ライバルとなんて、恋しない 21

ライバルとなんて、恋しない
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仕事仲間との飲み会。

時間通りに店に着くと、

「こっちこっち!」と佐々木さんたちが手招きしてくれる。

でも、そこには道明寺の姿は無い。

あたしには必ず来いと言っておきながら、自分はまさか不参加?

と思った瞬間、それを見透かしたように

「道明寺さん少し遅れるって。」

と、佐々木さんが言った。

集まった5人で先に乾杯。

すると、そのうちの一人がこう切り出した。

「今日は僕から1つ報告があります。

実は、結婚することになりまして。」

その言葉に、驚いたあと一斉にオォーと拍手が湧き上がる。

「え?いつ?」

「6月に式をあげる予定です。」

「へぇー、相手は?」

「まぁ、友達の紹介で知り合って」

「何年付き合ってゴールイン?」

「半年かな」

その返事に、えぇぇーーーっと驚きの声が上がる。

「半年?それは随分早い決断だね。」

「まぁ、自分でもそう思うけど、結婚したいって思ったタイミングが相手と重なったっていうか……」

ここにいる全員が独身だから、そういう感情にみんなあまりピンとこない。

すると、そんなあたし達の気持ちを察したのか彼が続ける。

「実は俺、以前5年間付き合ってた彼女がいたんだ。社内恋愛で仕事でも良きパートナーだったんだけど、お互い結婚したいと思うタイミングがズレて、結局別れちゃったんだよね。」

「へぇー、そうなんだぁ。

でもさ、社内恋愛ってどうよ。上手く行けばいいけど、別れた時が最悪じゃねぇ?」

「ほんとそう。別れた直後は、職場でも気まずいし、周りには気を使わせるし大変だったよ。

今は彼女も寿退社して幸せになっているけど、

悪いことは言わない、仕事仲間との恋愛はやめた方がいいよー。」

笑い話で言った彼の言葉が、今のあたしには重くのしかかる。

それから数分後、道明寺が遅れて店に現れた。

あんな話の直後だから、もちろんあたし達の交際を公表するつもりは無い。

ろくに目も合わせられないまま時間だけが過ぎていく。

そして1次会がそろそろお開きになりそうな頃、道明寺がトイレにたった隙を見て、あたしは「お先に」と店を出た。

自分でも何がしたいのか分からない。

どうしてこんな風に道明寺から逃げるように出てきたのか……。

頭の中がぐちゃぐちゃしながらトボトボと歩いていると、後ろから

「牧野さんっ」

と呼び止められる。

振り向くと、そこには佐々木さんの姿が。

「どうして?」

「あー、僕も1次会で抜けてきました。」

「みんなは?」

「さぁ?」

おどけたようにそう言って笑う佐々木さんは、あたしの隣にスっと立ち、

「行きましょう。」

と、歩き出す。

そして、数十メートル歩いたところで言った。

「……大丈夫ですか?」

「え?」

佐々木さんの言葉の意味がわからなくて聞き返すあたしに、

「あいつの言うことなんか、まともに聞かなくていーですよ!」

と言う。

「へ?」

「さっきの話。仕事仲間との恋愛はやめといた方がいいってやつ、あいつの勝手な恋愛論ですから。

牧野さんが自分たちに当てはめて考えたりしてないかなーと心配になりまして。」

その何かを含んだ言い方に、

「……もしかして佐々木さん、あたし達のこと?」

と聞いてみる。

すると、申し訳なさそうに彼が言った。

「牧野さんと道明寺さん、付き合ってるんですよね?」

「……。」

「お2人を見てると何となくそうかなーと思って。」

「バレちゃってましたか。」

「はい、俺だけには。」

そう言って、無言で肩を並べてしばらく歩き続けたあと、あたしはポツリと言った。

「あたし、自分の気持ちが分からないんです。」

「気持ち?」

「道明寺と付き合うって決めたくせに、周囲には隠してて、それってやっぱり別れた時のことを想定なんかしちゃって……」

「だからっ、さっきの話は……」

「違うんです。本当に好きなら、そんな事考えずに突き進む、あたしってそういう性格なのに、なぜか躊躇してて、」

「そっかぁ。」

それ以上は佐々木さんは何も言ってこなかった。

……………………

邸に着いてから、牧野に電話するまでしばらく時間がかかった。

なぜなら、なかなか気持ちの整理が付かなかったから。

でも、今日の牧野を見ていてこれ以上は先延ばしにするのは良くないことは分かっている。

だから、ようやく決心をして電話のボタンを押した。

2コール目で「もしもし」と牧野が電話に出る。

「俺だ。」

「うん。

今日はごめん。先に何も言わずに帰って。」

牧野もそこは悪いと思ってくれていることに、少しだけ心が癒される。

「あたしも今、電話しようと思ってたところ。」

「ん。」

「道明寺、明日時間ある?」

「……どうした?」

分かっているけれど、一応聞く。

すると、

「話したいことがあるの。」

と予想通りの答え。

会って直接伝えようと思っているのは、牧野の俺に対する最低限の礼儀だろうか。

でも、どうせ終わらせるなら、未練が残らないように会わずにいたい。

「牧野、」

「ん?」

「今、言っていいぞ。」

「…え?」

戸惑う。その先の言葉がなかなか出てこない。

だから、俺から言ってやる。

「俺たち、以前の関係に戻るか?」

「……道明寺」

「何もなかった、仕事のライバルに。」

そう言うと、牧野が小さく苦しそうに言った。

「うん、ごめんね。」

…………

電話を切った俺は、ソファの上にゴロンと横になりながら目を閉じる。

そして、思う。

仕事のライバルに戻る……簡単に言ったけれど、実際は何が違うんだ。

だって俺は、ライバルだったあの時から

きっとおまえが好きだったから。

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