イツモトナリデ 29

イツモトナリデ
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突然、道明寺に挨拶されたパパは驚いていたけれど、マンションの部屋に入るなり、

「ママーーっ、」
と、踊るように駆けていく。

「えっ?!彼氏っ?」
パパから話を聞いたママも、有頂天だ。

「どんな人?どこで知り合ったの?」

「ママ、落ち着いてよ。」

「落ち着けないわよ。パパ、どんな人だった?イケメン?」

「名刺、貰ったぞ。」

道明寺から渡された名刺。
それを食い入るように見つめたパパとママは、
「えっーーー!!」
と、ご近所迷惑になる程の声で叫んでいた。



昨夜はパパとママの尋問に捕まり、ようやくベッドに潜り込んだのは深夜0時を過ぎていた。

眠い目を擦りながら、出勤ギリギリに起き、
いつもは作る簡単なお弁当も今日はパス。

スーツを着て家を出るあたしを見送りに玄関まで来たママは、昨夜のハイテンションとは違い、真剣な顔であたしに言う。

「つくし、あんまり色々考えすぎないで、純粋に恋愛を楽しみなさいよ。」

あたしの心配はきっとママにも伝わっているのだろう。
道明寺ホールディングスのひとり息子との恋愛は、先の見えないトンネルに迷い込んだようなもの。

そんなあたしに、
「さぁ、いってらっしゃい。」
と言ってママはポンと肩を押した。



今日のランチは久々の社食だ。
いつもは一緒に行く同じ課のナミちゃんは、今日は外勤。
仕方なく一人で社食のテーブルに座り、ミートスパゲッティを食べていると、後ろから来た人がドカッと隣に座り込んだ。

「珍しいじゃん、弁当は?」

「誰のせいで作れなかったと思ってるのよ。」

「あ?俺かよ。」
不思議そうにそう聞く道明寺にあたしは大袈裟にため息をついて見せる。

「あれから、パパとママが大騒ぎして大変だったんだから。」

「大騒ぎ?」

「そう。まさか娘の彼氏が道明寺ホールディングスの息子だとは思ってなかったから。」

周囲に聞かれないように小声でそう言うと、道明寺はふふっと鼻で笑う。

「今度はちゃんと食事にでも招待する。」

「名刺貰ったくらいで大騒ぎしてたんだから、食事になんて誘ったら倒れるかもしれないから辞めてよ。」

「外堀から徐々に崩していかねーと。」

「…何の話よ。」

周囲の目を気にして無表情を装いつつ小声で話すあたし達は、周りから見れば、仕事の話でもしていると思われているだろう。

と、その時、
あたし達の目の前に、「お疲れ〜っ。」と全然疲れてなさそうな人が現れた。

今日の滋さんのランチは、珍しくハンバーグ定食だ。

「ハンバーグ?珍しいね。」

「ものすごーくお腹すいちゃって、今日は残業していくつもりだから、モリモリ食べるわよ。」

そう言って、スマートにフォークとナイフを操る。
食べ終わったあたしは席を立ち、3人分のコーヒーを取りに行き戻ってくると、
なぜだか、さっきまでの雰囲気が変わっていることに気付いた。

それは、
社食にいる他の社員の視線がチラチラと道明寺と滋さん向けられ、
「やっぱり結婚するって本当だったんだ…。」
というため息混じりの言葉まで聞こえてくる。

どうやら、道明寺と滋さんが結婚するという噂は消えるどころか、ますます膨らみ誤解されているらしい。

苦笑いしながら席に着くあたしに、
「最悪なんですけど…」と、滋さんが愚痴る。

滋さんの婚約お披露目パーティーは来月に予定されている。
それまでは、相手が誰かは伏せておくようにお父様からお達しがあったのだ。

「あと1ヶ月はこの噂話の標的にされるのよね。」

「相手は俺じゃねぇって課の奴にきちんと言えよ。」

「言ってるわよ!
けど、信じてくれないのっ。そんなにあたしたちラブラブに見えるのかしらぁ〜?」

道明寺を見てウインクする滋さん。
完全に道明寺を挑発してるとしか思えない行動に、あたしはまたも苦笑い。

道明寺を怒らせてどうすんのよ…と思いながら、隣に座るこの人の顔色を伺うと、なぜかニヤリとあたしを見る。

そして言った。
「滋は親父さんから箝口令が敷かれているけど、俺は別に何も言われてねーから、いいってことだよな?」

「は?」
聞き返すと、今度は

「だろ?滋。」
と、滋さんの方を向いて聞く道明寺。

「どうぞご勝手に。」
ニンマリとした顔で即答する滋さん。

すると次の瞬間、あろう事か、
道明寺があたしの肩に手を回し自分の方へ引き寄せた。
そして、あたしの頭にチュっとキスまでしたのだ!

慌てて離れようとするあたしの身体を思いっきりホールドするこのバカ。
それを見て、周囲の社員が固まり、息を呑むのが分かる。

「どっ、道明寺っ!」

「誤解は解かねーと。」

「離せぇー、バカバカっ。」

暴れるあたしを意地でも離さない道明寺は、あたしを背中から抱き締めてクスクスと笑う。
それを見て、社員がざわざわと騒めき出す。そして、すぐそばにいた隣の課の社員に道明寺が言った。

「これ、俺の彼女。
可愛くねぇとこが、最高に可愛いだろ。」

それを楽しそうに見ていた滋さんも、付け足す。

「彼女にベタ惚れなのよこの男。」

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コメント

  1. きな粉 より:

    ついにやりましたかw
    司君は、相変わらず派手ですね。
    つくしちゃん、この後大変な事に・・・・
    楽しみです。やはり外堀からですね。
    更新有難うございます。

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