ライバルとなんて、恋しない 22

ライバルとなんて、恋しない
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朝9時に出勤して、夜の19時に退社。

気が向けば千石バーによりお酒を少しだけ呑んでマンションに帰宅する。

そんな当たり前の日々がまた戻ってきた。

でも、ふと気が緩むと時々思い出す、あの人の笑った顔や香水の香り。

たった2ヶ月の短い交際だったけれど、久々の恋愛は強烈なものだった。

「今までの関係に戻りたい」と言っておきながら、こんな風に胸が痛くなるなんて自分自身に嫌気がさす。

はぁーーーと溜息をつきながらオフィスで手帳を開き今週の予定をチェックすると、ちょうど金曜日に取引先との打ち合わせがある。

その取引先に行く時は、結構な頻度で道明寺と出くわすことがあった。今回も会うだろうか。

さすがにいい大人なんだからいくら気まずくたって無視は出来ない。

どうしたらいいものか……色々考えると頭が痛い。

ふと、同じ課の後輩に視線を移すと、小さな鏡を手にリップを塗り直している。

ランチの時に「今日はデートだ」と言っていたから、ウキウキしてるのだろう。

あたしもあんな風に恋愛に没頭出来たらいいのになぁと思いながら、また大きなため息をついた。

…………

金曜日。

取引先で会議を終えてロビーに出ると、仕事仲間の佐々木さんが見知らぬ男性と話しているのを見かけた。

同じ会社の人だろうか……、そう思い声をかけずに帰ろうとしたら、

「牧野さんっ」と佐々木さんの方から近づいてきた。

「あ、どうもお疲れ様です。」

ぺこりと頭を下げると、

「牧野さん、こちら道明寺ホールディングスの渡辺さん。ここの担当、道明寺さんから渡辺さんに変わったそうなんだ。」

「えっ?」

思いがけない言葉に驚くあたし。

すると佐々木さんも、

「俺もちょっと驚きなんだけど……」

と困惑ぎみ。

それもそのはず、来月にはここの取引先との大きなプレゼンを控えている。

それに向けて道明寺もかなり力を入れていたはずなのに、ここにきて担当が変わるなんて。

今までならライバルが居なくなって大喜びしたであろうあたしも、今回ばかりは複雑な気持ちだ。

納得出来ず、モヤモヤしたままその場を離れ、それから2週間後、

今度は張社長の会社で渡辺さんとばったり出くわした。

「あ、どうも。」

「こんにちは、牧野さんでしたよね?先日は名刺も渡せず失礼しました。」

と、渡辺さんが律儀に名刺をくれ、

そこには道明寺ホールディングス営業部係長と書かれてある。

「あのぉー、今日はどうしてこちらに?」

「ここの担当も僕が引き継ぐことになりまして、張社長に挨拶に伺いました。」

「えっ、道明寺は?」

突然呼び捨てにしたあたしに、渡辺さんが驚いているのを見て、慌てて言い換える。

「あ、えーと、道明寺司さんは?」

「あー、課長は……そのぉ、他にも案件を多く抱えてるので、」

言いにくそうなところを見ると社外秘の内容なのか。

道明寺に会うのは気まずいと思っていたのに、いざ会えないとなんだか心に穴が空いたような感覚になる。

会えば憎まれ口を叩き、上から目線であたしを貶していたあいつ。犬猿の仲だと豪語していた相手なのに、この虚しい気持ちは何なんだろう。

………………

それから1週間後。

佐々木さんから一通のメールが来た。

そこには、思いもよらない事が書かれていた。

『人づてに聞いた話なんだけど、道明寺さん、NY支社に転勤になったみたいですね。』

会社のオフィスでそれを読んだあたしは、思わず声を上げそうになった。

知らなかった。

何も聞いてなかった。

道明寺がNYに行ったなんて。

心臓が痛いほど鳴る。

道明寺に

「今までの関係に戻りたい」なんて何も考えずに言ったバカなあたし。

いつまでもライバルとして近くにいると疑ってなかった愚かさ。

あたしはデスクの上にある携帯に手を伸ばした。

1か月前に道明寺と別れてから1度もかけたことの無いその番号にあたしは迷わずコールする。

1回目、2回目、3回目……6回、7回

何度鳴らしてもコール音が虚しく鳴るだけ。

それから1週間、あたしは何度も何度も道明寺の携帯にかけた。

けれど、彼が出ることはなかった。

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