺の背中に向かって言った。

「あたし達のことはもういいの?」

すると、道明寺がゆっくりと振り返りあたしを見て言う。

「俺たちのこと?」

「ん。どうしてNYに行くってあたしにはちゃんと言ってくれないの?」

「…………」

「道明寺が言ったんじゃん、受験が終わったらもう一度きちんと話そうって。

それなのに、何も話さないままNYに旅立つなんてっ」

「牧野、」

「それが道明寺の答え?あの日あたしに、……す、好きって言ったこと、忘れた?それとも……無かったことにしたい?」

あたしはあの日以来、頭が壊れそうなほど考えて考えて考えまくった。

それなのに、この人は何もなかったようにNYに旅立とうとしてるなんて。

「もう、どこにでも行っちゃえ。」

下を向きそう小さく呟くと、

道明寺がクスっと笑いあたしの事を指でクイクイと呼び寄せる。

昔から道明寺があたしを呼ぶ時の癖。

今までは文句を言いながらもそれに従って道明寺の側に行っていたけれど、今日はその仕草が甘く感じて頬が火照る。

「来いって。」

「行かないっ」

「俺から行くか?」

「……。」

今この火照った頬を道明寺には見られたくない。

そう思ったあたしは、道明寺のそばまで大股で近づくと、座っている椅子をくるりと反転させ道明寺をパソコンの方へ向かせる。

そのあたしの行為にまたクスっと笑いながら、

「準備は出来たのかよ。」

と、聞いてくる。

「え?」

「俺の告白に対する答え。準備出来たのか?」

視線は合わせていないけれど、背中越しに堂々とそう言われ、ドキドキが止まらない。

「……ん。」

「フゥー……で?俺たちどうする事になった?」

「つ、……付き合ってみる?」

消えそうな小さな声でそう伝えると、クイっと顔だけあたしの方に向けた道明寺は、

「ここに一筆書け。」

と、言う。

「はぁ?」

「おまえ、後になってやっぱ辞めたとか言い出すだろ。だから、今のうちにここに、牧野つくしは道明寺司の彼女になりますってちゃんと書け。」

「何言ってんのあんた。」

あたしは後ろから道明寺の頭を軽くペシっと叩くと、今度は道明寺があたしの身体を掴み、引き寄せる。

机と、道明寺が座る椅子の間に挟まれたあたし。

そして、道明寺が言った。

「牧野、いいもん見せてやるか?」

「ん、なに?」

「これ。」

あたしに英徳大のロゴが入った封筒を手渡す。

中身をチラッと見てみると、数枚の書類が入っている。

それを引き出して、1番上の紙を読んだあたしは、

「……どういうこと、これ。」

と、道明寺に聞いた。

「合格通知書。」

「それは分かるけど、」

「遠距離は無理だろ俺たち。」

あたしの手にある紙には、

『英徳大学 医学部 道明寺司』

と書いた合格通知書がある。

「英徳大に通うのっ?」

「ああ。」

「なんでっ?どうしてっ?NYは?」

「行かねーことにした。」

「はぁ?行かないって……。っていうか、あの荷物は?」

部屋の中央にある大きなスーツケースを指さしながらそう聞くと、

「あー、とりあえず受験も終わったし、来週から2週間親父たちの所に行ってくる。」

と、シレッと言い放つこの人。

「……進のバカ。」

「いい仕事してくれたな弟。」

色んなことが一気に押し寄せて頭の中を整理できない。

「とりあえず、帰る。」

部屋に戻って落ち着きたい。

そう思い、道明寺から離れようとしたあたしを、

「まだ、帰るな。」

そう言ってホールドしたあと、

「署名と捺印していけよ。」

と、甘い顔で言った。

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