僕らの時間 7

僕らの時間
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あの日以来、俺たちの関係はギクシャクしている。

登校時間を早めたり、学園でも会わないようにしたりと、俺はつくしに完全に避けられている。

それで、落ち込んでるか?

いや、逆にむしろスッキリした。

長年抱いていた『幼なじみ』の呪縛から解き放たれたのだ。

キスをしたのは俺の失態だけど、そのおかげでつくしの気持ちを知ることが出来た。

『信じらんないっ』

そう言って俺の胸を押し返したあいつ。

完全に拒絶されて俺の初恋は終わった。

そうなれば、あとは勉強に打ち込むだけ。

NYの大学の受験まではあと3ヶ月を切っている。

愛だの恋だの言っている場合じゃねぇ。

そんなある日、自室で勉強していると、コンコンとドアがノックされた。

「タマです。坊ちゃんちょっといいですか?」

いつになく神妙な顔つきで部屋に入ってくるタマ。

そして、

「坊ちゃん、タマはもしかしたら大変なことをしてしまったかもしれません。」

と言う。

「あ?」

いつも俺をドヤしつけてるタマがこんな事を言い出すなんて珍しい。

「なんだよ、急に。」

「実は、今つくしが来たんです。」

「うちに?」

「千恵子さんが漬けたお漬物を届けに来てくれたんですけど……、」

「けど?」

「タマはつい口を滑らせてしまって、坊ちゃんが受験勉強に励んでいると話してしまいまして。」

それの何がいけないのか……疑問に思った俺に、タマは申し訳なさそうに言った。

「つくしにはNYの大学を受験する事、言ってなかったんですね?」

そのタマの言葉で、全てを理解した俺。

「つくしに言ったのか?」

「はい。」

「あいつは?」

「すごく驚いて、そして……悲しそうに帰って行きました。」

「…………」

つくしには、留学の事を言うタイミングを逃してしまった。

気になってはいたけれど、俺たちの今の関係で伝えるべきなのか迷いもあった。

「坊ちゃん、すみません。」

謝るタマに、

「タマは悪くねぇ。

俺がつくしにきちんと話す。」

そう言って、窓から見えるつくしの部屋の明かりを見つめた。

………………

「少し話せるか?」

こうしてメールを送るのはいつぶりだろう。

そう思い履歴を見てみると、それはあのキスをした日以来だった。

でも、今日は既読になったまま返信が無い。

30分待っても返事はなく、もう一度、

「今、話したい。」

と、送ってみる。

すると、数分たったあと既読になったものの、まだ返信が無い。

痺れを切らして俺は自室を出た。

時間は21時を過ぎている。

隣の牧野家のチャイムを鳴らし、千恵子さんに『遅くにごめん。』と謝りながら、つくしの部屋までの階段をかけ上がった。

「入るぞ。」

そう言ってノックもせずに開けると、

予期していたのか、じっと俺を睨みつけるつくし。

その目が赤く染まっているところを見ると、泣いたのだろうか。

ソファを背にして床に座るつくしの隣に、俺も無言で座ると、

「いつから?」と、つくしが小さな声で言った。

「ん?」

「いつから決めてたの?NYに行くこと。」

「3年になってから、親父と相談して決めた。」

「そんなに早く……」

そう言ってグスンと鼻をすする。

「なんでおまえが泣くんだよ。」

「あたしには何も教えてくれないんだもん。」

「知りたかったのかよ。」

「知りたいに決まってるでしょ。」

当たり前のようにそんな事を言うこいつに、俺は少し意地悪をしたくもなる。

「散々、俺のこと避けてただろ。」

「それはっ……」

「俺がNYに行って、せいせいすんじゃねーの?」

つくしを見つめて笑いながら言ってやると、俺の頭を思いっきり殴ってくるバカ。

「いてぇーな。」

「ふざけてあんな事した罰。」

あんな事とはキスのことだと言うのは分かる。

でも、ふざけてなんかじゃねぇ。

「おまえの同意を得ずにした罰なら甘んじて受けるけど、ふざけてした罰は受けねぇ。」

「なによそれ。」

「俺はふざけた覚えはねーよ。」

俺の顔を見つめて固まるつくしは、きっとこの言葉の意味を理解してないだろう。

でも、ここできちんと伝えないと、俺はたぶん一生『幼なじみ』から抜け出せない。

「俺はおまえが好きだ。」

「……好きって、」

「もちろん、異性として。」

この言葉の意味をやっと理解したのか、みるみる頬が赤くなるこいつ。

それが、ようやく俺を男として見始めた証拠だ。

「つくし、お互い受験が終わったら、もう一度この事について話そうぜ。

それまでゆっくり考えておいてくれ。」

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