テントの中。
並んで座り、ポツポツと鳴り響く雨音を聞く。
「帰れそうにないね。」
牧野がそう呟くから、
「俺はそのつもりで来たけど、おまえは大丈夫なのかよ。」
と、聞く。
「明日は仕事休みだからへーき。」
その答えに、俺は首をかすかに横に振りながら言ってやる。
「そうじゃなくて。……俺と2人でここで一晩過ごすけど、大丈夫かって。」
その言葉の意味は、もう子供じゃないんだから伝わっていると思う。でも、それがどの程度のものなのか。それは言った自分でも分からない。
ついこの間、牧野の部屋でキスをした。心が通じあって初めてのキス。誰にも邪魔されない空間でそのまま押し倒し次のステップにいくこともできたけれど、そうしなかった。
それは、俺にとって牧野がすげぇ大事だから。ゆっくり進む過程さえも愛しいと思うから。
美音との時は思春期で欲望だけが勝っていた時期だった。正直いうと、相手の気持ちなんて考えている余裕はなかったかもしれない。
そんなあの頃とは違い、今は目の前のこいつの気持ちが最優先。
「べ、別に大丈夫っ。ほら、こんなにフカフカのブランケットもあるし、気温だってそんなに低くないから、一晩くらい生き延びれるでしょ。」
完全に逃げ腰の牧野。まぁ、いい。こういうやり取りをしながら時間をかけてジワジワと攻めるのも悪くない。
そう思っているのに、パーカーの裾から見える白い脚に早くも理性が崩れそうになり、
「これに入ってろ。」
と、ひとつしかない寝袋を差し出す。
雨音は止むことなく続いている。
小さなテントの中で、2人で並んで寝転がりその音を聞きながら、お互い2年半をどう過ごしてきたか語り合う。
どれくらい時間が経っただろうか、腰まで寝袋に入った牧野は、疲れたのか小さな寝息をたてて眠ってしまった。
その寝顔を見ながら、俺も眠気に吸い込まれそうになった時、
ガサガサっ!!
と、テントのそばで物音がした。
どうやら雨は止んだようだ。だとしたら、雨音ではなく風か?そう思いながら、じっと耳をすませていると、また
ガサガサっ!!
と、さっきより大きな音。
さすがにその音の大きさに、牧野も起き上がり俺の方を不思議そうに見る。
「なんの音?」
「分かんねぇ。ちょっと見てくる。」
「えっ、待って。」
テントの入口のファスナーを開けようとする俺を止める牧野。
「……熊じゃないよね?」
「この辺りは出ねぇって聞いたぞ。」
「うん。出たことは無いけど、でも、」
不安げな牧野の頭を軽く撫でながら、「大丈夫だ」と言ってテントの入口を開けた。
すると、そのタイミングで、外に出しておいたキャンプ用の簡易食器がガラガラっと転がる音がした。
「わぁっ!」
驚いた牧野が俺に抱きついてくる。そして、その声に、テントの側まで来ていた猫が逃げていくのが見えた。
「プッ…猫だ。」
「ほんと?」
「ああ、おまえの声に驚いて逃げてった。」
「もおっ、びっくりしたぁ。熊に襲われるかと思った。」
そう言って安堵のため息をつく牧野。でも、この状況のヤバさには気付いていないらしい。
「おまえ……熊以外のものに襲われるぞ。」
「え?」
キョトンとする牧野は、俺に抱きついてきた拍子にパーカーから大きく脚が出て、太ももが露になっている。
この状況で我慢しれと言われて大人しくできる男なんているのだろうか。
牧野の身体を少しだけ引き寄せてその太ももに視線を移すと、ようやく自分の体勢に気付き恥ずかしそうに俯く。
「牧野、少しだけ……襲っていい?」
「プッ……熊以外のものってもしかして道明寺?」
「おう、怖がらせねーから。」
そう囁くと、無言のまま小さく頷く牧野を見て、俺はもう一度こいつの身体を引き寄せて俺の脚の上に乗せた。
………………
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