チーム長の策略 24

チーム長の策略
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チーム長がNYに戻るかもしれない。

しかも、それを本人からではなくさくらさんから聞いた。

『チーム長の口から聞けるまで待ちます。』

なんて彼女にはかっこいい事言ったけれど、会社に戻るまでの道のり、モヤモヤがおさまらない。

そして、会社に着くなり、

『チーム長、少しいいですか?』

と、声をかける。

「オケ。先方との話は上手くいったか?」

「その事で報告する事もありますので、」

そう言ってあたしはフロア奥にある小さな会議室に視線を移す。

そこはチーム内で会議をしたり、外勤した後に軽い打ち合わせする場所。

そこにチーム長を呼び出すなんて、公私混同甚だしいのは百も承知だが、このままでは仕事が手につかない。

幸いチームのメンバーは、誰も疑っていない様子。

チーム長のあとを追いその奥の部屋に入りると、あたしはフロアから見えないようにブラインドを下げた。

いつもしない行動にチーム長が戸惑ったようにあたしを見る。

「牧野、どした?」

その問いかけにも答えずに、あたしは思いっきりチーム長の胸に飛び込む。

頭をチーム長の胸に押し付けてグリグリと押しながら壁へと追い込む。まるで、イノシシが突進しているように。

「お、おいっ、なんだよっ。」

「なんでですかっ?!」

「あ?」

「なんで、教えてくれなかったんですかっ?!」

結局、チーム長から言ってくれるのを待つなんて出来なかったあたし。

「NYに帰るって本当?」

チーム長の目を真っ直ぐに見ることが出来なくて、あたしはまだチーム長の胸に頭を付けたまま。

「……誰から聞いた?」

「……さくらさん。チーム長の口から聞きたかったです。」

そう言って、あたしは勇気をだして顔を上げる。

すると、フフッと笑ったあと、

「可愛いこと、すんな。」

と、あたしの頭をガシガシと撫でる。

そして言った。

「おまえに言わなかったのは、最初から断るつもりだったからだ。」

「……え?」

「社長からNYに戻ってこいって話は出たけど、断った。」

「ど、して?」

「だって、俺はおまえといてーもん。二人の時間がこれ以上減らされるのは我慢出来ねーし、遠距離なんて御免だ。」

もしかしたらあたしと別れるつもりだからNYの事を言わなかったのかも…なんて不安に思っていたけれど、逆にこうもあっさり自分のせいで仕事を断ったと言われたら、それはそれで気が引ける。

「えーと、そんな事でいーの?」

「あ?そんな事って、1番大事だろ。」

「でもっ、社長から言われたんでしょ?そんな簡単に断っても大丈夫?」

一応、こう見えても、この人は道明寺財閥の一人息子。そんな人がたかが恋愛ごときに振り回されてNY行きを断ってもいいのだろうか。

そんなあたしの心を見透かしたかのように、チーム長が言った。

「まぁ、いずれはNYに行くかもしれねぇ。けど、今はやることやってから行くつもりだ。」

「やる事?」

「ああ。俺、結婚してーんだよ。」

「…………。」

「おまえの実家にも挨拶に行きてーし、両家の顔合わせとか、式の日取りとか、やる事多いだろ?だから、NYなんて行ってられるかって社長にも言ってやった。」

淡々とそう話すチーム長に、あたしは返す言葉が見つからない。

唯一、言えたのは、

「全然、そんな事聞いてない。」

と、小さな抗議だけ。

「ああ。準備が整ったらきちんと跪いてプロポーズするつもりだった。指輪、7号で良かったよな?」

「どーして知ってるの?」

「あのピアスを買った店で、リングも試してただろ?あの時に、何号なのかスタッフに聞いておいた。」

あたし達が付き合う前、結婚詐欺師に買った時計を返品しに宝石店へ行った時、リングもお試しで付けさせてもらった。

その時の事だろうか。

「えっ?あの時って、まだ付き合っても……」

「俺はあの時からおまえと結婚してーと思ってた。」

「はぁ?いつから決めてたのよ、バカ。」

チーム長の胸を叩きながらそう呟くと、いつものようにチーム長の顔が近づいてくる。

キスされる……、

そう思った時、部屋のドアが小さく

コンコンと鳴った。

慌ててあたしはチーム長から離れて、1番近くにあった席に座り持っていた資料をわざとらしく机に広げる。

「どーぞ。」

チーム長がそう言うと、

「チーム長、お客様がお見えですが。」

と、チームの冴島くんが顔を出した。

「客?そんな予定あったか?」

「いえ、それが……、」

冴島くんが言いづらそうに口ごもった瞬間、その後ろで、

「お邪魔しま〜す。」

と、女性の明るい声がした。

「まさか……」

チーム長がそう呟くのと同時に、その明るい声が、

「道明寺椿です。弟がいつもお世話になってます。」と言った。

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