チーム長の策略 26(最終話)

チーム長の策略
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1年後。

寒さが厳しい3月の夜、2課のメンバーは会社から10分ほどの所にある居酒屋に集まっていた。

普段使う大衆居酒屋とは違い、今日は少し高くてオシャレな所。

なぜなら、今日は杉山さんの退職祝いの宴だからだ。

「居酒屋なんかじゃなくて、もっと高級なお店を予約すればいいのにね〜。」

と、隣に座る先輩があたしにコソッと耳打ちしてくる。

「杉山さんがここをご指名なんですって。ここのお酒は全国から取り寄せてるから、お気に入りみたいで。今日は遠慮なくいっぱい呑みますってさっき言ってましたよ。」

と、答えると、

「そういうことなら、私も付き合っちゃおう!」

と、いたずらっ子のように酒豪の先輩が笑った。

杉山さんは、あたしが入社してからずっと父親のように見守ってくれた大事な人だ。

書類ミスをして目を赤くしながら残業した時も、一緒に遅くまで残ってくれて助けてくれた。

そんな優しい大先輩が退職するのは寂しいし、それはチームの誰もが思っていること。

チーム長も例外では無いはず。

杉山さんの隣に座りお酒を熱心に注いでいるチーム長。親子ほども離れた年齢の2人は結構仲が良くて、2人だけで飲みに行くこともある程だ。

宴が終盤になり、チーム長が立ち上がりみんなに声をかける。

「一応、一次会はこれで締めたいと思います。二次会はカラオケ付きの部屋をとってあるので、そこに移動。来れる者は来るよーに。っつーか、帰る奴なんていねーよな?全員行くぞ!」

その声に、みんながさらに盛り上がる。

そして、移動の準備を始めようとバタバタした時だった、

「あのぉー、1ついーですかー!」

と、今日の主役の杉山さんが声を上げた。

「今日は皆さんありがとうございます!もう、かなり酔っ払っちゃって、このあとまともに喋れなくなったら困るので、今のうちに言わせてください!牧野さん、前に出てきて〜。」

急に自分に話を振られ、驚いて固まるあたし。

「なになに〜?牧野ちゃん何かやらかした?」

「えっ、知らないですよっ。」

「いーから、早く前に行ってきなさい。」

先輩に背中を押されながらあたしはみんなが見つめる中杉山さんの隣に立つ。

すると、杉山さんはあたしの隣にチーム長も引っ張ってきて、並んで立たせたあと言った。

「実は、チーム長から先日嬉しい報告を頂きました。私の退職祝いなんて置いておいて、ここからはこの2人の結婚を祝って、大いに呑みましょう!」

その言葉に場が一瞬シーンと静まったあと、

「おぉーーーーーー!!!」

と、地響きかのような歓声があがった。

でも、あたしはチーム長へ視線を移しながら、

『みんなにバレていーの?』

と、心の中で呟く。

チーム長とは来月の初めに婚姻届を提出し晴れて夫婦になることが決まっている。

式は身内だけで海外であげる予定だ。

チーム内ではあたし達が付き合っていることは周知の事実だったけれど、それ以外ではできるだけ隠してきた。

社外の人にまで付き合っている事を言いふらすつもりは毛頭ないけれど、こうも隠されていると、少しビミョーな気持ちにもなる。それほど、チーム長の口は固かった。

だから、こんな風に本人の口からじゃなく、杉山さんから結婚の事をみんなに伝えられてしまいチーム長は怒ってるんじゃないか……そう思い、もう一度チーム長の顔色を伺うと、

あたしと視線を合わせたあと、腰に手を回し自分の方へ引き寄せて言った。

「来月、俺たちは結婚します。」

「おめでとーございます!」

「わぁー、牧野さんおめでとう!」

みんなが祝福してくれる中、杉山さんがからかいながら言った。

「チーム長、良かったですね〜、ようやく言えて。」

「つーか、マジで超ストレスだった。早くみんなに言いふらしたくて堪んなかった。」

チーム長がそう言うと、ヒューっと黄色い歓声が上がる。そして、あたしが驚いたようにチーム長を見つめると、

「付き合ってることは隠したけど、結婚はもう言ってもいーよな?

てか、もう俺は限界。おまえは俺のもんだって、全世界に公表してぇ。」

と、みんなの前で言い出す。

それを聞いて杉山さんが大爆笑しながら、

「我慢したんですよね〜、チーム長は!社外にも付き合ってることがバレたら、牧野さんの仕事がやり辛くなるから、結婚までは我慢するってね。」

と、チーム長の背中をヨシヨシと撫でながら言う。

そんな事……知らなかった。

確かに、何度か一緒に仕事をしたさくらさんには早い時期にバレてしまい、その後の仕事がやり辛くて堪らなかった。

元々チーム長に気があったさくらさんだから、会う度に仕事の話はそっちのけで、チーム長との馴れ初め話をさせられていたっけ。

「これからは、俺の妻だって胸を張って言いまくるぞー!」

相当酔っているチーム長が柄にもなく大声で叫ぶのを、

「チーム長っ!」

と、慌てて止めるあたし。

すると、事もあろうか、みんなが見ている前であたしを引き寄せながらこの人は甘く囁くように言った。

「おまえさ、もうすぐ苗字変わるけど、いつまでチーム長って呼ぶつもり?」

「…………。」

「ぎゃーーーー!」

あたしが答える前に、チームメンバーの悲鳴が店中に響いた。

FIN

「チーム長の策略」お付き合いありがとうございました!!

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