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いつものように10時を少し過ぎた頃、邸に戻った俺をエントランスで使用人たちが出迎える。

頭を深く下げて
「おかえりなさいませ。」
という使用人たちに、特に目を向けることなく通りすぎようとしたその時、
一番最後尾に並ぶタマの隣に、見覚えのある小せぇ体。

「司にぃちゃん、おかえりっ。」

「っ!宗太、どうしたおまえっ。」

相変わらず生意気そうなこのちいせぇガキは、俺の甥っ子の宗太。
そう、姉貴のとこの子供だ。

「司にぃ、おかえりなさいって言われてるんだから、挨拶ぐらいしたら?
それに、ポケットに手を入れて歩くのはダメなんだよ。」

やっと小学生になった6才のガキのくせに、口だけは達者でどうしようもない。

「うるせぇ。
ガキはさっさと寝ろ。」
俺がそう言ってやると、口を尖らせて、

「これから病院に行くんだ。」
と言う。

「病院?おまえ具合悪いのかよ。」

「違う。ママがこれから入院するんだって。」

NYに住んでいる姉貴は、今二人目を妊娠中。
あと数ヵ月で生まれる予定で、出産は日本ですることになっている。

「もう、生まれるのか?」
宗太の隣に立つタマに向かってそう聞くと、

「それが……、切迫早産の危険があって、急遽帰国して入院することになったんです。
先程、楓奥さまがお戻りになりましたので、これからご一緒に病院に付き添われるそうです。」

そのタマの言葉を聞いている宗太の顔が不安そうに歪んでいく。
そんなこいつの頭を撫でてやり、
「おまえも付いていくんだろ?
姉貴のこと頼んだぞ。」
そう言ってやると、

「わかってるっ。」
と、いつもの生意気な宗太に戻り、俺は笑いながら自分の部屋へと戻った。

「えっ、お姉さん大丈夫なの?」

「ああ。出産までは入院することになったけど、腹の子供は元気らしい。」

「そう、よかった。」

結局、あのあと姉貴はそのまま入院となり、残りの2ヶ月は病院で安静に過ごすことになった。

「宗太くんは?どうするの?」

「産後もしばらく日本にいる予定だから、宗太もこっちのインターナショナルスクールに半年だけ転入することにした。」

「へぇー、じゃあ、邸は賑やかになるね。」

「ったく、ガキ一人増えただけなのに、ババァもタマも振り回されてひでぇぞ。」

「あははは。」

3日ぶりに聞く牧野の声が、俺の体に染み渡っていく。
もう何年もこうしてこいつと付き合っているのに、いつも純粋に愛しく思える大事な女。

「牧野、」

「ん?」

「今度いつ会える?」

「んー、週末はゆっくり休めそうだから道明寺が空いてるなら、」

「じゃあ、土曜日の午後から月曜の仕事に行く時間まで何も予定入れるなよ。」

「フフ…………りょーかい。」

今年で27歳と26歳になった俺たち。
出会ったのが十代だから、もうかれこれ8年近くは一緒にいる。
その間、色々なことがあったけど、今はこうして誰に反対される訳でもなく、交際を続けてこれている。

ババァから交際の許しを得たすぐの大学時代は、早く結婚をしたくて堪らなかったが、弁護士を目指して頑張ってる牧野のためを思ってなんとか我慢した。

その後、晴れて試験に合格した牧野は司法修習生としてハードな生活に追われ、その頃俺も同じく日本支社長に昇格して忙しい日々を送っていたため、プライベートよりも仕事優先の日々が続き結婚のタイミングを逃してきた。

そして、ここ最近はお互い仕事も落ち着いてそろそろ……と環境は整っているのだが、恋人、強いて言えばパートナーとしての位置が確立してしまった今、何かのきっかけがない限り、牧野の生活を変えさせることに抵抗がある俺は、ここ2年近くは結婚の話を切り出せずにいた。

そんな俺たちの関係が、姉ちゃんの入院と邸で一緒に暮らすことになった宗太のおかげで大きく変わることになる。

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