夏休みも残すところ1週間。
就活やバイトに追われ、結局夏休み中に花沢類と会ったのもほんの数日、しかもキャンパス内でだけだった為、
「少しは俺に時間を割いてよ。」
と言われ、今日は2人でドライブに行ってきた。
少し遠出をして、街をプラプラ散策し、美味しいものを食べて、まるでデートみたい…と心の中で思っていると、
「デートなんだから、食事くらい奢らせてよ。」
と、花沢類に怒られて、出したお金を財布に戻されてしまった。
男の人と付き合うってこういうことなのか…。
どこに行っても花沢類のさりげない気遣いや優しさに包まれる。
世の中のカップルはみんなこう?
そう思うのと同時に、なぜか道明寺と美音さんの姿が頭に浮かぶ。
道明寺も美音さんが相手なら、優しく尽くすのだろうか。花沢類のように優しく笑いかけるのだろうか。
そんな事を考えてしまっている自分に気づき、あたしはハッとして慌てて頭を振って思考を現実に引き戻した。
夕食を軽く済ませ、花沢類の運転で道明寺邸まで送ってもらいエントランスへ入ると、そこにちょうど道明寺がプライベートで使っている車が止まっていた。
「司、どこかに行くのかな?」
花沢類がそう言うのと同時に、邸の入口が開き、道明寺と美音さんが現れる。
花沢類の車に気づいた道明寺もこちらに近づいてきて中をのぞき込む仕草をしたので、あたし達は車から降りた。
「司、今から出かけるのか?」
「おう、……美音を送ってくる。
おまえらはどこに行ってたんだ?」
「ドライブデート。楽しかったね牧野?」
照れる仕草も見せずに「デート」と言い切る花沢類とは対照的に、あたしはまだそういう関係に慣れない。
デートと聞くだけで、顔が赤くなってしまう。
と、その時、
「坊ちゃん!」とタマさんがエントランスに顔を出した。
「あらあら、皆さんお揃いで。」
「どうした、タマ。」
「あ、これをお渡しするのを忘れてましてね。
今朝届きました。坊ちゃん宛になのですが……」
と、一通の封筒を手渡しながらなぜかあたしの方をチラッと見るタマさん。
そして、その封筒を見た道明寺がぽつりと呟いた。
「牧野進?弟からか……。」
「えっ?進から?」
驚いて咄嗟に道明寺の隣まで行き、あたしもその封筒をのぞき込む。
確かに送り主は新潟の住所の進からだ。
「開けてみてっ!」
「分かってる、落ち着けって。」
苦笑しながら手紙を開ける道明寺。
そして、中から分厚い束を取り出した。
「写真?」
「そうみたいだな。」
「……ちょっと、なにこれ」
「ぷッ……おまえ食ってばっかじゃん。」
進から送られてきた封筒に入っていたのは約20枚ほどの写真の束だった。
それは、新潟観光をした日に撮った写真たち。
進が持っている小さなデジカメで撮った物だから決してうまく撮れてなんかないけれど、それでもあの日どれだけあたし達がはしゃいで楽しかったかが分かる写真ばかり。
「あ、これ、道明寺がソフトクリーム落としたやつでしょ!」
「ちげーよ、おまえが食べたいって言ったから渡したら、手を滑らせておまえが落としたんだろ?」
「あたしじゃないからっ、道明寺が、」
「あ、これも、おまえが迷子になった時だよな?」
「酷っ、こんな所まで撮ってるなんて……」
そして、20枚程の写真を一気に見終わったあと、最後の写真と共に進から1枚のメモが入っていた。
『姉ちゃんと道明寺さんのベストショットです。』
と、書かれたメモ。
そしてその写真とは、
夕暮れ時に乗ったロープウェイ。隣同士に座ったあたし達がお互いを見ながら満面の笑みで微笑んでいる。
いつの間にこんな写真を?
こんなにあたし達、楽しそうだった?
自分の事なのに、恥ずかしくて直視できないほどだ。
すると、横で写真を覗き込んでいた美音さんがぽつりと言った。
「新潟に行ったって聞いてたけど、牧野さんと一緒だったの?」
「…………。」
「私、てっきり仕事の関係で楓おば様と行ったのだと思ってた。」
冷たい視線で道明寺を見る美音さん。どうやら、この写真で誤解をさせてしまったようだ。
「あのぉ、違うんです。新潟の実家に帰るのに荷物が多くて、道明寺に手伝って貰ったついでに、少し観光でもしようかってなって。」
慌ててあたしがそう言うと、
美音さんがピシャリとあたしに向かって言った。
「私に弁明するより、自分の彼氏にした方がいいと思うわよ。
牧野さんの彼氏は類でしょ?」
「…………。」
「司は私の彼氏だから、私たちのことは気にしないで。」
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コメント
弁明だって・・・(笑)
いやぁねぇ~。
しっかり司君の彼女気取りで・・・
司君の気持ちは、如何に❓(笑)
更新有り難うございます(^^
お待ち致しておりました
楽しみにしてました❗️
この先の転回、ドキドキします
これからも応援してます