ライバルとなんて、恋しない 17

ライバルとなんて、恋しない

それから1時間後。

あたしは自分のマンションにいた。

ソファーに座りテレビを見ながらも、頭の中では全く違う光景が流れている。

それは、道明寺にされたキスのこと。

あれは……反則でしょ。

あんなキスされたら、女の子はみんな勘違いする。

まるで、彼女にするかのような優しくて熱いやつ。

また思い出してしまって顔が真っ赤になり、

「あっつ」

と言いながら慌てて部屋の窓を開け、その前で涼んでいると携帯が鳴り響いた。

こんな時間に誰だろう……そう思いながら画面を見ると、

『道明寺司』の文字。

せっかく身体の熱さがだいぶマシになったというのに、またその文字を見ただけで急激に熱がこもる。

さっき別れたばかりなのに、なんの用だろうか。

出る?出ない?

そう考えている間も鳴り続ける電話に、あたしは深呼吸をしたあと、勇気をだして出た。

「もしもし。」

「お、おう、俺だけど、」

「う、うん。」

お互い変な空気が流れる。

ダメダメっ、いつものように振る舞えあたし。

「なに?なんか用?」

「あのよ、ちゃんと話しておかねーと、寝れそうにねーから。」

「話?」

「俺と付き合おうぜ、牧野。」

唐突に発せられた言葉。

ホテルに行ったり、隠れてキスをしたり、色々ありすぎて肝心なことをすっ飛ばしてきたけれど、いざ直球でそう言われると、返事に困る。

沈黙が流れる中、マンションの前を大型のトラックが通り過ぎていく。

すると、

「おまえ、今どこにいる?」

と、道明寺が聞いてきた。

「へ?マンションだけど、」

「車の音、聞こえたぞ。」

「あー、窓開けてるから。」

「あ?こんな時間に無防備だなおまえはっ。不審者でも入り込んできたらどーすんだよっ。」

「こんな小さな窓から誰も入ってこれないからっ、」

「そーいう問題じゃねーだろ。女の一人暮らしなんだから、もっと警戒しろって。」

なんで窓を開けたくらいでこんなに怒られなきゃなんないのよ……とあたしの口から文句が出そうになったけれど、その前に道明寺が言った。

「心配させんな。」

「………。」

「好きなんだよ、おまえが。」

心臓が痛い。

どうしてこの人はこういう事をこんなストレートに言えるのか。

「あたしは、…正直まだ分からなくて…」

「キスは?嫌だったか?」

「っ!だから、そういう事聞かないでよ」

「大事なことだろ。俺はおまえ以外とは触れたいとも思わねーし、こんな風に別れてすぐに声が聞きてぇとも思わねーよ。」

ダメだ。

今、あたしの顔はきっと茹でダコみたいになっているはず。

「電話じゃ伝わんねーなら、今から会いに行く。」

「えっ?!」

「バラでも100本買ってくか?」

「いいっ、いいっ、大丈夫っ!」

冗談だろうけど、この男ならやりかねない。

慌てて拒否すると、道明寺がクックッと笑う。

その笑い声に、ようやくあたしの身体から力が抜けていく。

「ねぇ、あたしで、……いーの?」

「おまえがいい。」

「ライバルなのに?」

「むしろ燃える。」

即答するバカっぷりに、吹き出すあたし。

「俺たち、付き合うって事で、いーだろ?」

「……うん。」

色々フライングした2人だけど、ようやくあたし達は今日から付き合うことにした。

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