こういう恋の始まり方 11

こういう恋の始まり方
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土曜日。

今日はアリーナとの会食の日。
専務も一緒に…という彼女の希望で、場所は楓ホテルの最上階にあるフレンチレストランを西田さんが予約した。

約束の時間の30分前に到着したあたしは、夜景が見える席の配置や、お酒が飲めないアリーナにも喜んで貰えるようなドリンクを入念にスタッフと打ち合わせ、準備万端で19時を迎えた。

レストランに先に到着したのはアリーナよりも専務の方だった。

「お疲れ様です。」

頭を下げると、

「おう。」
と、言う専務の左手には昨日買ったぬいぐるみの紙袋。

アリーナの喜ぶ顔が楽しみだ。

「食後にバースデーケーキを用意しています。プレゼントもその時に専務からお渡し下さい。」

「わかった。」

「それまではスタッフがお預かりしておきます。」

専務から紙袋を受け取ると、ホテルのスタッフへ手渡しにいく。

その時、レストランの入口に黒いドレスを着たアリーナが目に入った。
専務も同時に気づいたらしく、すぐに出迎えに行く。

1ヶ月ぶりに会うアリーナは相変わらず綺麗だ。
あたしをみるなり、嬉しそうに抱きついてくる。

「つくし、会えて嬉しい!」

「アリーナ、私もよ。」

フランス語を話すのも久しぶり。

1番夜景が綺麗に見える席にアリーナを案内し、早速準備しておいたドリンクを出す。

「パパからようやく日本に行くことを許してもらえて、ほんと嬉しいの。これから半年間、思いっきり楽しむわ。」

「ラファエルはお元気ですか?」

「はい。司のことはいつも話してます。俺にもあんな息子が欲しかったって。」

「いるじゃないですか、立派な息子さんが。」

「兄は立派なんかじゃないわ〜。相変わらずゴルフばかりしています。」

専務とアリーナの会話も弾む。
政府機関の研究員で優秀なアリーナの兄は、趣味がゴルフだということは有名だ。

「今度司とも一緒にゴルフをしたいって言ってました。」

「ぜひ、喜んで。お兄さんにお伝えください。」

和やかな雰囲気の中で食事は進んでいった。
そして、あとはデザートだけ…という所で、アリーナがあたしに

「つくし、メイクルームはどこかしら?」と耳打ちしてきた。

あたしはにっこり笑い、
「一緒に行きましょう。」と席を立つ。

レストランを出た先に女性専用のパウダールームがある。
そこへ入っていくアリーナの後ろ姿を見ながら、あたしは溜め息が漏れた。

後ろが大胆に開いたドレスから見える白い肌。綺麗に巻かれた長い髪。動くと微かに感じるフローラルな香水の香り。

同性でもウットリしてしまうほど美しい。

そんな彼女にあたしは素直にそのままを伝える。

「アリーナ。なんだか一段と美しくなりましたね。」

「え?そう?」
嬉しそうにはにかむ。

「今日のドレスもとても似合ってるわ。」

「ほんと?良かった!
ドレス選びに何週間もかけたのよ。」

「何週間も?」

スタイルもよくファッションに興味もある彼女だから、もともと身につけるものはとてもセンスが良い。
いつもお洒落なのは知っていたけれど、今日のアリーナは今までとは違う大人の雰囲気をまとっている。

「1ヶ月会わないうちに、なんだかすっかり大人っぽくなったみたい。」

「ふふふ…。つくしが言ってくれるんだから、失敗じゃないわよね。」

そう言って、なぜか照れくさそうにあたしを見る。

「失敗?」

「ええ。つくし、私ね、実は……」

「ん?」

「この1ヶ月間、ダイエットもスキンケアも頑張ったの!」

「ほんとー?」

「司に綺麗だって言ってもらいたくて。」

「……。」

すぐにその言葉の意味を理解出来ずに固まるあたしに、さらにアリーナは続ける。

「日本への留学も、実は司ともう少し一緒に居たかったからなの。パパにはその事は内緒だけど。」

リップを塗り直しながらそう言うアリーナに、思わず聞き返す。

「えっ、えっ、だって、アリーナ!
フランス人の彼氏は?」

「あー、あれ?別れたの。」

「へぇー!」

驚きで素っ頓狂な声が出る。

「あんなにラブラブで、いつも電話で愛してる〜なんて言ってたじゃない!」

「やだっ、つくし。あんなのフランス人なら普通よ。」

「…そなの?」

恋愛なんてまともにしたことが無いあたしにとって、あれが普通だと言われると頭が痛い。

「司の紳士的でクールなところが好きなのよね。思い切って今夜部屋に誘っちゃう?」

ウインクしながらそう話すアリーナにあたしはなにも言い返せない。
なぜなら、専務相手に同じようなことをした過去があるから。

「さぁ、戻りましょうつくし。」

「ん、…うん。そうね。」

頭の整理がつかないまま専務が待つテーブル席へと戻ると、その数分後、店内の照明が程よく落とされ、バースデーソングがゆっくりと流れ始めた。

それと同時に、ケーキが運ばれてきてアリーナの表情が驚きに変わる。

「お誕生日おめでとうございます。」

店内のあちこちから祝福の声。
それに微笑みながら、ロウソクを吹き消す彼女。

そして、専務が紙袋を手渡した。

「えっ、嬉しい!ありがとうございます。
開けてみてもいいかしら?」

「もちろんです。」

紙袋をそっと開けると、一気に目を輝かせる。

「これっ!日本限定のよね?
私が欲しいって言ってたやつ!」

アリーナの顔の2倍くらいある大きさのそのぬいぐるみを愛おしそうに眺めて、「嬉しい」と連呼する彼女はやはりまだまだ幼くて可愛らしい。

ほんの少し目を潤ませながら、
「つくしが選んでくれたのよね?」
と、あたしとの会話を思い出し聞いてくる。

「プレゼントは何がいいか聞かれましたのでそのぬいぐるみを提案させて頂きましたが、実際にお店に並んで購入したのは専務自身です。」

あたしがそう説明すると、アリーナはまた一段と嬉しそうに笑った。

「司、ありがとう!一生大事にするわ!」

そう言ってアリーナは立ち上がり、専務の席へ移動すると、専務をギュッとハグし、そのあと両頬にチュとキスをした。

そんな2人をあたしはこちら側から眺めながら思う。

『この美男美女の2人。今までそんな風に思ったことなかったけれど、確かに相当お似合いなのは間違いないわ。』

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