牧野から『あんたが、好き』と言われ、全身の緊張が解けてタガが外れる。
店に誰も居ないことをいい事に、牧野の身体を引き寄せ俺の膝の上に乗せ濃厚なキス。
余裕がなくて、必死で、かっこ悪いのは百も承知だ。
けど、今この一瞬だけでもこいつを俺のモノにしたい。
後頭部に手を回し、舌を絡ませようとすると、
何かを思い出したかのようにハッとして俺から離れる牧野。
「ねぇっ!ママは?」
そう聞きながら、慌てて店の中を見渡す。
「帰った。」
「え?帰ったの?」
「ああ。後は頼むって鍵も預かってる。」
そう言って千石バーの店主から預かった鍵をヒラヒラと牧野に見せてやると、
「何年も通ってるあたしでさえ鍵なんて預かったことないのに、随分信頼されてんのね。」
と、呆れたように言う。
そして、
「何時だろ、あたし達も帰らなきゃ。」
と、急に現実に戻る牧野に、
「もう少しいーだろ。」
と言って、もう一度身体を拘束し、今度は容赦なく舌を絡ませていく。
「どう……みょーじっ」
「ん?」
「ダメ……ん、ダメ」
「なんで?好きって言ったじゃん。」
「でもっ……あたし、……お酒……」
具合が悪いのかと思い少しだけ唇を離してやると、
「いっぱい飲んだから、……あたし、お酒臭いと思う……」
と、今更な言い訳。
「いーよ、んなの関係ねぇ」
「関係あるっ。」
「俺はしたい。」
「ダメ……」
「じゃあ、ここならいーのか?」
口がダメならいくらでも他のところがある。
そんな勢いで首筋にキスをすると、一気に俺の要望が増す。
さすがにここでこれ以上はやりすぎだ。だから、
「牧野、場所変えよーぜ。」
俺はそう言って、まだトロンとした目の牧野の腕を掴み、千石バーを出た。
………………
ホテル?俺の部屋?おまえの部屋?
その3択で聞くと、
「うちに来る?」
と、牧野が言った。
俺的にはどこでもいい。こいつと一緒に夜が明かせるなら。
マンションにつき玄関に入るなり、後ろから抱きしめる俺に、牧野は恥ずかしそうに言う。
「ハミガキだけ……いや、シャワーも浴びてきてもいい?」
「フッ……ああ、待ってる。」
「……うん。」
1度目の時は勢いでホテルに行った俺たちだけど、2度目の今回はゆっくりお互い確かめあって抱き合いたい。
…………
30分後、
ベッドの上で牧野の身体をゆっくり揺らしていると、急にこいつが言った。
「道明寺、梨花さんとはほんとに何も無い?」
「あ?」
その言葉の意味が分からずに聞き返すと、
俺を不安げな目で見つめてくる。
「梨花さんも同じ香水の香りがするの。」
「俺と?」
「うん、」
知らなかった。
梨花とは店以外で会ったこともないし、店を出る時に普通の客を装って腕を組むくらいしか近づいたことが無かったから、あいつがどんな香水を付けているかなんて気づかなかった。
「道明寺がプレゼントしたの?」
「いや、ブルガリのどこにでも売ってるやつだから、買おうと思えば誰でも買える。」
「……うん」
それでも何となく不安げなこいつに
「あの香水はもう付けるのはやめる」
そう言うと、
「別にっ、そんな事してなんて言ってなくて……」
と困った顔をする。
そういう普段見れない表情や、何も身につけていない白い身体、時折漏れる声、ねっとりと絡みつく中心部、
1度目の時もそうだったけど、今回も
『可愛い』の渋滞で頭がクラクラする。
そんな事も知らずにこいつはさらに、
「この香り、好きだから変えないで。」
と無自覚に俺を煽ってくるから、俺はエロいキスで口を塞いでやった。
おまえが心配するような事はねーよ。
もし仮に梨花が俺とおまえのことをよく思っていないなら、今日俺に連絡してくることは無かっただろう。
俺が店に着いた時、梨花が言っていた。
『お姉さんって、なんか道明寺さんに似てますよね。』
『似てる?』
『ええ。こうと決めたら突き進むというか、真っ直ぐで嘘がなくて、向こう見ずで。
そして、……こんな私にも優しくて。』
『フッ……お似合いだろ?』
『ちょっと!惚気ないでくださいっ!
道明寺さんのそんな顔、見たくありませんっ。』
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コメント
いつも楽しみに読ませていただいてます。
キュンとしちゃうとことか、堪りません!
道明寺の表情とか想像しちゃってキュン死です。
真っ直ぐなとこ、つくしちゃんの変わらなさも素敵ですね。