ライバルとなんて、恋しない 24

ライバルとなんて、恋しない
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遡ること2時間前。

俺は10日ぶりにNY出張から帰国した。

タマが出迎える邸に着いたのは20時過ぎ。

自室に行き、まずはバスタブに湯をはり、ゆっくりと身体を癒す。

そして、バスルームから出たあと、部屋のミニバーにある冷蔵庫からビール缶を1つ取り出しソファーに腰を下ろす。

ようやく日本に帰ってきたと実感する瞬間だ。

今日は早めにベッドに入ろう……そう思いビール缶を開けようとした時、あることを思い出す。

デスクの上にあるプライベート携帯。

出張中は日本においていった。

なぜなら、ふと気が緩んだ時にあいつの声が聞きたいと思ってしまうだろうから。

飲もうとしていたビール缶をテーブルに置き、部屋の隅にあるデスクへと歩いていく。

そして、プライベート携帯を持ち上げると、青くランプが点滅している。

それは着信を示すランプ。

あきらから連絡でも来ていたか?そう思いながら携帯を開いた俺は、固まった。

そこには、

「着信8件」の文字。

そして、その相手は「牧野つくし」からだ。

付き合ってる時もほとんどあいつから連絡してくることなんて無かったのに……。期待と不安で胸がドキドキと激しく鳴る。

かけ直そうとボタンを押しかけた時、「梨花」からメールが来た。

「特大のネタがありますけど、知りたいですか?」

梨花には仕事の情報をいつも提供してもらっている。何か大きな情報を掴んだのだろうか。

「近いうち、店に行く。」

そう返信すると、

すぐにまたメールが来た。

「今すぐ、来た方がいいと思いますけど。」

「今すぐ?」

「はい。道明寺さんに会いたいっていうお客様が来てるので。」

俺に会いたい客?思い当たる節がない。

返信に戸惑っていると、梨花がこれ以上ないネタをぶち込んでくる。

「道明寺さんの愚痴を言うだけ言って酔いつぶれてます。お姉さんのこと、1人でタクシーで返してもいーんですか?」

梨花が「お姉さん」と呼ぶのは「牧野」だけだ。

何度かしつこい客から助けてくれた牧野を「お姉さん」と言って慕っていた。

「すぐに行く。」

俺はそう返信した後、結局一口も口をつけていないビール缶をテーブルに置き、急いで邸を出た。

………………

「ったく、何がよっこらしょだよ。」

俺のその言葉に、大きな目をさらにでかく広げて驚く牧野。

「どーみょうじ?」

「呑みすぎだバカ。」

「なんで?」

「無防備すぎだアホ。」

梨花の店で酔いつぶれた牧野は、結局店のボーイに抱えられて千石バーに連れてこられたらしい。

俺が千石バーに行くと、ここのママが

「困った子ね、つくしちゃんは。道明寺さん、あとはお願い出来るかしら?」と俺に店の鍵を手渡し、楽しそうに手を振って帰って行った。

夢でも見ているかのように俺を見つめる牧野。

その隣に移動してドカッと座ると、

「なんか用だったのか?」

と聞いてやる。

「え?」

「梨花に聞いた。俺の事探してたそうだな。」

「それは、電話しても出ないしっ。」

そう言って軽くキレながら俺を睨んでくるこいつ。

その目が充血していて赤い。

「ったく、どんだけ呑んだんだよ。

帰るぞ。」

「……嫌。」

「あ?」

「急にあんたが居なくなってびっくりしたんだからっ。仕事も途中なのに他の人に引き継ぐなんて」

「あぁー、社内で決まったことだからしゃーねぇーし」

「それでもっ、ライバルだけどずっと一緒にやってきたんだから、一言話して欲しかった。」

営業部から異動する話は急に決まったこと。

牧野は多分それを言ってるのだろう。

けど、同じ時期に牧野と俺は別れた。

だから、話すタイミングを逃したというか、話すような間柄ではなくなってしまったというか……

「それで、何度も電話したのか?」

「……うん。もう会えないのかと思ったから。」

「大袈裟だろ、」

「だって、NYなんかに行っちゃったら、もう会えないじゃないっ。」

「……NY?」

「転勤するんでしょ?」

悲しそうな目で俺を見てくるこいつ。

「転勤?俺が?」

「うん。……えっ?違うの?」

今度は怒ったように言う牧野に、俺は笑って言ってやる。

「誰だよ、そんなガセ情報言ったのは。」

「え、だって!佐々木さんとかみんなそう言ってるし」

「行かねーよ、NYなんか。」

「…………」

牧野の目にじわっと涙が溜まり始める。

「おまえさ、」

「……ん?」

「そういう態度だと、誤解するぞ。」

振られたばっかなのに、ほんの少しの隙があれば攻めようとする俺。

「俺と会えなくなるのが寂しいって聞こえる。」

「…………」

「だとしたら、俺はまだおまえが好きだから、色々と期待したくもなんだよ。」

全然、自信はねえ。

けど、この小さなチャンスは逃したくない。

じっと見つめる俺に、牧野が消えそうな声で言った。

「道明寺……あたし、……あんたが好き。」

「…………」

期待した言葉なのに、

すげぇ嬉しい時は声が出ねぇって事を、人生初めて知った。

「好き……なの、だから」

その先を一生懸命伝えようとしてくれる牧野。

けど、もう言葉なんて必要なく、俺は自分の方に牧野を引き寄せて言葉の代わりにキスをする。

「クチュ……んっ……」

「牧野、……俺も好き……」

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