ライバルとなんて、恋しない

エレベーターから降りると、いつものように手前から3件目の店へと向かう……はずの俺の足が、今日は言う事を聞かずに、その先の階段へと進む。 そして、階段を段飛ばしにのぼり、息を切らしながら7階まで上がると、牧野の姿をキョロキョロと探す。...

優紀との温泉旅行から3週間後。 あたしは張社長の会社に来ていた。 先日の飲み会以降、初の顔合わせ。 張社長に 「あの時は酔っ払っていて、牧野さんに失礼なこと言って申し訳なかったね。」 と言われ、 そうい...

タクシーに乗りマンションに戻ると、大慌てでバスルームへと駆ける。 優紀が来るまであと30分。 それまでに髪を洗い、服を着替えてお化粧をして.........。 朝から死ぬほどバタバタする羽目になった理由は、今は考えないよ...

間接照明がともされたホテルの部屋に入ると、牧野が少しだけ尻込みしたように感じた。 ほらな？ 勢いだけでこんな所に来て、ようやく事の重大さに気付いたか？ どんな理由をつけてこの場から退出するのか……。 潔く謝ったら許...

その夜、張支社長とあたし達は銀座の一等地にあるお店でお酒を交わしていた。 出席者は昼間会議室で顔合わせをしたメンバーと張支社長の合わせて7人。あたし以外はみんな男だ。 あたしだって出来ることならこんな男だらけの呑み会に参加した...

足のしびれを感じて体勢を変えると、急に身体がぐらつきお尻に軽い衝撃を受けて目が覚めた。 ソファーから落下したのだと気付くまでに数秒。 そして、ここはどこ？と辺りを見回してハッとする。 あたしったら、道明寺司の部屋で寝てし...

腫れた頬と泣いた目を隠したいから、この大柄な男の後ろに隠れるようにして、夜の街を歩く。 すると、少し開けた道路に出たところで、黒塗りの車がスーッと近づいてきた。 ん？ 不思議に思う暇もなく、道明寺司がその車の後部座席を開...

それから1週間後。 仕事終わりに同僚たちと一杯呑んだ後、家に帰るにはまだ早いと、いつものように足が千石バーへと向かう。 今日は親友の優紀も来ているはずだ。お互い30になっても独身のあたしたち。週末になればどちらともなくママの所...

次の日、会社に着きエレベーターに乗り込むと、同期の村瀬があたしの顔を見てニヤリと笑う。 「なによ。」 「聞いたぞ。またライバルにやられたんだって？」 そういう情報だけは早く出回るからタチが悪い。 「今回の契約を逃し...

「あ゛ーーーー、もうっ、腹立つ！」 そう呟いてハイボールをガブッと1口呑む。 「つくしちゃーん、明日二日酔いになるわよ〜。」 「いーんです。どうせ明日出勤したら、部長のお説教から始まるし。」 「だったら尚更、お酒臭...