牧野の家で
『児島におまえは渡さない。』
と、宣戦布告した俺に、あいつはなぜかすげー怒りだして、そのまま俺を部屋から追い出した。
作ってくれたはずの玉子焼きも食べ損なって、スーツの上着も部屋に置いたまま。
「どうかされましたか、最近。」
「あ?」
「いえ、…………司様が熱を出されたり、仕事を休むと言ったり、今までなかったことですので……」
休むはずだった仕事に仕方なく顔を出した俺に、西田が聞いてくる。
「…………西田。」
「はい。」
「俺さ、久しぶりに暴れるかもしれねぇ。」
「はい?」
「タマがもう一度暴れてみろって。」
なめんなよ。
昔から暴れることだけは得意なんだよ。
誰よりもそのやり方は知ってる。
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「もしもし。」
「おう、俺だ。昨日電話くれてただろ。」
「あたしからの電話にまともに出たためしがないよね、司は。」
「わりぃ。で?なんだよ。」
「そうそう、あのね、ハマドのことなんだけど。」
昨夜、牧野の部屋でダウンしてた俺の携帯に滋からの着信が恐ろしいほど残っていた。
「なんか司のこと色々と聞き回ってるみたい。」
「あ?」
「あたしにも司はどんな男だ?って。
プライベートの司のことが聞きたいみたいなんだけど、ハマドと何かあった?」
「いや、別に。
商談がダメになってから、会ってねーよ。」
「そう。
それよりっ、司、今日の約束忘れてないわよね!
6時にメープルだからね。」
「…………。」
「ちょっと!またぁ?
式の打ち合わせにメープルに行くってこの間伝えたでしょ。
今度こそ来てよ。
司が来ないと話が進まないんだからっ。
ね、待ってるから来なさいよっ!」
「わかった。うるせーな。」
「ちょっと……っ」
まだ何か言いたそうな滋の電話を笑いながら切ってやる。
しゃーねーな。メープル、行ってやるか。
その前に、少し暴れてから…………。
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牧野の勤める病院に電話して、早速会う約束を取り付けた。
お互い仕事の合間のわずかな時間に、病院近くの喫茶店で落ち合うことにした。
先に店に着いた俺の10分後に児島が姿を見せた。
「お待たせしました。」
「コーヒーでいいか?」
「ええ。」
お互い探り合うように黙ったままの二人の間にコーヒーが運ばれてくる。
それを機に、俺が口を開いた。
「牧野とはいつから付き合ってる?」
「え?…………、大学の2年から。」
「それからずっとか?」
「ええ、まぁ。」
それが本当なら、俺と別れてすぐ付き合って、そのまま今に至るわけか。
「だからそんなに余裕なのかよ。」
「えっ、どういう意味で……」
「俺なら許せねーけど。
自分の女が他の男を部屋に泊めて、朝まで一緒にいたなんて。
聞いた瞬間、相手の男に殴りかかってるとおもうけど、朝のおまえは全然そんな態度も見せなかったよな。」
「……まぁ、道明寺さんとは友達だって聞いてますから。」
「友達なら許すのか。
どこまで許せる?
部屋に泊まるのは、オッケー?
抱きしめるのは?キスするのは?
それ以上は?」
「…………。」
「ドクター。
俺はコソコソするのが嫌いだからハッキリ言わせてもらうけど、俺は今でも牧野が好きだ。
あいつが誰と付き合っていようと、俺は俺のやり方であいつにぶつかっていくつもりだ。
今度こそ、全力でいかせてもらう。
だから、俺と勝負しようぜ。」
宣戦布告だ。
やり方は昔あいつから教わった。
怯まず、恐れず、立ち向かっていくだけ。
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