6年ぶりに見る牧野は、
ほんの少し大人になっていたが、一気に俺の気持ちを引き戻すのに十分だった。
「道明寺、来てたの?」
「……おう。」
「面会時間はとっくに過ぎてますけど。」
そう言っておどけて笑うこいつは、いつも会ってる友達のように話してくる。
「タマさん起きてるから顔見せてあげて。」
そう言って俺に片手をあげてから、くるっと振り向くと歩いていく。
「……お、おいっ、」
「ん?」
「何時に終わる?」
「あたし?
忙しくて、病院に泊まり込み。
食事に出るのがやっとなの。」
そう言ってまた同じように立ち去ろうとする牧野。
「飯はっ?飯は食ったのか?」
我ながら夜の11時に聞く台詞ではないと思いながらも、とっさに出た俺の言葉に、
「…………プッ…………まだだけど、
付き合ってくれるの?」
と、笑う姿が凶悪に可愛くて、
「行くぞ。」
とぶっきらぼうに言うのが精一杯だった。
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病院を出て数百メートル行ったところにある、
牧野行きつけのラーメン屋。
「外に出て食べれるなんてまだいい方。
術後の患者さんが多いときは、何日も病院でカップラーメンっていう日が続くの。」
醤油ラーメンを食べながらそう話す牧野に、
「いつから、ここに?」
と聞く俺。
「半年前。
それまでは、北海道にいたから。」
大学を卒業して札幌の病院に行ったとはあきらから聞いていた。
それが、こんな近くに戻ってきてたとは。
「タマとは連絡取り合ってたのか?」
「…………うん、時々。」
そこまで言ったとき、牧野の携帯が鳴り出した。
ごめんね、そう言いながら携帯に出た牧野は、
「終わったの?お疲れ。
どうだった?
…………うん、…………うん、
わかった。あたし?いつもの麺亭でラーメン食べてたとこ。
児島、食べるものあるの?
何か買っていこうか?」
そんな会話をして電話を切ったあと、俺に、
「そろそろ戻らなきゃ。
これ、あたしの分のお金。
……じゃあ、……ま……元気で。」
またね……と言おうとしたんだろう。
それを元気で……と言い換えて、店を出ていく牧野。
さっきまで、まるで、いつも会ってる友達かのように話しやがったくせに、最後の最後で突き放すあいつ。
またね……が言えない関係に、6年たっても苦しむ俺。
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:
「坊っちゃん?」
「……おう。」
時計を見ると夜中の2時。
牧野と別れて、どうしてもそのまま帰る気にならず、再びタマの部屋へと戻ってきた。
「どうしたんですか、こんな時間に。」
ベッドの横の椅子に座る俺をみて、驚くタマ。
「見舞にきてやったんだろ。
どうだ?辛くねーか?」
「ええ。大丈夫ですよ。
坊っちゃん…………ご飯は?」
いつも邸に戻った俺に、タマが聞く台詞を、
今日もベッドの上から聞いてくる。
「ああ、食べた。
6年ぶりにかな、ラーメン食った。」
そう話す俺を見つめて、
「6年ぶりの味はどうでした?」
と、何もかも知ってるようにタマが聞いた。
そんなタマに俺は呟いた。
「味なんて覚えてねーよ。」
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