ライバルとなんて、恋しない 12

ライバルとなんて、恋しない


やばい……。

なんかここ数日、気が緩むとなぜかあの男の事を考えているあたしがいる。

そう、あの男とは『道明寺司』

腹痛で病院に連れていってもらったあの日から今日で1週間になる。おかげさまであの時に出してもらった薬がよく効き痛みは再発していない。

ただ、思いがけない副作用が生じていて、それは道明寺が発した言葉による胸のざわつきというか高鳴りというか、まるで恋愛中のドキドキ感に似たものがずっと続いている。

その原因になったのは、あの言葉。

『辛い時は……すぐに俺に連絡しろ。』

真っ直ぐにあたしを見てあの人は言った。

あの言葉の意味はなんだろう。

何度考えてもストンと納得のいく答えが見つからず、モヤモヤしたまま日だけがすぎていく。

あれだけライバル心を抱き毛嫌いしていた相手なのに、一緒にいる時間が長くなればなるほど、嫌じゃない。

いや、むしろ……

そこまで考えて、頭をブンブンと振る。

ほんとにどうしちゃったんだろあたし。

まさか、あの道明寺司を好きになったとでもいうのか。

「ありえない……」

そう呟きながら、あたしは帰り支度をして会社を出た。

そのままマンションに帰る気になれず、向かうはいつもの千石バー。

ビルに向かってトコトコ歩いていると、目の前にスタイルの良い女の子が歩いているのが見えた。

くるぶし丈のロングドレスに高いヒール。ロングヘアーは美容室で整えて貰ったのだろう、綺麗にカールされている。

その後ろ姿には見覚えがある。

あれは、道明寺と一緒にいる所を何度か見かけたお店の女の子だ。

その子の後ろを目で追いながら着いていくと、案の定千石バーのあるビルへと入っていく。

あたしもそのあとについてビルの中に入ると、ちょうどエレベーター前で彼女と目が合った。

お互い同時に、『どうも』と視線を交わし軽く頭を下げる。

彼女の隣に立ちエレベーターが待つ間、彼女から漂う柑橘系のフレッシュな香水の香りに、なぜだか懐かしさを感じ癒される。

どこかで同じ香りを嗅いだ記憶があるけれど、それはどこだっただろう……そんな事を考えていると、

突然彼女があたしに向かって言った。

「あのぉー、よくここで見かけますけど、上の階に行きつけのお店があるんですか?」

「え?えー、まぁ。」

そう答えると、彼女が少しだけ考えた素振りを見せたあと、言った。

「道明寺さんとはどういう関係ですか?」

「へ?」

突然、思いがけない質問に固まるあたし。

「どういうって……」

「まさか、彼女では無いですよね?」

少し鼻で笑ったようなその言い方に、軽くカチンときた。

どう見たってあたしより年下だし、オヤジに絡まれたのを助けてあげた事もあるのに、この、人を小馬鹿にした態度は何様だ。

完全にあたしが彼女であるはずがないという言い方に腹が立つ。

「あなたこそ、道明寺司とはどういう関係?」

「どういうって、私は……」

その先の言葉を躊躇している彼女に、同じように

「まさか彼女では無いわよね?」

と、言ってやろうか。

いやいや、大人気ない。

まるであの男を取り合っているようで気に食わない。

売られた喧嘩は大人の甲斐性で受け流してあげよう。

そう思った時、彼女の顔が切り替わり余裕の表情であたしに言った。

「どういう関係かって?そんな野暮なこと聞かないでくださいよ。今日も仕事終わりに部屋で一緒に過ごす予定なんですぅ。」

「…………。」

「彼ってば、寝顔がすっごくキュートなんですよ。」

彼女がニコッと笑うのと同時に、エレベーターの扉が開いた。

先に彼女がエレベーターに乗り込む。

そして、そのあとを追うようにエレベーターに乗った時にふと思い出した。

あ、この香り。

あの時のものだ。

彼女から発せられるこの香水の香りは、道明寺と一夜を共にした時に道明寺の身体から香っていたものと同じだものだと気付く。

あの男の事は、金輪際、考えないっ!

一生、あたしの記憶から抹消してやる。

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