ドクター!3

ドクター
スポンサーリンク

6年ぶりに見る牧野は、
ほんの少し大人になっていたが、一気に俺の気持ちを引き戻すのに十分だった。

「道明寺、来てたの?」

「……おう。」

「面会時間はとっくに過ぎてますけど。」

そう言っておどけて笑うこいつは、いつも会ってる友達のように話してくる。

「タマさん起きてるから顔見せてあげて。」
そう言って俺に片手をあげてから、くるっと振り向くと歩いていく。

「……お、おいっ、」

「ん?」

「何時に終わる?」

「あたし?
忙しくて、病院に泊まり込み。
食事に出るのがやっとなの。」

そう言ってまた同じように立ち去ろうとする牧野。

「飯はっ?飯は食ったのか?」

我ながら夜の11時に聞く台詞ではないと思いながらも、とっさに出た俺の言葉に、

「…………プッ…………まだだけど、
付き合ってくれるの?」

と、笑う姿が凶悪に可愛くて、

「行くぞ。」
とぶっきらぼうに言うのが精一杯だった。


病院を出て数百メートル行ったところにある、
牧野行きつけのラーメン屋。

「外に出て食べれるなんてまだいい方。
術後の患者さんが多いときは、何日も病院でカップラーメンっていう日が続くの。」
醤油ラーメンを食べながらそう話す牧野に、

「いつから、ここに?」
と聞く俺。

「半年前。
それまでは、北海道にいたから。」

大学を卒業して札幌の病院に行ったとはあきらから聞いていた。
それが、こんな近くに戻ってきてたとは。

「タマとは連絡取り合ってたのか?」

「…………うん、時々。」

そこまで言ったとき、牧野の携帯が鳴り出した。
ごめんね、そう言いながら携帯に出た牧野は、

「終わったの?お疲れ。
どうだった?
…………うん、…………うん、
わかった。あたし?いつもの麺亭でラーメン食べてたとこ。
児島、食べるものあるの?
何か買っていこうか?」

そんな会話をして電話を切ったあと、俺に、

「そろそろ戻らなきゃ。
これ、あたしの分のお金。
……じゃあ、……ま……元気で。」

またね……と言おうとしたんだろう。
それを元気で……と言い換えて、店を出ていく牧野。

さっきまで、まるで、いつも会ってる友達かのように話しやがったくせに、最後の最後で突き放すあいつ。
またね……が言えない関係に、6年たっても苦しむ俺。


「坊っちゃん?」

「……おう。」

時計を見ると夜中の2時。
牧野と別れて、どうしてもそのまま帰る気にならず、再びタマの部屋へと戻ってきた。

「どうしたんですか、こんな時間に。」
ベッドの横の椅子に座る俺をみて、驚くタマ。

「見舞にきてやったんだろ。
どうだ?辛くねーか?」

「ええ。大丈夫ですよ。
坊っちゃん…………ご飯は?」

いつも邸に戻った俺に、タマが聞く台詞を、
今日もベッドの上から聞いてくる。

「ああ、食べた。
6年ぶりにかな、ラーメン食った。」

そう話す俺を見つめて、

「6年ぶりの味はどうでした?」

と、何もかも知ってるようにタマが聞いた。
そんなタマに俺は呟いた。

「味なんて覚えてねーよ。」

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

ランキングに参加しています。応援お願いしまーす✩.*˚

ドクター
スポンサーリンク
司一筋をフォローする
司一筋
タイトルとURLをコピーしました