1ヶ月後、俺とつくしとタマの京都旅行が始まった。
日程は2泊3日。
ホテルはババァが手配して、京都市内のど真ん中にある楓ホテルを予約。
プレミアムツインの部屋を隣同士で2部屋取り、タマとつくしは同部屋で俺は1人で使うことになった。
一日目は、つくしの要望で和菓子屋や、抹茶屋、漬物屋といった京都らしい店を周り買い物三昧。
タマもそれにニコニコしながら付いて歩き楽しそうだ。
両手に買い物袋をさげ、ちょこちょこと動き回るつくしに、
「買いすぎだろ。」
そう言って荷物を奪い持ってやると、
「ママとパパ、進、そして楓さんのお土産は買ったでしょ。あとは、優紀と、学校の友達か、あっ、バイト先のおかみさんにも買わなくちゃ!」
と、次の店へ早歩きで入っていく。
まったく、せっかく京都まで来たのに、他人の土産を買うことに必死なつくしに苦笑しながら、タマの目を盗んで耳元で言ってやる。
「おまえは欲しいもの、ねーのかよ。」
すると、「え?」とキョトンとした顔で見上げるこいつ。
「他人のことばっか考えてねーで、自分の欲しいもの探せ。」
「あたしの?んー、特にないなぁ。」
「俺が買ってやる。」
「えっ、いーよ。欲しいものがあったら自分で買うし」
「おまえなぁ、」
「…なによ」
「少しくらい彼氏らしいことさせろよ。」
そう言うと、急にキョロキョロと辺りを見回すこいつ。
そして、
「ばかっ、タマさんに聞こえたらどうすんのよ」
と、俺を睨んでくる。
「タマなら向こうの店に行った。」
「旅行中、バレるようなことしないでよっ」
「分かってる。けど、少しならいーじゃん。」
「だから、その考えがダメだっつーの!」
俺的にはいつバレても構わねーけど、つくしが言うには、
もし旅行前にバレたら、ババァが俺も同行することを許さないだろうと言う。
確かに、俺が不純な動機で付いていくと分かれば。ババァはストップをかけるかもしれねーし、そうなる事は俺ももちろん望まない。
だからつくしの言う通り、今日までタマやババァ、千恵子さんにはバレないように慎重に行動してきたのだ。
「ね、分かった?」
俺を見つめて念を押すつくしに、
「しゃーねーな。我慢してやるよ。」
と、言ってこいつの頭をガシガシと掻き混ぜてやった。
日中はつくしの買い物に付き合い、夕方からはタマの観たかった舞台を観劇し、その後はホテルで中華のフルコースを堪能すると、あっという間に時間は21時を過ぎた。
初日からハイペースで動いたせいか、3人ともクタクタに疲れている。
部屋のある階にたどり着くと、
「坊ちゃん、今日はお疲れ様でした。
湯船に浸かってゆっくり休んでくださいな。」
と、タマが言う。
「おう。
明日は8時に朝食だな。」
「はい、おやすみなさい。」
そう言って、それぞれの部屋に別れて入っていく。
その時に、チラッとつくしに視線を送ると、あいつも俺の方を見て、タマにバレないように小さく手を振っている。
その仕草だけで、疲れも吹っ飛ぶほど俺はつくしにメロメロだ。
部屋に入ると、まずは風呂の準備をしながら持ってきた荷物を片付ける。
明日はタマが京都観光に行きたいと言っていた。
そのために、わざわざ最新の観光スポットが載ったガイドブックまで買ったくらいだ。
風呂のお湯が溜まるまでその本でも見ていようか…と思いながら手荷物の中を探っていると、入れたと思っていた場所に本がない。
忘れてきたか?
いや、来る直前にタマに渡したはず。
もしかしたら、タマの荷物に入っているかもしれない。
そう思い、俺は部屋を出て、隣のつくしとタマの部屋をノックした。
少しして、ゆっくりと部屋のドアがあき、つくしが顔を出す。
「道明寺、どうしたの?」
「入れたはずのガイドブックが俺の荷物にねーんだ。タマのところにないか?」
「あー、あの本?」
首を傾げながら俺を部屋に入れるつくし。
「タマは?」
「お風呂に入ってるの。」
つくしが言うように、バスルームからは水音が聞こえている。
「タマさんに聞いてみようか?」
バスルームを見ながら、つくしがそう言うが、
急いで見る必要もないし、行く場所も予め決めている。
「いや、いい。
明日、朝食時に持ってきてくれって伝えてくれ。」
「ん。分かった。」
コクンと頷くつくし。
その顔を見て、俺はフッと笑みがもれる。
「…化粧、取ったのか?」
「…ん。顔だけ先に洗ったの。」
「なんか、子供みてーじゃん。」
「失礼なっ、」
元々、くっきりとした二重に漆黒の瞳と白い肌。
メイクは濃くなくても十分に見栄えはする顔立ちのつくし。
でも、大学生になってからは、周りと同様、薄いアイメイクとピンクのリップを付けるようになった。
その薄いメイクが色っぽくて、内心ドキドキしていた俺。
でも、こうしてメイクを落とした素肌のつくしは、いつもより少しだけ幼くて、そんなこいつに触れるのは何故だか悪い事をしているようでもっとドキドキする。
バスルームからはタマが使う水音がする。
そして、そこと壁1枚隔てただけのスペースで、俺はつくしを引き寄せて唇を重ねた。
「ンッ…クチュ……道明寺っ」
「ハァ……やっとおまえに触れられた。」
「タマさんが来たら……、」
「うん、もうやめる。」
そう言いながらも、なかなか離れられない唇。
一日中、我慢したんだから、もう、色々と限界が来てる男心の機微を分かって、これくらい許してくれ。
その思いも込めて、
多分、今までで1番濃厚でイヤらしいキスだと思うほど、つくしの舌に唾液をからませ口内を犯していく。
しばらくして、唇を離すと同時に、バスルームからの水音が消えた。
テカテカと光るつくしの唇を見ながら、
「フッ……ごめん。」
と、一応謝ってやると、
「バカっ、笑い事じゃないっ。」
と、全然威力のないパンチが胸にあたる。
そのつくしの腕を掴みながら、俺はやっぱり笑いながら言ってやる。
「今ので今日一日の疲れが吹っ飛んだ。
充電、サンキュー。」
「充電って…」
「早く寝ろよ。じゃあな。」
まだ何か言いたそうなつくしを置いて、俺はそそくさと自分の部屋へ戻る。
でも、その後、後悔した。
さっきのキスが仇となって、ベッドに入ってからも俺はなかなか寝付けなかった。
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