だるい。
すげー体がだるい。
2、3日前からなんとなく体がだるかったが、今日はそれがMAXだ。
メープルでハマドと飲んだあと、部屋に戻ってシャワーを浴び、そのまま髪も乾かさずクーラーのきく部屋で眠ったのが今頃になって体調不良となって出た。
「司様、大丈夫ですか?」
「……あ?」
「具合がよろしくないようですが。」
「大丈夫だ。」
自分では隠してるつもりでも、西田にはお見通しらしい。
でも、休んでいられる立場ではない。
先日のハマドとの商談が上手くいかなかったことをババァに相当きつく言われた。
ババァからの指摘はもっともで、何も言い返せない自分に腹が立つが、3年間交渉に立ち会ってきた身としては、譲れないラインというものがあり、その競り合いが上手くいかなかった上の商談決裂だ。
「今日の会食はキャンセルいたしましょうか?」
今日も遅くまでスケジュールが詰まってる俺に、西田が心配げに言ってくるが、
「いや、大丈夫だ。」
そう告げて書類に目を写した。
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大手IT企業の社長との会食。
仕事の話が落ち着いて、料理が次々と運ばれてくる。
食う気にならない俺とは対照的に、どんどん箸を進めていく社長。
「今日はお昼を抜いてしまいまして、お腹が減っていたんですよ。」
そう照れ臭そうに話す。
「忙しいんですね。」
「いえ、実は私、お昼は娘がお弁当を作ってくれているんですが、昨夜ちょっと娘と喧嘩してしまいまして……、」
そんな話を聞いてるうちに、ふと昔のことを思い出す。
牧野と付き合ってたころ、よくあいつが作る弁当を食べた。
見たことも食ったこともねぇものばっかだったけど、あいつが作るものは全部旨かった。
俺の好みに合わせて甘くなる玉子焼き。
いつも多めに握ってくる梅とかつおのおにぎり。
誰かが作る弁当を食ったのは後にも先にもあいつのだけだ。
そんなことを考えてると、ボーッとする頭でも無性に牧野に会いたくて堪らなくなった。
「西田、寄るところがあるから先に帰れ。」
会食が済んだあと、車を呼ぼうとしている西田にそう告げると、
「しかし…………、」
と、険しい顔の西田。
「心配ねーよ。少し熱があるかもしれねぇけど、大丈夫だ。」
そう言って俺は店の前に停まるタクシーに乗り込んだ。
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部屋の前に着き、ベルをならす。
反応なし。
チッ……仕事か?
はぁーーー、だりぃ。
立ってるのがやっと。
ここまで体調がわりぃのも久しぶりだ。
しばらくドアの前でウロウロ歩いていたが、それも限界。
ズルズルと扉を背に、床に座り込む。
そして呟いた。
「あいつ、いつ帰って……くんだよ。」
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