シークレット 24

シークレット
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次の週、学園に行くと、
『修学旅行の工程表』と書かれた資料を副園長から渡された。

「修学旅行か……。」

「はい。
毎年、ハワイへ6日間の日程で行っております。
理事長の時も行かれましたか?」

「ああ、たぶん、行ってたと思いますけど、
俺はこの時期、ラスベガスに行くのが恒例だったので、修学旅行は参加してません。」

聞かれたから普通に答えたつもりなのに、副園長は、
「はぁ、そうですか、さすがですね。」
と、ため息をついてやがる。

貰った資料をパラパラめくると、3日目以降の日程がほぼ空欄だ。

「ここは?」

「生徒たちは、1日目と2日目は一応観光地を回りますが、3日目と4日目は完全にフリー行動です。
生徒自身が旅行プランを考えて、ハワイ島周辺を学んで遊ぶという、英徳ならではの自由な修学旅行ですので、朝ホテルを出てから、20時集合までは完全にフリープランです。」

確か、俺達のときもそうだったかもしれない。
生徒の殆どはハワイに行き慣れた奴ら。
男子はクルーズ船を借りて遠出をしたり、
女子はブランドショップを行き尽くすという、一般の修学旅行とはかけ離れた旅行になっていた記憶がある。

資料の最後の方へ目を通すと、同行する教師の中に牧野の名前を見つけた。
初耳だ。

「担任以外の教師も同行するんですか?」

「はい。
一応、連絡係ということで数名。
まぁ、殆どする事はないのですが、ビーチの見回りや、ホテルでの点呼くらいですかね。
私も3年前にこちらの学園に来まして、その年に修学旅行に同行したんですが、それはそれは驚きました。
飛行機はビジネスクラス、ホテルは三ツ星。
おみやげは高級ブランドの限定品を狙って、ゴールドカード決算。
さすご英徳の自由な校風が生かされて………、」

ウダウダと話している副園長の言葉は殆ど耳に入らず、俺の頭の中は、修学旅行がある再来週のスケジュールに向いていた。

確か、再来週は週明けに大事な会議と会食が入っていたはず。
その後は……、ババァに任せればなんとかなるか。

そんな事を思いながら、もうすでに俺の思考はハワイへと向いていた。



とうとう、この日がやってきた。
青い海、広い空、心地よい風。
全身でハワイの空気を吸い込むように大きく深呼吸をする。

初めての海外。
初めてのビジネスクラス。

周りの生徒は慣れた手付きでスムーズなのに、あたしだけやる事すべてにドキドキと緊張しっぱなし。

初日と2日目は工程通り、観光地を巡る旅をした。
幸い、英語科の教師なので、言葉に困る事はない。

ただ、3日目と4日目は完全にフリー行動。
先生たちも「生徒の見回り」とは言っているけれど、各々自分の行きたい場所に朝から飛び回っている。

物理の吉田先生なんて、パンケーキ屋さんに行ったあとは、有名なエビ料理のお店、そして、その後はおみやげ探しに大忙しだと朝食のときに言っていた。

私は…というと、
特に行きたいところもない、買いたいものもない。
ただ、ひたすらこのハワイという空気を満喫したい。

だから、せっかくお姉さんに選んで貰った水着もあるし、今日はビーチへとやってきた。

お姉さんが言っていた通り、あたしの水着なんてここでは全然目立たない。いや、むしろ、目のやり場に困るセクシーな女性が多すぎて、あたしのこの幼児体系は水着がどうこういう問題ではなかったと痛感させられる。

ビーチには女子生徒のグループが数人いて、一時間ほど彼女たちと一緒に海に入ったあとは、あたしはパラソルの下でゆっくりと日光浴をしながら彼女たちの動きに目を配っていた。

すると、外国人の男性3人が彼女たちのいる方へ近付き声を掛けているのが見える。
まぁ、若い者同士挨拶するくらいは構わない。

しばらく話していると、そのうちの一人が女子生徒の肩に腕を回しはじめた。
生徒は少し嫌がる素振りを見せたけれど、海の中だからうまく距離を取れないのか、体ごと男性の方へ傾き始めているのが分かる。

いくらなんでも、ボディタッチが多すぎる。
そう判断したあたしは、パラソルから出て、海に向けて走り出した。

砂に足を取られてうまく走れない。
更に、海に入ると水の圧でなかなか進まない。

ようやく彼女たちまであと少し、というところで、英語であたしは叫んだ。
「彼女たちはあたしの生徒よ。
もう戻らなきゃいけないの。だから離してあげて。」

すると、男性3人があたしを見る。
学生かと思っていたけれど、近くで見ると20代後半かもしれない彼ら。

「先生?」

ニヤッと笑ったあと今度はあたしの方へその長い腕を伸ばしてきた。
肩に回された腕で引っ張られる……と思った瞬間、

聞き覚えのある低い声がして、あたしの身体は逆方向へ引き寄せられた。

「テメー、触るんじゃねー。」

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