ライバルとなんて、恋しない 20

ライバルとなんて、恋しない
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邸に戻りババァの書斎に直行する。

本当は牧野とのデートの余韻に浸りたいけれど、現実から逃げていても仕方がない。

コンコン…と軽くノックをして書斎に足を踏み入れると、ババァが珍しくソファでワインを飲んでいた。

「どこに行っていたの?」

「デート。」

素直にそう答えると、少し驚いた顔をしたあと、

「牧野さんだったかしら、彼女と?」

と、聞いてくる。

「ああ。」

「彼女には仕事のライバルだって言われていたけど、ようやく彼氏に昇格したのね。」

そう言ってクスッと笑うババァ。

今日、ここに俺を呼んだのは恋バナをするためじゃねーのは分かっている。

「それで?話って?」

と、俺から切り出すと、

ババァは俺にスーッと1枚の紙切れを寄越して言った。

「来期からの流れよ。

当初の予定より2年早いけれど、あなたには前々から伝えてあった通り、副社長として私の下で仕事を覚えてもらうわ。」

その紙に目を通すと、この先10年間の長期計画が記されている。

本来なら、30歳になる歳まで営業部に席を置き徹底的に仕事を覚え、その後はババァの右腕として副社長の座に着く予定になっていた。

それが、予定よりも2年前倒しになり、次の4月から異動。西田が言うには、営業部での俺の成績が予想以上だったようで、ババァがそろそろ自分の下に置いてもいいと判断したらしい。

仕事で評価されるのは素直に嬉しい。

ただ、今の営業職の仕事が純粋に楽しく、それを手放さなければならないのは惜しい。

営業部にいたこの6年あまりで、彼らが本当の縁の下の力持ちだということは痛感した。

道明寺ホールディングスは社員一人一人の頑張りで成り立っていることは間違いない。

副社長になって現場から離れれば、その感覚が鈍るのでは…そんな不安もある。

「4月からって事でいいかしら?」

「ああ。」

「あと3ヶ月ほどね。仕事の引き継ぎは上手くいきそう?」

「ああ。」

俺はそう答えながら、牧野と仕事で張り合う機会も残りわずかだなと考えていた。

………………………

ババァと話した次の週から、俺は着々と仕事の引き継ぎを開始した。

営業部で今抱えている大きな案件は6件。それに小さいものを含めると11件ある。

それらの資料を部下たちに振り分け、さらに外回りには部下を同行させ挨拶回り。

ババァには軽く「引き継ぎは大丈夫だ」と言ったけれど、いざ取り組むとかなり時間と労力が必要だ。

でも、ここを怠ると後々仕事に響くことは目に見えているから手を抜けない。

そんな事でバタバタしている内に、牧野とのデートもお預け状態のままで2週間。

そんな時、張社長との飲み会で一緒になった仕事仲間の佐々木からLINEが来た。

「道明寺さん、お疲れ様です。

近々、あのメンバーで呑みに行きませんか?

1番お忙しいのは道明寺さんだと思うので、道明寺さんの都合のいい日を教えてください。それにみんなが合わせるという形で。」

と、断りにくい、なんとも巧妙なメッセージ。

さすがアポ取りに慣れた営業職だな、と苦笑するしかない。

仕方なく、手帳を取りだして空いている日にちを確認し、まずは牧野にLINE。

「佐々木から呑み会の誘いが来た。

牧野はいつが都合いい?」

すると、15分後、

「えっ、呑み会?聞いてないけど。」

と、返信が来る。

「俺の都合に合わせるって。」

「相変わらず道明寺だけVIP扱いね。」

「おまえと一緒に参加したい。いつがいい?」

そう打ち込むと、なかなか返信が来ない。

そして、5分後、牧野からの返事は

「あたし、不参加にしようかな。」

と。

「なんで?」

「あたし達が付き合ってること、みんなには言わない方がいいと思う。お互い仕事がやり辛くなるでしょ。」

お互い仕事がやり辛くなる…俺的にはそんな風に考えたことは1度もなかった。

仕事と恋愛は別物。

それが例え仕事仲間との恋愛だったとしても。

「今まで通り、普通にしてればいーんじゃねーの?」

「でも、」

そのあと何かを打ち込んで来そうな牧野に、先手をうつ。

「来週の19日は?1番早いので空いてる日はそこ。」

そう送ったあと、念押しでさらに、

「仕事でも呑み会でも、なんでもいーけど、とにかく俺はおまえに会いたい。」

と、送ってやると、

3分後、牧野から

『かしこまりました』

とスタンプが送られてきた。

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