こういう恋の始まり方 12

こういう恋の始まり方
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アリーナの日本での生活が始まり、私も何かとサポートする機会が増えた。

仕事だから…と言えばそうだけど、彼女といる時間が純粋に楽しくて苦ではない。

先日の会食時に、アリーナの専務への好意を知ってしまった。

驚いたけれど、今思えば確かにそんな兆候はあったかもしれない。

父親の仕事の補助をしているとはいえ、会食や会議には必ずアリーナも同席していたし、フランスへ帰国する時はかなり名残惜しそうに専務と抱擁していた。

恋愛に鈍感な私は気づかなかったけれど、専務はもしかしたらもう既にアリーナの気持ちに気づいているのかもしれない。

専務もアリーナに気があるのか?

サポート役としては2人をくっつける方向で持っていくべきなのか?

いや、でも、あたしと専務は、そのぉー、一夜を共にした仲であって、そんな相手を若くて将来有望なアリーナに勧めるのもどうなのか?

そんなことを考えると、頭の中がぐちゃぐちゃになり、「もう、どうにでもなれっ!2人の事は2人にしか分からないんだから、あたしがごちゃごちゃ考えることでは無い!」と諦める。

そんなある日、仕事が一段落してそろそろ帰宅しようかと思っていたあたしの携帯が短く鳴った。

画面を見るとアリーナから、

「つくし、ディナーに行かない?」とお誘い。

時計を見ると18時半。

お腹はもちろんペコペコなので、「いいですね〜、もちろんOKよ。」と即答。

すると、すぐに、

「前に行った、天ぷらのお店に行きたいわ。1時間後にお店で待ち合わせましょう。」と。

会社から程近いところに天ぷらが美味しい和食屋がある。

全て個室でゆっくり気兼ねなく食事ができるので、アリーナと2度ほど行ったことがあり、和食好きな彼女のお気に入りのお店。

1時間後なので時間があるからもう少し仕事をしてから行こうか…と思ったが、本屋に寄ってから行くことにしてあたしは帰り支度をして秘書課を出た。

エレベーターが下りてくるのをぼぉーとしながら待っていると、横にスっと人の気配がして慌てて顔を上げると、専務が立っていた。

「今、帰りか?」

「あっ、はい。」

「はぇーな。」

時計を見ながらそう呟く専務。

まだこれから仕事が残っている上司を横目に、そそくさと帰るのは気が引けるが、

下りてきたエレベーターの扉が開くのを確認して

「お先に失礼します。」

とあたしは頭を下げた。

そして、エレベーターに乗り込もうとした時、専務に腕を掴まれ

「牧野、食事にでも行かねぇ?」

と、予想もしない言葉を投げかけられた。

驚きで固まるあたしの目の前で、せっかく止まったエレベーターが閉まりまた動き出す。

「30分で仕事終わらす。飯、食いに行こーぜ。」

「え、あー、」

この後、アリーナと約束が…と断ろうとしたあたしは、ふとある事を思いつく。

そうだ、これは2人を近づけるチャンスかもしれない!

先日の会食以来、2人は仕事の接点もないので会っていないはず。

アリーナはことある事に電話で専務の事を聞いてくるので、会うチャンスを狙っているのは間違いない。

ならば、今日、専務も誘ってご飯に行き、頃合いを見て途中であたしは退場すればよい。

名案を思いついたあたしは、専務を見上げて、

「いいですよ!ご飯行きましょう。」

そう告げると、

「マジ?オッケっ、残りの仕事すぐに終わらすっ。

場所は任せる、先にむかっててくれ。」

そう言って、自室のオフィスへ駆け出していく。

「あっ、あのっ、専務…」

あたしがその背中へ向けて叫んでも遅く、専務の身体は扉の向こうへ消えていった。

アリーナも一緒だということを伝えきれなかったけど、仕事ではなくプライベートだし、特に問題は無いだろう。

エレベーターへ乗り込んだ後、あたしは天ぷら屋の住所を専務の携帯へと送信した。

……………

仕事をマッハで終わらせて、牧野から送られてきた店へと着いたのは19時半を少し過ぎていた。

店の中へ入ると、店員がすぐに奥の個室へと誘導する。

そして、襖を開けた先に見えたのは……、

牧野ではなく、なぜかアリーナの姿だった。

驚いて動きが止まる俺に、

「司、おつかれさまです。」

と、少しアクセントの違う日本語でアリーナが言う。

「…アリーナ、どうして?」

そう呟いた俺の背後から、今度は綺麗な日本語で

「専務、お疲れ様です。」

と、牧野が登場した。

この状況が飲み込めなくて牧野の顔をじっと見つめると、

「あっ、今日はアリーナと食事の約束をしていて、専務も仕事が早く終わるとの事だったので、それなら3人で…と。天ぷらで良かったですか?」

と、俺に奥の席をすすめながら言う。

それならそうと、早く言えよ。

2人で食事すると思って柄にもなくドキドキしながら来たんだぞ。

おまえと食えるなら天ぷらでもなんでも構わねーし。

という文句は、アリーナの前で言えるはずもなく、この鈍感女を目の前にして盛大なため息を押し殺した。

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