「おせーぞ。どこウロウロしてたんだよ。」
そう言って、不機嫌そうな表情の道明寺先生が目の前にいた。
「心配したんだぞっ。」
「道明寺先生っ。
どうして、ここに?」
「総二郎から、おまえが探してたって聞いて待ってた。」
「何度も電話したのに……」
「総二郎のヤロー、プライベート用の番号を教えたらしいけど、今日は仕事用の携帯しか持ってなかったんだよ。
ここに来れば会えるかと思ったのに、全然帰って来ねーし。」
まだ少しだけ不機嫌そうな道明寺先生だけど、こうして会いに来てくれた事が嬉しい。
3年ぶりの道明寺先生にあたしは緊張しながら言った。
「コーヒーでも飲んで行く?」
「…おう。」
……………
マンションの部屋に入ると、あたしはカバンを置いて急いでお湯を沸かしにキッチンへと向かった。
その間、道明寺先生は付き合っていた頃と同じように、ソファに腰をおろしてスーツの上着を脱ぐ。
静かな部屋にお湯が湧くシューーーという音だけが響き、なんだか緊張が増してきたあたしは、慌ててリビングへ行き、テレビを付けた。
インスタントのコーヒーを淹れ、それを両手に持ち道明寺先生が待つリビングへ行くと、
「星稜高校に茶道部が出来たんだな。」
と、道明寺先生が言った。
ソファの下に腰を下ろして、
「そうなの。まさか、星稜高校にね。」
とあたしは答えた。
「部員数は?」
「6人。
そのうち3人はラグビー部にも所属してて、」
「あー、それであんなに体がデカい奴らなのか。」
そう言って笑う道明寺先生に、
「…ステージから見えたの?」
と、あたしは聞く。
「ああ。」
「凄いね、よく見えたねあそこから。」
「ずっと下向いてる奴がいるなぁと思ったら、おまえだった。」
涙を堪えるために下を向いていたあたし。
それがかえって目立っていたのかもしれない。
「突然、道明寺先生が現れて驚いちゃった。
ゲストで来るなんてどこにも書いてなかったし…。」
「あー、まぁな。総二郎に強引に駆り出されたからな。」
西門さんが、お茶会を盛り上げるために考えたサプライズ。
それは、道明寺先生との思い出を鍵のかかった箱に閉じ込めていたあたしにとって、素直になる最後のチャンスになった。
箱はもう開いてしまった。
あとは、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていた想いを解放するだけ。
「会えて…嬉しかった。」
「ん?」
「会いたかったから、すごく。」
あたしがこんな事を言うキャラじゃないのは、道明寺先生が一番知っているから、驚いたような顔をした後、あたしの頭をクシャっと撫でた。
「なんだよ、3年会わねーとずいぶん素直になったじゃん。」
触れられた箇所が熱い。
もっと触って欲しいなんて、バカみたいな欲が出る。
だからあたしは、立ち上がるとソファに座る道明寺先生の隣にドカっと腰を下ろして、言った。
「道明寺先生、今付き合ってる人は?」
「あ?」
「彼女はいます?」
これを聞かないことには始められない。
「なんだよ、それ。」
「いーからっ!彼女は?」
「いねーけど。」
その言葉を聞いて、あたしは一つ大きく深呼吸をしてから、道明寺先生を真っ直ぐに見つめて言った。
「道明寺先生っ。
今からあたし、道明寺先生に告白しますっ。」
「…牧野?」
「好きです。すごく好きなんです。
道明寺先生と別れて、辛くて悲しくて後悔して、何度も忘れようと頑張ったけど、やっぱり無理で。
あたし、世界一、道明寺先生が好きです。
もう一度、あたしと付き合ってみませんかっ?」
一気に言った後、あとから顔がじわじわと火照ってくる。
すると、道明寺先生も少しだけ顔を赤くして視線を逸らしながら
「告白しますって宣言してから好きだって言う奴初めて見た。」
と、笑う。
「あ…確かに。
あたし、告白するの初めてなんで。」
「初めてにしては、強烈な告りだな。」
あたしの顔を覗き込むようにしてからかう道明寺先生。
久しぶりに近くで見る彼の綺麗さに、ドキドキと心臓が痛い。そんなあたしとは逆に、道明寺先生はコーヒーを一口飲んで余裕の表情。
「とにかくっ、猛烈に好きなので、考えてみてくれませんか?」
「…友達からって言うのは?」
「嫌ですっ。」
あたしの即答にクスッと彼は笑い、
「友達以上の感情がまた戻ってくるか、わかんねーのに?」
と、痛い言葉と共にあたしを真剣に見つめる。
「はい。
あたしはこんなに好きだから、…友達にはなれない。
恋愛対象として見てください。
好きになって貰えるように、最大限努力するから。」
初めての告白は、型破りで自分勝手なものになってしまったけれど、
ここまで好きだという想いをぶつければ、もう後悔はしない。
「少し考えさせてくれ。」
「うん。」
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コメント
道明寺が返事を待たせるなんて‥何か理由があるのだと確信してます
早く続きが見たいなー
司っ!もったいぶってる!
こんな展開は珍しいからって!